被害者を攻撃するという逆立ちした行為

島田紳助がまだニュースになった。吉本興業の女性社員を殴ってけがをさせた例の傷害事件の裁判だ。和解が成立したという。

1審は島田紳助と同社に計約1045万円の賠償を命じる判決だったが、1億円を求めていた女性側が控訴していた。いくらか上乗せして話をつけたのだろうか。和解の場合、その中身を明かさないことが条件になるので、マスコミにその額は公開されない。
何にせよ、ニュースを引用しよう。
島田紳助さん、暴行女性と和解成立 東京高裁 産経新聞 9月22日(木)18時43分配信

引退発表の会見をする島田紳助さん=8月23日、東京・新宿(撮影・桐山弘太)(写真:産経新聞)
 芸能界を引退した元タレント、島田紳助さん(55)=本名・長谷川公彦=が平成16年、所属先の吉本興業の女性社員を殴ってけがをさせた事件をめぐり、女性が島田さんと同社に計約1億円の損害賠償などを求めた訴訟は22日、東京高裁(芝田俊文裁判長)で和解が成立した。

 1審東京地裁判決によると、島田さんは同年10月、女性に「口の利き方が悪い。上司を呼び捨てにするな」などと怒鳴って暴力を振るい、けがを負わせた。1審は島田さんと同社に計約1045万円の賠償を命じたが、女性側が控訴していた。

この事件では、島田紳助の世話になっている、もしくは世話になりたい芸能人が、いっせいに島田紳助を擁護したことを思い出す。

いや、庇ったなどというぬるいものではない。被害者を攻撃するという逆立ちした行為をいい気になって行った。

たとえば、B級モノマネタレントから大学のセンセイにまで成り上がった松尾貴史は、安易に「モノ作り」という言葉を使い、島田紳助のそれを邪魔した女性が悪いと自らのサイトで攻撃。Web掲示板が祭り状態になって慌てて該当箇所を削除した。

当然だろう。島田紳助の行為は本人でさえ暴力の事実を認めている刑事事件だ。暴力そのものが問われているのであり、そこに意味づけをして黒のものを白にしようなんてトンデモない話。

「モノ作り」に励む職人さんたちが聞いたら間違いなく怒り出す失礼な話だ。

そもそも、松尾貴史は芸能界しか知らない芸能バカであると筆者は見ている。そんな人間に「モノ作り」などという言葉を軽々しく使ってほしくないものだ。

松尾貴史が『日刊ゲンダイ』に連載していた「統計データ怪析」というコラムで、「(理系卒ー文系卒)の平均年収」(9月17日付)というタイトルの回があった。

「理系卒」の平均年収が「文系卒」よりも多いというデータをもとにいろいろ書いているのだが、それによると、「理系=コミュニケーション能力に欠如しているというのは、単なるイメージでしかありません」と、自分は理系でもないくせに理系をかばいだて、その根拠として、理系は、芸術や娯楽などを学校時代に排除した生活をしていても、より多い収入があるから、その後は年を追うごとにそれらを身につけられると楽天的に書いている。

そして、「収入の少ない文系」はその点で理系に差を付けられるから「おいたわしい話」などと、文系に対して挑発的に書いて悦に入っている。

この駄文を見たとき、こいつ、これでホントに大学のセンセイかよ、と筆者は開いた口がふさがらなかった。

「収入が多い」からといって、それらを身につけられる「余暇」「余裕」があるかどうかは全く別の話だろう。

世の中で、もまれている人なら、「収入が多い」ということは、本来ならそれだけ「働かされている」と疑うのが普通だ。

つまり、データの平均収入を引き上げている人たちは、より多くの収入と引き替えに、より多くの労働をさせられることによって、松尾貴史の考察とは正反対に、むしろ芸術や娯楽などを楽しむ時間と心の余裕を奪われているかもしれない、と心配するものだ。

たとえば、松尾貴史は医師や技術者などの過酷な労働を認識していないのか。
彼らの悲鳴が聞こえてこないのか。

それを考慮できない松尾貴史のセンスこそが、浮き世離れした「おいたわしい話」なのである。

一見、理系の人々の側に立っているようでいて
実はそうではない冷たさを感じる松尾貴史の文章は、

芸能界が一発あてりゃ、おいしい裁量労働の世界であり、
賃金と労働時間がおおむねリンクする地道な一般の労働者とは
根本的に異なるヤクザ商売であることが認識できていないことがわかる。
とんだ井の中の蛙だ。

ちなみに、その連載では「運」をテーマにした回もあり、
松尾貴史はそこでも、島田紳助は運だけではない(実力もある)と褒めちぎっている。

松尾貴史は、日ごろから暴力団に対して正義の怒りを燃やしているお方だが
今回の島田紳助の引退理由については、どう説明すのだろうか。
まさか、「ケツ持ち」作るのも「モノ作り」の「実力のうち」とはいわないよね。

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  • 作者: 島田 紳助
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  • 発売日: 2009/09/01
  • メディア: 単行本