「神世界」グループの霊感商法事件で教祖が逮捕された。少し時間がかかったかもしれないが、やっと親玉まで来たか、といったことを多くの人々は思うのではないだろうか。

まずはニュースから引用しよう。
「神世界」教祖を逮捕=グループトップ、組織的詐欺容疑―売り上げ175億円か 時事通信 9月13日(火)0時16分配信

 有限会社「神世界」(山梨県甲斐市)グループの霊感商法事件で、神奈川、山梨両県警の合同捜査本部は12日、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑で逮捕状を取っていたグループトップで「教祖」と呼ばれる同社取締役の斉藤亨容疑者(53)=東京都世田谷区砧=を逮捕した。捜査本部によると「全く身に覚えのないこと」と容疑を否認しているという。
 捜査本部は、斉藤容疑者がグループの指示役で、グループ全体では、2000年9月から約7年間に計約175億円を売り上げていたとみている。
 捜査本部は、斉藤容疑者ら同グループ4人の逮捕状を取り、これまでに出頭した同容疑者の妻ら2人を逮捕した。残る1人の行方について、同容疑者は「4人ばらばらにいたので分からない」と供述しているという。
 捜査本部によると、斉藤容疑者は12日夜、大阪市中央区島之内にあるウィークリーマンションに入るところを発見され、逮捕された。部屋の入居契約は同日からで、契約名義人は同グループ関係者だった。持っていたスポーツバッグの中には現金が1000万円以上入っていたという。

「神世界」グループといえば霊感商法事件。かつて、神奈川県警の警備課長を解任された吉田澄雄警視が関与したとされて話題になった。

吉田警視については、「地方公務員法違反にあたる行為を重ねていた」として懲戒免職処分とし、吉田警視がグループにかかわり始めた2005年以降の歴代本部長3人の監督責任を問われた。

県警は一連の行為が営利企業に従事することを制限し、信用を失墜させる行為などを禁じている地方公務員法違反に当たり、歴代本部長の処分も免れないと判断したわけだ。

「霊感商法」事件は今までにもあったが、こうした事件が起こると、そのたびにオカルト批判を行う主に理科系の人々は、「オカルト・疑似科学に騙されないよう科学・理科教育が大切」と力説する。

反科学や疑似科学の類に対し、真実を知るための科学知識獲得は必要なことである。しかし、ことさら学問分野を絞ったものの言い方は、文系と理系の協働によって真実を解き明かしていくことを妨げる学問的ヘゲモニーでしかないように思われるがどうだろう。

吉田澄雄警視にしたって、とくに神秘主義・非合理主義への傾倒が深かったわけではないだろう。たんに「神世界」傘下のサロン社長・杉本明枝がイイ女だったから、理屈としてはいけないことと知りつつも、立場を省みず職権を利用して入れあげてしまったのである。要するに「女に無知」だっただけである。

人は何故、オカルト・疑似科学に騙されるのか。信じたいものを信じるからだ。それは、価値意識で判断するということである。科学知識の豊かな人間でもそれは同じだ。そして、価値意識には、吉田警視がそうだったように、矛盾や動揺を抱える”弱さ”がある。

つまり、人間というのは、本来間違いうる存在なのである。それが問題なのである。

さすれば、個々の科学知識啓蒙だけでは問題解決には自ずと限界があるだろう。そうした矛盾を抱えた人間がおりなす社会の中で、それによる間違いや不利益を避けるにはどうしたらいいかを考えなければならない。

それは法の整備かもしれないし、公務員のあり方の再検討かもしれないし、マスメディア監視かも知れないし、学校教育のあり方かもしれない。おそらくそのすべてが大なり小なり関係してくるだろう。

それを解決するには、自然科学だけでなく、心理学や社会科学、さらには文学とも医療ともジャーナリズムとも宗教とも手を携えて、そこに接近しなければならない。

物事が科学知識の啓蒙だけで済めば簡単だ。「科学的認識」の側からのアプローチだけではなく、その何倍もやっかいな「価値意識」の側からの接近を、学術的だけでなく、日常的思考すらも視野に入れた取り組みを行うことが求められるのではないだろうか。

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  • 作者: 全国霊感商法対策弁護士連絡会
  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 1997/09
  • メディア: 単行本