free web hit counter

ハイパーサーミア(局所温熱療法)は、患部を上下の電極で挟んで、電極間に電磁波を負荷し加温することでがん細胞を叩く治療

この記事は約7分で読めます。

ハイパーサーミア(局所温熱療法)は、患部を上下の電極で挟んで、電極間に電磁波を負荷し加温することでがん細胞を叩く治療

ハイパーサーミア(局所温熱療法)は、患部を上下の電極で挟んで、電極間に電磁波を負荷し加温することでがん細胞を叩く治療だ。脳・眼球以外の悪性腫瘍(血液腫瘍は対象外)に適応し、保険適用もされている侵襲性のない治療だが課題もある。

ハイパーサーミアは、局所温熱療法といわれる。

温熱療法というと、ともすれば、びわの生葉に棒もぐさを使用する「びわ温灸法」や、温泉で血流を良くしてミネラルを取り込む「温泉療法」などは民間療法を思い浮かべるのではないだろうか。

しかし、ハイパーサーミアは、医師免許をもった施術者が行うれっきとした保険治療だ。

ハイパーサーミア(hyperthermia)は、がん治療の一つであり、がん細胞を高温で熱処理することによって、がん細胞を破壊する治療法だ。

温熱療法は、局所温熱療法(local hyperthermia)と全身温熱療法(whole-body hyperthermia)の2つに分類されるが、保険適用されているのは局所温熱療法だ。

局所温熱療法は、がん細胞が集中している部位に、高温をかける。

一般的には、がん細胞は、正常な細胞よりも熱に弱く、42℃以上になると死滅する傾向があるため、がん細胞を熱処理することで、がん細胞を破壊することができる。

「温熱」の方法は、電磁波を用いて病巣を加温する。

患部の前後に置いた対極版にの電磁波にょって、身体の深部に熱を発生させる。

一定時間以上の加温によって、それ自体ががん細胞を死滅させるほか、抗がん剤を効き目を高めたり、放射線治療の感受性を高めたりする。

がん細胞も宿主の細胞だから、免疫細胞にとっては正常細胞との区別をつけにくいのが、加温によってがん細胞に抗原反応が発現するため、免疫細胞が攻撃しやすくなる。

保険適用なら、エビデンスもあるのだろうし、どんどん受けたらいいかというと思われがちだが、スケプティクスに考えるとそうとは限らない。

手術、抗がん剤、放射線に次ぐ第四のがん治療といっていいが、病院側の採算や治療成績等課題もある。

ということを踏まえた上で、以下をや読みいただけると幸甚である。

熱に弱いがんを温める治療

ハイパーサーミア(局所温熱療法)は、文字通り患部という局部を温めることでがん治療を行うものである。

それは高度先進医療に属すものでありながら、健康保険が適用になる。

では患部を温めることがどうして治療になるのか。

人間の細胞は、42.5度C以上に加熱されると死滅する。

ただし、正常な組織は加熱されると血管が広がり、その部分に血液がたくさん流れ込むことで熱を体外に放出するので、体温が41度C以上に上がることはない。

少しぐらい熱い風呂に入ったり発熱したりしても大丈夫なのはそのためだ。

ところが、がん細胞が栄養源とする新生血管は拡張されないため熱の放出ができず、加熱するとそのまま熱が伝わり死んでしまう。

つまり、正常細胞に比べてがん細胞は熱に弱い。この特性を利用する治療なのである。

実際にドイツでは、丹毒に冒され高熱を発した患者のがんが消失したという報告がある。

アメリカでは、感染すると高熱を出す数種類の細菌をわざとがん患者に注射し、高熱によって手遅れのがんの治療を行ったという実績もある。

といっても、冒頭の民間療法のようなやり方では、体の深部にあるがん細胞に熱は届かない。

そこで、ハイパーサーミアは、上下及び左右から二枚の電極で身体を挟んで高周波(ラジオ波)を流す。

組織の双極子およびイオンが1秒間に約800万回もの急速な回転、移動動作を起こし、摩擦熱を発生させることで、腫瘍の局所を30?60分間42~43度以上に加温する。

それにより、がん細胞の熱による死滅を狙うと同時に、温熱による血流の活性化で体全体の免疫力も上昇させるのだ。

がん細胞の熱による死滅を狙うと同時に温熱による血流の活性化

ハイパーサーミアは、他の治療との併用によって治療効果の向上が見込める。

たとえば、増殖分裂を準備している時期のがん細胞は放射線が効きにくいといわれるが、一方でその時期のがん細胞は熱に弱いので、ハイパーサーミアによる治療を組み合わせることで、放射線治療を補完できるわけだ。

化学療法(抗がん剤)との併用では、ハイパーサーミアの加熱によってがん細胞の細胞膜が変性し、抗がん剤ががん細胞の中に入りやすくなる。まさに相乗効果を狙えるのだ。

この治療の特徴は、副作用が少なく長期的にできるということである。

抗がん剤は副作用が強く、使い続けることで肝臓や腎臓、さらには心臓も疲弊する。

放射線治療についても、照射回数が定められるなど侵襲性は否定できない。

しかし、体を温めるだけのこの療法は、まれに水泡程度の火傷が起こるだけである。

温熱を行うと、正常な細胞もがん細胞も、熱に対する耐性ができる。

外部からのショック(熱)に対して、そこから細胞を守ろうという反応だ。

簡単に言えば、これがヒートショックプロテインである。

熱いお風呂に入って、ヒートショックプロテインを産生しようというのは、実はこの生体防御反応のことである。

これによって、正常細胞は修復される。

えっ、でも、がん細胞も耐性ができるんじゃないの。

その通り。

それが温熱後48時間後がピークで、72時間はそれにあたるといわれている。

だから、その間はハイパーサーミアもお休みする。

ただし、耐性は永遠のものではなく、時間が経つと失われていく一時的なものだ。

その頃、またハイパーサーミアを行う。

がん細胞の一時的に熱耐性にょって、1度行うと次の治療まで3日程度は日を空けなければならないが、それ以外の禁忌事項はない。

でも、たとえ一時的にでも、耐性ができて細胞が修復されちゃったら、がん細胞が丈夫になっちゃうんじゃないの?

がん治療中の人はもちろん、体内にがん細胞がある人が、熱いお風呂に入ったら、がん細胞を守ることになってまずいんじゃないの?

……という素人考えの疑問というか心配は、私にもあった。

研究によると、加温によって、がん細胞にはがん抗原が表面に出るという。

つまり、「あ、ここががん細胞ですよー」という旗印のようなものだ。

それによって、免疫細胞は、ターゲットを定めやすくなる。

本来、正常細胞もがん細胞も宿主の細胞なので似ているため、免疫細胞はターゲットを絞りにくいのだ。

それが、加温することでわかりやすくなる。

だから、がん細胞に耐性ができたとしても、生体防御反応としての「入浴によるヒートショックプロテイン産生・マイルド加温療法」の意義が揺らぐわけではない。

『加温生活「ヒートショックプロテイン」があなたを健康にする』(伊藤要子著、マガジンハウス)はHSPの健康温浴効果解説書籍
『加温生活「ヒートショックプロテイン」があなたを健康にする』(伊藤要子著、マガジンハウス)はHSPの健康温浴効果を解説する書籍です。誰にでもわかりやすく、42度のお風呂に10分入るマイルド加温療法で、驚くほどの健康効果があることを紹介しています。

また、ハイパーサーミアは首より下であれば殆どの部位で加温可能なため、臓器癌ならあらゆる部位に適応がある。

単独よりも他の治療との併用で治療効果が見込める

現在、ハイパーサーミアは、がん治療第5の柱、ともいわれている。

手術・化学・放射線といった従来の療法は三大療法といわれるが、それに続く治療に位置づけられている。

ただ、保険適用されているのに三大療法の中に入っていないということは、すなわち、残念ながらまだ標準的治療とはいえないということだ。

中には、ハイパーサーミア単独でがん細胞の消失に成功したという報告もあるが、多くのケースは化学療法や放射線療法、外科手術などとの補助的な併用、または再発がん、癌性胸腹膜炎などの症状緩和を目的とした治療が中心である。

その理由は、患部に対する加熱が難しいこと、医療従事者の理解が十分でないため医療機関の普及自体が不十分であることなどから、症例が少ないことがある。

このがんではこの部分をこう加熱すればここまで改善できる、という再現性が明確にならないと、治療のガイドラインは確立しない。

また、原理的な限界として、悪性リンパ腫や白血病などの血液疾患に対する報告が少ないこともある。

ただ、これらについても、前記のような抗がん剤を効果的に使う補助的治療としては有望であり、今後の研究が期待されている。

以上、ハイパーサーミア(局所温熱療法)は、患部を上下の電極で挟んで、電極間に電磁波を負荷し加温することでがん細胞を叩く治療、でした。

ガンになってもあきらめないで!―注目されるハイパーサーミア(温熱療法)の効果
ガンになってもあきらめないで!―注目されるハイパーサーミア(温熱療法)の効果

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

草野直樹(かやのなおき)をフォローする
スケプティクス
トレンド雑談

コメント