ゆうひが丘の総理大臣(1978年10月11日~1979年10月10日、ユニオン映画/NTV)という中村雅俊主演の人気ドラマが有りました。原作は望月あきらによる漫画作品でしたが、中村雅俊のキャラクターに合わせてテレビドラマ独自のアレンジが行われています。
ゆうひが丘の総理大臣の漫画原作とは
ゆうひが丘の総理大臣の原作は、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で1977年12号から1980年16号まで連載されました。
もちろん単行本化されています(全17巻)
ただ、その中身は中村雅俊主演のテレビドラマとは大きく違います。
まず、漫画の舞台は中学であること。
漫画の主人公は、短髪でいつもタバコを咥えており、俳優で言えば勝野洋のような風貌です。
後輩の大野黙念は、メガネを掛けた冴えない男です。
生徒も、テレビドラマではその他大勢の生徒だった「大宮」が漫画では活躍しており、テレビドラマに出てくる柴田、冬木、山川などはいません。
百田桜子先生も、由美かおるよりもインテリタイプです。
同じところは、大岩雄二郎が孤児施設の出身であること。
ただし、テレビドラマは、本来両親はいたのですが、父親がなくなり、母親が大岩雄二郎と妹を捨てたという設定です。
漫画の園長先生は、テレビドラマの京塚昌子とイメージとして近いと思います。
伊井加一先生は、漫画のキザなキャラクターを、小松政夫がご自身の芸でさらにデフォルメしています。
ゆうひが丘の総理大臣のopは楽しくなる
ゆうひが丘の総理大臣のopは、『時代遅れの恋人たち』中村雅俊 (1978年11月、日本コロムビア PK-131)
中村雅俊が歌っています。
明るくピュアな歌詞が、何度も聴きたくなるオープニングにはピッタリの歌でした。
画面では、中村雅俊、由美かおる、神田正輝が、中田島砂丘と思われる砂浜を転がったり、パンを加えて走ったり、ストップモーションの静止画を多用したりと、『俺たちの旅』を彷彿とさせる作り方をしています。
カースケが学校の先生になると、こういう感じだよ、ということを示唆するゆうひが丘の総理大臣のopかもしれません。
opとセットで、エンディングの『海を抱きしめて』の淡々とした歌詞もいまだに人気です。
音楽が始まると、さーっと胸が熱くなった視聴者も多いようです。
ゆうひが丘の総理大臣のDVD
ゆうひが丘の総理大臣のDVDが発売されています。
ゆうひが丘の総理大臣は全40話ですが、それをすべて収録しています。
ゆうひが丘の総理大臣のあらすじ
ゆうひが丘の総理大臣のあらすじは、アメリカ帰りの大岩雄二郎が、後輩の大野黙念の紹介でゆうひが丘学園に赴任。
生徒や同僚先生や自分の肉親らとの関わりを描いたドラマです。
大岩雄二郎は、教育問題を語るような堅物ではありません。
従来の青春学園ドラマに出てくるような熱血教師でもありません。
したがって、ラグビーもサッカーもやりません。
どちらかというと、ちゃらんぽらんで行き当たりばったりです。
しかし、母親に捨てられた養護施設出身で培われた陰翳に富む人柄は、人との関わりに対しては真剣で温かい。
ゆうひが丘の総理大臣は、全40話が1話完結になっています。
ただし、『サザエさん』のような、時が止まったところで永遠にストーリーが構成されるパラレルな作り方ではなく、設定は動いています。
たとえば、下宿屋(樹木希林)の娘かおるちゃん(岡田奈々)が進学したとか、同僚の山下先生(前田吟)と道子さん(篠ひろ子)が結婚して、心が離れていた道子さんの父親である大坂先生(名古屋章)と同居したとか。
そして、何より、大岩雄二郎(中村雅俊)が、名乗らないまま母親(南風洋子)と再会するとか。
大岩雄二郎と室生犀星
冒頭に書いたように、ゆうひが丘の総理大臣には、漫画の原作があります。
しかし、大幅にアレンジされたテレビドラマは、別個のものであるとみても間違いないでしょう。
ズバリ、テレビドラマの、ゆうひが丘の総理大臣は、主人公の大岩雄二郎は、室生犀星をモデルにしていると思われます。
室生犀星は、非嫡出子として生まれて、7歳で室生家の養子になるなど恵まれないほしのもとに生まれたにもかかわらず、健全に生きようという詩を残しています。
東京大田区馬込文士村の案内板には、家族思いで、子どもの健康を気遣い、家族サービスを怠らない人であると書かれています。
その一方で、「ふるさとは遠きにありて思うもの」という有名な句を残したように、決して故郷には帰らなかったといいます。
不幸な過去は振り返らないという強い気持ちがあったのでしょう。
母親に捨てられて養護施設で育った大岩雄二郎は、途中で妹は別の家庭に引き取られたため、家庭や家族を知らない上に妹とも離れ離れで幼少期を過ごしたという設定です。
テレビドラマの第26話では、漫画しか読まなかったはずの大岩雄二郎が、室生犀星の『朝を愛す』の一節を、スラスラと諳んじるシーンが出てきます(1979年4月25日放送の『総理先生しっかりして!』)。
僕は朝を愛す
日のひかり満ち亙る朝を愛す
朝は気持が張り詰め
感じが鋭どく朝
何物かを嗅ぎ出す新しさに餓ゑてゐる。
朝ほど濁らない自分を見ることがない、
朝は生れ立ての自分を遠くに感じさせる。
その回は、ソーリ(総理)こと大岩雄二郎が、自分の生き方に悩みながらも、今を一生懸命生きるしかないということに気づくストーリーですが、不幸な生い立ちでも常に前を向いて生きる、という室生犀星の生き方に重なるものがありました。
この回を観た時、大岩雄二郎が、友情、親子愛などの人の絆に対して、おせっかいであることの根拠が明らかになった思いがして、以来、このドラマに、他の熱血教師ドラマにはないリアリティを感じるようになりました。
ゆうひが丘の総理大臣、現在、TVKテレビで放送中です。
以上、ゆうひが丘の総理大臣は望月あきらの漫画作品でしたが中村雅俊版のテレビドラマは室生犀星がモデルに見える作り方です、でした。
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