ビタミンCは抗酸化作用があって健康にいいといわれている。野菜、果物、サプリメントなどがその効用を説くときにビタミンCの含有を必ずといっていいほど標榜。そしてビタミンCは、みんな尿になって出てしまうので、いくら飲んでも大丈夫だといわれている。
が、本当に害はないのだろうか。
今日もスケプティクス(懐疑者)の立場から考えてみた。
細胞と細胞をつなぎ還元作用もある
以前、大槻義彦氏は新聞の健康関連のコーナーで、サプリメントを利用する人を「バカ者」とののしり、「普通の食事をしていればそんなものは要らないのだ」と言っていた。
確かに、医学者の坪野吉孝氏などはそうした見解を述べているが、それは医学者としての一般的な見解。
大槻義彦氏は、それをそのまま個々のケースにも突きつけている。
ちょっと考えて欲しいのだが、「普通」だの「平均」だのというのは、全体を数字や印象でならしためやすであり、その「全体」の人々は、誰ひとり「平均」でも「普通」でもない。
みんな、「平均」や「普通」から多少ずれていて、「普通」に足りない人が、ではそれをどうやって補おうかという話をしているわけだ。
「普通」じゃない人が、「普通の人」になるための対策を考えている時に、「普通の人はこうだ」と居丈高に叱りとばしても、何の解決にもならない。
ビタミンCは、化学的には「Lーアスコルビン酸」といい、生体の様々な活動で重要な役割を果たしている。
たとえば、たんぱく質の約30%にあたるといわれるコラーゲンは、細胞と細胞をつなぐ接着剤のような仕事をしているが、その生合成に利用される。
ビタミンCが不足すると起こる様々な現象
ビタミンCが不足することで、血管の脆弱化や皮膚からの出血、免疫機能の低下、壊血病、肌荒れ、毛髪の痛みなどの諸症状を呈するようになる。
また、強い還元作用があるため、食品中の油脂の酸化や変色防止を目的に、Lーアスコルビン酸、Lーアスコルビン酸ナトリウム、Lーアスコルビン酸ステアリン酸エステルなどが食品添加物にも使われている。
健康効果を調べる試験は行われている。2000年に米国ルイジアナ州立大学のグループによる、胃がんの前段症状といわれる20~69歳の萎縮性胃炎の人を対象にした試験では、あまり画期的な結果ではなかった。
冠動脈疾患の既往のある人にβカロテン、ビタミンC、E、セレン剤を3年間投与しても、再発予防効果がないばかりか、コレステロール降下剤の効果を弱める結果だったという米国ワシントン大学のグループによる報告(ニューイングランドジャーナルオブメディシン2001年11月29日号)もあった。
「ビタミンCが風邪に効く」といわれるが、いくつかの試験結果からは、治りを早くする可能性はあるものの、予防効果は確認できていない。その一方で、感染症発生率や高齢者の認知機能については有望とされる報告もある。
ビタミンCが免疫機能にかかわることは事実である。ただ、たくさん摂ることで活性化するというよりも、もともと十分に働くには一定量摂取するのが当然で、必要な量を摂らないことで免疫機能が弱ってしまうと考えた方が現実的のように思う。人間は、ビタミンCを体内で作ることができない。
摂り過ぎということはないのか?
摂りすぎても排出されるのは確かだが、だからといって摂りすぎが全く問題ないわけではない。
ビタミンCが尿中に排出されることで、尿糖や尿潜血反応が偽陰性になることがある。
最近では、偽陰性にならないような工夫も研究されている、正確な診断を妨げる可能性があることは、覚えておいた方がいいだろう。
健康診断などで尿検査をする場合には、事前に還元作用のあるビタミン剤などの摂取は控えた方が無難だ。
高濃度ビタミンC点滴療法
また、大量のビタミンCを点滴注入するがん治療『高濃度ビタミンC点滴療法』も、その効能が取り沙汰されている。
その書籍を上梓した一人である三番町ごきげんクリニックの澤登雅一氏の著書では、卵巣がんが一人と、悪性リンパ腫が一人の生還が紹介されている。
卵巣がんにしろ、悪性リンパ腫にしろ、どちらも化学療法が効くとされているものだ。
『高濃度ビタミンC点滴療法』が日本で最初に行われた例とされているのは、悪性リンパ腫であり、また、この治療法を語るときは、必ずと言っていいほど悪性リンパ腫に対する試験官実験が出てくる。
東海大学では、澤登雅一氏らにより、再発した悪性リンパ腫患者に対する試験も行われたという。
もしかしたら、化学療法の補完としての可能性はあるかもしれない。
が、それを裏付ける決定的な論文や疫学調査はなく、また現実としてこの治療は自由診療のためお金もかかる。
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