野菜のカロテノイドが加齢黄斑変性(AMD)の発現リスクを低下
野菜のカロテノイドが加齢黄斑変性(AMD)の発現リスクを低下する、という考察ができる疫学調査を『東京スポーツ』(2015年12月3日付)が掲載して話題である。野菜が体にいいとはしばしばいわれてきたが、今回注目されているのはカロテノイドである。
カロテノイドは、動植物が持つ、自然界に存在する黄色や赤色の色素の総称。
600種類以上存在するといわれている。
特徴として強力な抗酸化力を持ち、活性酸素を除去する力に優れている。
眼病や生活習慣病などをはじめとする、疾病の予防に効果的な栄養素として知られている。
カロテノイドは大きく分けると、アルコールに溶けるカロテン類と、アルコールに溶けないキサントフィル類に分類される。
植物に含まれるカロテノイドには、カロテン類として緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンや、トマトなどに含まれるリコピンなどが挙げられ、キサントフィル類としてはマリーゴールドに含まれるルテイン、みかんに含まれるβ-クリプトキサンチン、とうがらしに含まれるカプサンチンなどが代表として挙げられる。
以上のことを踏まえた上で、以下をお読みいただけると幸甚である。
目にいいといわれる食材や栄養素
これまでにも、たとえば眼精疲労やドライアイに良い栄養素・食材というのは取り沙汰されてきた。
たとえば、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン。視覚情報を伝えるたんぱく質「ロドプシン」の再合成をサポートするといわれている。
ビタミンAは、涙の生成に重要な働きをする粘膜の形成・修復を助けるとされている。
ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12)は、全体が相互に作用して、目の周辺の筋肉の疲れを和らげたり、目の粘膜を正常化したり、水晶体の代謝と免疫機能を高めたり、視神経の機能を正常にしたりするといわれている。
ビタミンEは、血行促進作用による疲れ目やドライアイの防止や老眼予防に効果的と言われている。
さらに、亜鉛は視神経の伝達をサポートし、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとされている。
それらを豊富に含むのが野菜というわけだ。
ところが、今回の疫学調査は、それらとは異なる要素が注目されている。
カロテノイド(カロチノイド、carotenoid)という天然色素である。
微生物、動物、植物などにカロテノイドが同定されているといわれている。
それが、加齢黄斑変性(AMD)の発現リスクを低下するというのだ。
カロテノイドは、植物や一部の微生物に存在する天然の色素化合物の総称だ。
これらの化合物は、植物の色を形成するだけでなく、私たちの食事においても重要な栄養成分となる。
代表的なカロテノイドには、β-カロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチンなどがある。
カロテノイドは、ビタミンAの前駆体として働くことが知られている。
体内では、一部のカロテノイドがビタミンAに変換され、視覚、免疫機能、皮膚の健康などに重要な役割を果たす。
さらに、カロテノイドは抗酸化作用も持っている。
これは、体内の活性酸素種や自由ラジカルなどの酸化ストレスから細胞を保護する役割を果たすと考えられている。
抗酸化作用によって、カロテノイドは細胞や組織の酸化ダメージを軽減し、慢性疾患のリスクを低下させる可能性がある。
カロテノイドの健康効果はさまざまであるが、以下にいくつか例を挙げます:
眼の健康促進: ルテインとゼアキサンチンなどのカロテノイドは、目の健康維持に重要です。特に、黄斑部と呼ばれる目の一部において、これらのカロテノイドは光の吸収とフィルタリングを行い、光による損傷から目を保護します。定期的なカロテノイドの摂取は、加齢黄斑変性や白内障のリスクを減少させる可能性があります。
心血管疾患の予防: カロテノイドの抗酸化作用は、心血管疾患のリスクを低下させる助けとなる可能性があります。研究によれば、β-カロテンやリコピンなどのカロテノイドの摂取は、動脈硬化や冠状動脈疾患などの心血管疾患の発症リスクを低下させる効果がある。
もちろん、野菜は目にいいといっても、スケプティクス(懐疑者)的立場から述べれば、食べ物はいいところと悪いところがあることはあらかじめお断りしておこう。
が、人間の体に野菜の摂取は不可欠であるから、その理由付けとして頭の片隅にでも置いておく価値はありそうだ。
カロテノイドに加齢黄斑変性(AMD)リスク低下
そこで、『東京スポーツ』(2015年12月3日付)の「最新研究医療リポート」には、「やっぱり野菜は目にイイ!」という見出しでこう報告されている。
高齢社会が進行して目の病気、特に加齢黄斑変性(AMD)の増加が話題になる今日このごろ。以前からも言われていたが、野菜・果物に豊富なカロテノイド(野菜等の色素成分)をたくさん取れる食事が発現リスク低下と関連することが示された。医学誌「BMJ」などで発表された研究だ。
同誌などによると、研究は米ハーバード大医学部の公衆衛生学チームが主導。10万2000人以上が参加した医療関係者ヘルススタディーのデータを分析、20年以上にわたって追跡調査した。対象者は女性約6万3000人、男性3万9000人でいずれも50歳以上。期間中に約2500人がAMDを発症したが、カロテノイドの摂食との関係を統計的に調べると、とくにルテイン、ゼアキサンチンをよく取ることでAMDの発現リスクは約40%低下、βカロテン等のカロテン類でも25~35%の低下が判明したという。
ということだが、もちろん、だからとって野菜「ばっかり食べ」がいいということではない。
「「がん」と抗酸化サプリメント、2つの気になる関係」でも書いたが、たとえば、ビタミンEは、前立腺がんを増やすという報告がある。
βカロテンには肺がんが増えたという報告もある。
もちろん、これはサプリメントの話で、食べ物の話ではない。
ただ、食べ物というのは、人間にとってのメリットだけではなく、「害」も「益」も含まれていることも確かだ。
「益」を補完したり、「害」を相殺したりするためには、いろいろな食材をバランスよく摂取しなければならない。
人類の悠久の歴史の中で、それは経験的に蓄積されてきたノウハウである。
私達の食べている標準的な食事は、だてや酔狂で構成されているわけではない。
スケプティクス(懐疑的)に述べれば、目が悪いからといって、とにかく野菜だけ食べればいい、というわけではない、という釘も刺したくなる。
つまり、野菜に目を良くする効果があったとして、それを引き出す役割が、野菜以外の食材にあるかもしれないからだ。
疫学調査、とくに食べたり飲んだりする調査は、交絡因子の判断がむずかしい。
野菜を積極的に摂取すること自体はいい。その際、「目にもいいらしいね」と心の片隅でつぶやく程度の認識でいいのではないだろうか。
以上、野菜のカロテノイドが目の病気である加齢黄斑変性(AMD)の発現リスクを低下する、という考察ができる疫学調査が発表された、でした。
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