ホームドラマの終焉?

渡る世間は鬼ばかり・最終回の視聴率が20パーセントを超えたと話題になっている。今や地上派ドラマ厳冬の時代だ。民放の連続ドラマで視聴率20%を超えがめずらしいため、その数字が注目されているが、そもそも「木9」の石井ふく子枠といえば、『肝っ玉母さん』や『ありがとう』といったお化け番組が記録的な視聴率をあげている。
時代が変わったといえ、20パーセント超えなどという、「並みの高視聴率」で騒ぐなんて、ちょっと寂しい。
渡る世間は鬼ばかり、最終回は視聴率22・2%
読売新聞 9月30日(金)10時32分配信
TBS系で29日夜に放送されたドラマ「渡る世間は鬼ばかり」の最終回スペシャル(午後9時~同10時48分)の平均視聴率(関東地区)が22・2%だったことが30日、ビデオリサーチ社の調べで分かった。

民放の連続ドラマで視聴率20%を超えたのは、7月3日放送の「マルモのおきて」(フジテレビ系)の23・9%以来。

『肝っ玉母さん』や『ありがとう』などは、平岩弓枝が脚本を担当。親子、職場、ご近所という3つのコミュニティを連関させて、人のつながりや思いやりについて考えさせられる名作。視聴率ランキングのトップ3常連番組だった。

通産大臣もつとめた某議員が電通のサラリーマン時代、『ありがとう』を見たくて残業を拒否した、という話は某議員がメディアで取り上げられるたびに使われるエピソードである。

その平岩が小説家に転向し、かわって橋田壽賀子が石井ふく子と組んだ最初の作品は、『ああ、家族』という昼帯のドラマ(86年)だった。

当時は2時間ドラマか全盛のため、連続ドラマの枠が取れず、13時から放送されていたが、これが好評で『渡る世間は鬼ばかり』につながっていった。

しかし、『渡る世間は鬼ばかり』は、『肝っ玉母さん』や『ありがとう』といったお化けドラマとは異質のホームドラマであり、石井ふく子ドラマの中では唯一好感が持てない。

気に入らない出演者は、平気でドラマ上死んだことにしてしまう橋田壽賀子のやり方は、日常生活のストレスを忘れ温かい気持ちになりたい視聴者の気持ちを、ぎすぎすさせた。

山岡久乃の追放や石井ふく子の蓄財、泉ピン子の若手いじめなど、「人のつながりや思いやり」とは縁もゆかりもない話もあった。

この番組が「高視聴率」ではあっても「お化け」でない理由は、そのへんにもあったのではないか。

始まりがあれば終わりはある。プリミティブなモチーフは韓流ドラマが受け持っている現在、いずれにしても、「ファミリーのささやかな事件」をドラマにする時代は終わったのかもしれない。

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