「メタボ健診」を疑え!『東京スポーツ』(2007年11月28日付)の連載、「来年4月からスタート メタボ健診って何だ?」が健康診断の特化を懸念して興味深い。どこが興味深いかというと、「健康診断がメタボ症候群に特化されることに疑問を感じる」からだ。
40歳以上のすべての人に義務づけられている「メタボ患者探し」の「健診」に対して、スケブティクス(懐疑者)的立場で書かれているのは、『東京スポーツ』(2007年11月28日付)の「来年4月からスタート メタボ健診って何だ?」である。
政府のキャンペーンにのっからずに、「健康診断がメタボ症候群に特化されることに疑問を感じる」と懐疑的な立場から見ていこうとしているのは興味深い。
『健康日本21』などの失敗による制度改変か
健康診断は、さまざまな病気の早期発見を目的としていたはず。
それがいったい、なぜ唐突な制度改変が行われたのか。
記事から見ていこう。
識者は次のように語る。
「これまでの生活習慣病対策、例えば『健康日本21』などがうまくいかなかったからですよ」
「日本と外国では根本の概念が違う。外国では高血圧や高脂血症などについて、複数の異常がある場合をメタポリックシンドロームと呼ぶが、別に肥満であってもなくてもいいわけです。肥満は一つの要素であって、日本のような要件にはなっていない」〈茨城キリスト教大学教授で現役の内科医・板倉弘重〉
「ウエストの測り方にしても、欧米基準どは撃っ日本独自のもので、科学的根拠がない。腹囲に関して男性よりも女性の方が大きいとする基準は日本以外になく、国際糖尿病連合からは『日本のおかしな基準は使わないように』と宣言文が出されたほどだ」
「〈そもそもウエスト85センチというのは、中年男性の平均値とほぼ等しく〉これでは、男の半数はメタボだということになってしまうおかしな数値。私がだいたい、そのくらいのウエストなんですよ」
「メタポリックシンドロームがあたかも病気であるように言うのは間違い。その基準は本来、ある特定の疾患予防のための、生活習慣の改善目標に過ぎないんです。米国の場合、糖尿病は糖尿病予防、心疾患は心疾患予防の基準があり、それぞれに数値も項目も違います」〈東海大学医学部・大櫛陽一教授〉
『健康日本21』とはなんだ
ところで、大櫛陽一教授の話の中に出てきた『健康日本21』とは何か。
正しくは、21世紀における国民健康づくり運動、という。
要するに、21世紀において、日本に住む一人ひとりの健康づくりのための、新しい考え方による健康運動ということらしい。
出た!持続可能。
健康日本21は生活習慣病対策を中心としているが、生活習慣病は増加状況にあるからだとし、「がん、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病については、加齢も考慮する必要があるが、これまでの疫学研究によって、日頃からの食生活、運動などの生活習慣がその発症に強く影響することが明らかになってきている」から、生活習慣を改善しようということだ。
ただ、問題はどう改めるべきか、ということだが、たとえば糖尿病対策についても、2通りの意見がある。
ひとつは、バランスの良い食事とか、低カロリーがいいといった指導だ。
だが、『ケトン体が人類を救う~糖質制限でなぜ健康になるのか~』には、「カロリー(を減らせ)神話」は間違いだと指摘している。
カロリーではなく、糖質量に注目して食事の管理をすれば、血糖値を管理できる。 薬を使わなくても、血糖値を管理できる。
また、「バランス(のよい栄養がいい)神話」も批判している。
ところがこの栄養比率には、学会も認めるように、何ら根拠がない。 それなのにこの比率は、金科玉条となってすべてを拘束している。
つまり、生活習慣を改めるという総論はいいとして、問題は各論のエビデンスが怪しいという話である。
メタボ健診制度のまとめ
同紙では、「日本では効率よく生活習慣病を探し出すために『肥満』という因子を基準に据えたが、これは対象をマスで絞り込むための技術的手法。決して医学的な判断ではない」とまとめる。
医療費削減の大号令の下、象徴的な改革目標としてこの健診があらわれた。過剰なコレステロール降下剤や降圧剤の使用をただちにやめて、ピロリ菌除菌等、現在矛盾のある保険制度を見直した方が、よほど医療費を効率よく使う「予防」につながると思うが、どうだろうか。
「メタボ健診」というが、「健康診断がメタボ症候群に特化されることに疑問を感じる」意見が出ていることで国民は不安視している、でした。
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