あぶない抗がんサプリメント(福田一典、三一書房)は、現役医師が「免疫力や抗酸化力を高めるサプリメント」があるとする書籍だ。「あぶない」というタイトルなので、てっきり抗がんサプリメントのエビデンスのなさを指摘するのかと思ったがそうではなかった。
抗がんサプリメントとは、がん治療や予防のために、サプリメントや栄養補助食品などの形で摂取される栄養素や成分である。
これらのサプリメントは、がん細胞の成長を抑制したり、がん細胞の死滅を促進することで、がん治療や予防に役立つとされている。
しかし、抗がんサプリメントの有効性については、まだ科学的な証明が不十分である。
一部のサプリメントには、がん治療との相互作用があり、がん細胞の成長を促進する可能性があるため、がん治療中の患者さんは、医師に相談してから摂取することが望ましい。
といったことを踏まえて、『あぶない抗がんサプリメント』(福田一典、三一書房)は、現役医師がサプリメントの危うさを書いた本という触れ込みながら、冒頭から正反対の記述があった仰天した。
代替医療を専門に診療するが「免疫力や抗酸化力を高めるサプリメント」があるというのだ。
スケプティクスに考えて、サプリメント自体を否定するわけではないが、「抗がん」を売り物にするところが問題にされてきたので、同書のタイトルを見てそのへんが書かれているのだろうと期待した。
早速結論になってしまうが、現役医師が、サプリメントの危うさを書いた本だというので期待して手に取ったのに、「まえがき」でいきなり脱力してしまった。
代替医療を専門に診療する「現役医師」のサプリメント批判
「免疫力や抗酸化力を高めるサプリメントはがん治療後の再発予防にも利用されています。がん細胞の増殖や転移を抑える効果などがん細胞に対する直接的な治療効果を期待して使う場合も多く……」
ここまで読んで、おいおい、「現役医師」がこんなこと書いていいのかよ、と思って奥付を見たところ、「代替医療を専門に診療する……」と書かれていた。
なるほど、そういう「現役医師」なわけだ。
通常、病院や診療所は「代替医療」は行わない。やはり、「現役医師」としてこうした本を書くのは一般の人を誤解させる。
「通常と異なる診療の病院・診療所」であることを最初にハッキリと断るべきである。
目次は以下の通りだ。
第1章 抗がんサプリメントとは何か
第2章 使ってはいけない抗がんサプリメント
第3章 買ってはいけない抗がんサプリメント
第4章 抗がんサプリメントの広告の読み方
第5章 抗がんサプリメントの正しい使い方
第1章~第4章にわたっては、サプリメントの疑問や問題点を述べている。
これは、サプリメントに懐疑的な人々もすでに書いていることも少なくないが、中には「おや?」と思えるものもある。
免疫機能を活性化したら暴走する?
たとえば、第2章で著者は、悪性リンパ腫に免疫賦活剤は「使ってはいけない」としている。
免疫細胞のがんなのに、免疫機能を活性化したら暴走する、というよくいわれる理屈によるものだ。
しかし、人間の免疫力はそんな単純なものではないだろう。
たとえば、マルトリンパ腫ならピロリ菌除菌で経過観察したり、治療後に残渣が残ってもそのまま様子見したりして、実際にリンパ腫が徐々に消滅することはめずらしくない。
リンパ腫が勝手に死滅するというより、その人の持っている免疫力がリンパ腫の残渣を始末してくれると考える方が合理的である。
悪性リンパ腫という病気は、白血病と治療法が似たものから、胃潰瘍の親玉のようなものまで種類が多い。
それをひとくくりにして語ろうということ自体、素人ながら疑問がある。
何より、この著者はもっとも大切なことを前提としていないのが気になる。
現在、がんの通常治療に使えるエビデンスを持ったがん特効薬サプリメントは、ひとつもないという現実である。
そこをスルーして、一部のサブリメントをネガティブに描く一方で別のサプリメントに期待を持たせて何の意味があるのか。
たとえていうなら、宗教は科学ではないという大前提をすっ飛ばして、○○教の信者が××教を「あの宗教は科学的ではないから我々の方が合理的」と言っているようなものである。
キノコ系抗がんサプリメントをなぜか推奨
第5章の「抗がんサプリメントの正しい使い方」には、抗酸化サプリメントは抗がん剤の効果を弱めるとする一方で、いわゆるキノコ系と思われる抗がんサプリメントはなぜか推奨している。
「免疫力を高めるβグルカンなどの多糖体製剤やメラトニンは、抗がん剤治療と併用しても大きな問題はありません。免疫力低下を軽減する効果が期待できます」
経口のサプリメントが、血中に直接つぎ込む抗がん剤のパワーを「弱め」るだの、キノコ系が「免疫力低下を軽減する」だのというデータはどこにあるのだろう。
客観的な根拠もなく書くことが許されるところではないだろう。
「サプリメントをがんの予防や治療に利用するときには、期待できる効果や作用の仕方が異なるものを組み合わせて、積み重ねによる相乗効果を期待することが大切」とも書かれている。
つまり、サプリメントの組み合わせ次第では、治療効果が期待できると言っているわけだ。現役医師が…。
医師なら「釈迦に説法」だろうが、抗がん剤は薬ではなく猛毒である。
化学知識がある者なら名前を聞くだけで震え上がるようなものを、がんの縮小のためにやむを得ず人体に投与しているのだ。
使い続ければ心臓、肝臓、腎臓などがボロボロになる。
もはやその人の免疫力では、どうにもならなくなったがん細胞を乱暴にぶっ叩くのだから、抗がん剤が体に厳しいものであるのは当然だ。
その毒性をも「弱らせる」ほどのサプリメントがあるのなら、それはとっくにがん細胞そのものをやっつけているだろう。
腸管免疫をくすぐって免疫機能を改善するとされるサプリメントに、常識的に考えて猛毒の抗がん剤にあらがうパワーなどない、と筆者は思う。
かりに、何もしない健康体の人が、そのサプリメントによって何らかの変化を期待できそうな数値が出たとしても、抗がん剤という猛毒使用でボロボロになる体に対して、NK細胞活性などという”ささやかな成果”など吹き飛ばされてしまうと考える方が順当な推理だろう。
だいたいそれほどの画期的な効果があったら、これだけサプリメントが出回っているご時世だ。
キノコ系に限っても利用者はたくさんいるだろう。
医師・医学者の肩書きで「”多剤”サプリメント」を説く人もいる。
その人たちから、画期的な成果が論文で発表されてもいいだろう。しかし、そんなものは出たためしがないではないか。
客観的に実証されているサプリメントはない
代替医療といってもいろいろあるから、一律に紋切り型の否定をすべきではない。
もとより、がん治療はごく早期をのぞけば、必ず助かるともいえないし、絶対的な治療があるわけでもない。
その中で、健康食品であれ何であれ、できることは試してみようという患者の意欲を筆者は個人的には尊重したい。
ただ、少なくとも抗がん剤治療に耐えうるパワーを直接的に与えてくれると、客観的に実証されているサプリメントはないのも現実だ。
それをごまかして、医師が曖昧なことを吹き込むべきではないと思う。
エビデンスがないものはない。
これと両立できない言い方をしてはならない。
医師や科学者は、そのパブリックな発言が科学的根拠に反するのなら、存在価値はないと思う。
がん治療、とりわけ化学療法(抗がん剤)というのは、サプリメントでどうこうできるほど甘いものではない。
以下、あぶない抗がんサプリメント(福田一典、三一書房)は、現役医師が「免疫力や抗酸化力を高めるサプリメント」があるとする書籍、でした。
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