フードファディズムとは、食品に含まれる栄養成分素や特定の食材が、健康と病気に与える影響を過大に信じることであり、科学が立証したかどうかも確認しない。しかし、食品に対する期待や願望は、健康が食品で買える錯覚に陥らせトラブルに繋がることもある。
フードファディズムは「○○はがんに効く」と言うけど信じる?
フードファディズムとは、特定の食品や食事法が健康に対して効果的であり、他の食品や食事法は悪影響を与えると信じられる傾向のことを指す。
健康情報をうたうテレビ番組で、「○○を食べると健康にいい」「△△を食べると××になる」といった食材や食品の取り上げ方をするために、こうした考え方が国民・消費者の中に流行してしまったようだ。
しかし、医学、保健学、栄養学などにかかわるまともな専門家は、むしろそうした考え方を戒めている。
フードファディズムは、健康に対して誤った情報を伝え、ときには栄養不足や食事障害の原因になる可能性があると考えている。
フードファディズムによって、特定の食品や食事法が一般的に推奨されるバランスの取れた食事から外れ、過剰に偏った食事になってしまうことがあるからだ。
たとえば、グルテンフリー、ダイエット、生食など、健康に良いとされるフードファディズムがあるが、それらが健康に対して、真に効果的であるかどうかは科学的に確証されているわけではない。
また、フードファディズムによって排除される食品が、健康に必要な栄養素を提供している場合もある。
だから、食事の選択においては、バランスの取れた食事を心がけ、健康に必要な栄養素をバランスよく摂取することが重要だと考える。
また、個人的な健康状態や食物アレルギーなどを考慮した上で、適度な運動や良質な睡眠、ストレス管理などを含めたライフスタイル全般に気を配ることが大切だと思う。
といったことを踏まえた上で、以下をお読みいただけると幸甚である。
いろいろなものを食べバランス良く栄養を摂る
人類の長い歴史を経て、淘汰されずに私たちの食卓にのぼる食材や食品は、どれが必要でどれが不必要ということはない。
いろいろなものを食べることで、食材同士がそれらを補完したり相殺したり相乗したりして、バランス良く栄養を摂ることができるからだ。
たとえば、小豆はポリフェノールや食物繊維を多く含むが、ビタミンAやビタミンCがほとんどないといわれる。
逆に、ビタミンはあるけれどもカロリーがない野菜もある。
そこで、野菜サラダを食べる時は、小豆を加えることで栄養のバランスがとれるというわけだ。
ところが、特定の栄養素や食材の「いいところ」と「わるいところ」だけを取り沙汰すことで、ともすれば、「いいところ」だけを食べたり、「わるいところ」のある食材・食品を徹底的に回避したりする食生活の偏りがうまれ、そのバランスがくずれる可能性がある。
最近では、肉など動物性食品を食べるな、という「健康情報」が幅を利かせている。
しかし、そのおおもとにある根拠は、肉の摂取量が日本人よりもずっと多いアメリカで発表された「マクガバンレポート」であり、日本人の平均的肉摂取量をもとにした報告ではない。
日本人に対して、どのくらいの動物性食品の摂取で健康被害が多発するかという調査はない。
もとより食材の、アミノ酸スコア(体内で合成できない必須アミノ酸が含まれる比率)は、肉や魚や卵といった動物性食品が、大豆などの植物性食品を上回る。
また、戦後の日本人の平均寿命が驚異的に延びたのは、動物性食品が食卓や給食に使われるようになった戦後世代の食生活によるという説もある。
要するに、動物性食品も食べ過ぎてはいけないというだけで、他の食品とのバランスが大切なのである。
特定の食べ物が「がんに効く」「がんになる」という説も怪しい
また、特定の食べ物が「がんに効く」「がんになる」という説も怪しい。
食材の特定の成分に、「発がん性」や「抗がん作用」が発見されることはままある。
しかし、ひとつの食材の中に発がん作用とその何倍もの抗がん作用が同居していることが多く、その一方で、「抗がん作用」がイコール「がんに効く」とならない点にも注意が必要である。
健康食品を宣伝するときに、成分の〇〇に抗がん作用が発見されたというニュースがある。
健康情報番組で、それらを含む食材・食品が紹介されると、スーパーの棚は空っぽになる。
そして、その〇〇のサプリメントがバカ売れする。
しかし、それはいくつもおかしな点である。
ひとつは、その成分に抗がん作用があるからといって、それを食べた人間のがんに効く保証はない。
その成分を、人間が血中に摂り入れられるのか。
ヒトの血中に入っても、同じ効果を発揮できるのかはわからない。
医学的科学的に認められるには、試験管実験では「話半分」。
学会発表でも「まだまだ」。
その学界で権威ある雑誌に発表されてはじめて検証対象になる、という段取りが必要なのだ。
まあ、巷間の抗がんサプリメントは、そもそも試験管試験自体すら怪しい場合が多いのだけれどね。
それと、食べ物を特定の目的で選んでしまうことのデメリット。
どんな食べ物も、人間にとって都合のいいものと悪いものが入っている。
特定の「都合のいいもの」のために、それが含まれている食べ物「ばっかり食べ」て、その食べ物と競合したり、相反したりする食べ物を「絶対禁忌」としたりすることで、後者の食べ物のメリットを享受できなくなる。
卵が、最も良いタンパク質といわれると、卵ばかり食べる。
基準値はなくなったというが、コレステロールは間違いなく上がる。
納豆がいいというと、納豆を集中的に食べる。
しかし、納豆は1日の上限としたほうがいい量がわかっている。
獣肉は、赤肉が大腸がんになるだの、食物繊維がないだのといわれるが、魚とともに人間の貴重なタンパク源であり、完全にそれを避ける食生活が賢いとはいえない。
大根おろしに医者いらずといわれるが、だからといって大根おろしばかり食べて、健康診断を怠ったらまずいよね。
ことほどさように、私たちが健康を維持するには、食べ物だけではなく、運動や生活サイクル、ストレスなどさまざまな視点から見て行くことが必要である。
特定の食品や食材に期待を抱くことは、その多くが「自然由来」の「成分抽出」である健康食品(サプリメント)への依存や過剰な期待につながり、それはいきおい、悪徳業者に騙されたり、通常の治療を受ける機会をみすみす失ったりすることになりかねない。
フードファディズムについては、『健康情報・本当の話』(楽工社)に詳しい。
以上、フードファディズムは、食品に含まれる栄養成分素や特定の食材が健康と病気に与える影響を過大に信じることでエビデンスも疑問、でした。
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