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スケプティクスにフコイダンの「抗がん」という宣伝を調べる

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スケプティクスにフコイダンの「抗がん」という宣伝を調べる

スケプティクスにフコイダンの「抗がん」という宣伝を調べる。フコイダンという健康食品をご存知だろうか。あたかも薬品のような宣伝で「がんが治る」と言い切る、いわゆる「抗がん健康食品」の中でもアガリクス、プロポリスと並ぶ有力商品だ。

売り方がより巧妙になった

今回は、そのフコイダンについてスケプティクスな立場から書こう。

「健康ブーム」といわれる昨今、いわゆる「抗がん健康食品」の市場が確立している。

それらは、エビデンス(医学的立証性)もないのに、あたかも薬品のような宣伝で「がんが治る」と言い切り、逮捕された業者も出るなどしばしば問題になっている。

最近では、売り方がより巧妙になり、業者は販売のみを行い、宣伝は「会」や「研究所」を名乗る別団体が行う体裁をとっている。

第三者が宣伝することで薬事法をクリアする狙いだ。

ジャンルとしては、アガリクスやメシマコブなどのキノコ系、プロポリスや免疫ミルクなどの生物分泌系、鮫の軟骨やキチンキトサンなどの動物系、アラビノキシラン、カテキンなどの植物系など多岐に亘るが、独自のジャンルとして注目されつつあるのがフコイダンだ。

フコイダンにはがんのアポトーシス誘導作用があると宣伝

フコイダンというのは、「硫酸化多糖類(硫酸化フコースポリマー)」のことで、海藻類にあるヌルヌル成分といわれている。しかし、健康食品としてはそれらを抽出したものもあれば、海藻類ごと低分子化した飲料として売られているものもあり、化学成分として厳密に定義されているわけではない。

それがどう「独自」なのかというと、いわゆる「抗がん健康食品」は、服用者の免疫力を高めてがんを治すことになっているが、フコイダンは、それ自身ががん細胞に攻撃を加え、アポトーシス(細胞自殺)させるという。

宝酒造のバイオ事業部門が、1996年の日本癌学会で、「ウロン酸を多く含むタイプのフコイダンには、ガン細胞に対してアポトーシスを誘発する」ことを発表したため、フコイダンの業者は必ずといっていいほどそれを宣伝文句に使っている。

だが、この研究は「シャーレ上」であり「ヒト」を対象としたものではない。

また、多くの健康食品業者にフコイダンを卸しているタングルウッドという会社は、「フコイダンにはアポトーシス誘導作用はない」といっている(タングルウッド社『フコイダンの概要』)

いったい、本当のところはどうなのか。

「アボトーシス」を宣伝文句に使っている業者は、いかなる根拠でそう言い切っているのか。

私は、インターネットのWebサイトでフコイダンを「抗がん健康食品」として推奨する11の「会」「研究所」と名の付くところに片っ端から質問をしてみた。ところが、残念ながら結果は芳しいものではなかった。

宝酒造の報告を我田引水に利用

まず、回答自体がたった5団体からしか返ってこなかった。

ということは、あとの6団体は自らの拠って立つものもないか、もしくはきちんと述べられないまま、耳障りのいい言葉を並べているということになる。

これはもう論外だ。

さんざん「アポトーシス」をセールストークにしているのだ。

たとえそれが科学的に定説として認められるところまでいっていなかったにしても、自分たちなりの根拠や推理をきちんと述べ、異説に対しても整合性を模索する態度があってしかるべきではないか。

消費者は、ワラにもすがる思いでこうした商品を求めているのだ。

回答があった団体のうち、「アポトーシス」を宣伝する根拠は「宝酒造説による」と回答したのが2団体。

ただそれらはいずれも、タングルウッド社の説に全く言及していない。

要するに、「いろいろ説はあっても、宝酒造がアポトーシスと言っているのだからそう宣伝しているんだよ」ということらしい。

しかし、そもそも宝酒造は、どんなフコイダンにでもアポトーシス誘導作用があるとは言っておらず、「ウロン酸の割合の多いフコイダン(いわゆるUーフコイダン)」のみにそれがあると言っているに過ぎない。

ところが、「2団体」は自らの推奨するフコイダンが「Uーフコイダン」である、とは言っていない。

つまり、「Uーフコイダン」でもないのに、「Uーフコイダン」のみがあるとしている作用をあたかも自分たちの推奨するものを含めたフコイダンと名の付くもの全てにあてはまるように宣伝していることになる。

結局、科学的に認知された言い分はひとつもなし

さらにいい加減な団体もあった。曰く、

「フコイダンはそもそも定義が定まっていないから、タングルウッド社の分析は正しいともいえるがそうでないともいえる」

「一般的にわかりやすい形でお伝えする意味でフコイダンには抗腫瘍作用があると認識している」

フコイダンの「定義が定まっていない」といいながら、他者のフコイダン研究の真偽を「そうではないともいえる」と否定し、その一方で「抗腫瘍作用があると認識している」などと言い切る。

「定義が定まっていない」ものに、どうやって「一般的に」「抗腫瘍作用」を「認識」できるのか。

そのデタラメな論理には驚くばかりである。

結局、自らの仮説をきちんと述べてくれたのはわずか2団体だけだった。

そのうちのひとつは、フコイダン自体にアポトーシス誘導作用がないことを認めつつ、「フコイダン(高分子多糖類)を分解したフコースを中心とした単体糖質栄養素(単糖)にその作用(アポトーシス誘導)がある」と推理している。

もうひとつの団体は、モズクから抽出される低分子画分フコキサンチン様の成分にあるカロチノイドの一種に、抗腫瘍作用があるとしている。

もちろん、これらについても仮説の段階であり、科学的に認知されたわけではない。

いずれにしても、これが業者たちの「アポトーシス大合唱」の根拠を調べた偽らざる実体だ。

業者のデタラメな態度が健康食品を巡るトラブルの原因

業者がいい加減だから、その健康食品には絶対に期待できない、とまで断言はしない。

これだけで、フコイダン自体を否定することはないし、研究は引き続き行えばよいと思う。

ただし、これは論理上の話で、「ない」と否定しないことが、「ある」ということにはならない。

いずれにしても、業者のデタラメな態度が、健康食品を巡るトラブルの原因になっていることは確かである。

フコイダンについては、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。

健康情報・本当の話

健康情報・本当の話

  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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