乳酸菌と大豆イソフラボンは健康に良いとされるが、それらの日常的摂取が日本人女性の乳がんリスクを減らすという報告があった。ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株や大豆イソフラボンを含む食品・飲料の摂取状況を調査によるものだ。
乳酸菌と大豆イソフラボンは、従来健康によいものとされてきた。
今回それらは具体的に、日本人女性の乳がんリスクを減らすという報告があった。
まず、そもそも論として乳酸菌と大豆イソフラボンについてまと、その上で報告内容についてご紹介しよう。
乳酸菌とはなんだ
乳酸菌とは、乳酸発酵を行う菌の総称である。
つまり、乳酸菌と言われる菌は複数ある。
乳酸菌は、ヨーグルトやチーズ、キムチ、醤油、味噌、日本酒などの発酵食品の製造に欠かせない微生物だ。
また、人間の腸内にも存在し、腸内細菌叢の一部を構成している。
乳酸菌は、主に乳酸を生成することで、他の微生物の繁殖を防止し、食品を保存する効果がある。
さらに、乳酸菌は、腸内細菌叢を構成することで、腸内環境を整え、免疫力を向上させることが知られている。
また、乳酸菌は、腸内環境を整えることで、便秘や下痢、アレルギー、アトピー性皮膚炎、うつ病などの改善にも効果があるとされている。
乳酸菌には、多様な種類がある。
代表的な乳酸菌としては、ラクトバチルス属、ビフィズス菌属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、レンサ球菌属などが挙げられる。
これらの乳酸菌は、それぞれ異なる特性を持っており、食品の種類や効果によって、適切な乳酸菌が選ばれる。
最近では、乳酸菌を摂取することで健康増進に効果があるとされ、サプリメントやドリンク、食品などが市販されるようになった。
ただし、乳酸菌を過剰に摂取することで、逆に腸内環境を悪化させることもあるため、適量を守って摂取することが大切だ。
また、乳酸菌には、抗生物質などの薬物によって、抵抗性を持つ種類もあるため、医師に相談してから摂取するようにした方が良いだろう。
大豆イソフラボンとはなんだ
一方、大豆イソフラボンとは、大豆に含まれる植物性化合物の一種で、女性ホルモンに似た働きをすることが知られている。
大豆イソフラボンは、エストロゲンと同様の働きをするため、「植物性エストロゲン」とも呼ばれる。
大豆イソフラボンには、以下のような効果があるとされている。
- 更年期障害の改善
- 骨粗鬆症予防
- 女性特有のがん予防
- 血管保護効果
- 美肌効果
大豆イソフラボンは、エストロゲンに似た働きをするため、更年期障害の症状(ホットフラッシュ、不眠症、イライラなど)を改善する効果があるとされています。
エストロゲンは、骨の形成を促進する働きがあるため、更年期以降に女性が骨粗鬆症になるのは、エストロゲンの減少が原因とされています。大豆イソフラボンには、エストロゲンと同様に骨の形成を促進する働きがあるため、骨粗鬆症予防に効果があるとされています。
大豆イソフラボンには、抗酸化作用や抗がん作用があるため、乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの女性特有のがん予防に効果があるとされています。
大豆イソフラボンには、血管を拡張する働きがあるため、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病予防に効果があるとされています。
大豆イソフラボンには、コラーゲンの生成を促進する働きがあるため、肌のハリや弾力を保つ美肌効果があるとされています。
大豆イソフラボンは、大豆製品(豆腐、納豆、味噌など)から摂取することができる。
また、サプリメントやドリンク、化粧品なども販売されている。
ただし、大豆イソフラボンは、過剰に摂取すると女性ホルモンのバランスが崩れ、月経周期の延長や子宮内膜増殖症のリスクが高まる試験結果が報告されている。
ただし結果は「後ろ向き調査」だった
乳酸菌と大豆イソフラボンの日常的摂取が日本人女性の乳がんリスクを減らす、という研究結果が、アメリカで開かれた乳がんシンポジウムで発表され、話題になっている。
報告しているのは『日刊ゲンダイ』(2009年12月28日付)の記事だ。
まずは記事について引用する。
発表者は京大医学部付属病院の戸井雅和教授と東大大学院医学系研究科の大橋靖雄教授。戸井教授らは、40歳から55歳の日本人女性約1000人(早期乳がん患者306人含む)を対象に、10代初期、20代初期、現在から10~15年前の3時期におけるラクトバチルス・カゼイ・シロタ株や大豆イソフラボンを含む食品・飲料の摂取状況を調査した。
その結果、乳酸菌シロタ株の乳酸菌飲料を週4日以上飲んでいた女性は、週3日以下の女性に比べて、乳がんになる可能性が34%減少する可能性が示された。また、大豆製品をあまり食べない女性の中で、シロタ株を含む乳酸菌飲料を週4日以上飲んでいた人は、週3日以下の人よりも乳がんリスクが43%減少していた。
早期乳がん患者と比べ、乳がんになっていない人は、シロタ株を含む乳酸菌飲料や大豆が製品をより多く摂取していた。
こうした研究結果から、若いころからのシロタ株を含む乳酸菌飲料や大豆製品の摂取が、日本の中年女性における乳がんリスクを減らす可能性があるとしている。
乳酸菌飲料メーカーが喜びそうな試験結果だ。
報告は喜ばしいが、医学の専門家はこの結果をあまり評価しないだろう。
理由は、この試験が、いわゆる「後ろ向き調査」だからだ。
つまり、過去に振り返って考察するということだ。
松尾貴史さんが、やはり「日刊ゲンダイ」の連載で、歯磨きと健康の関係に言及。歯磨きすれば健康になるという試験結果に対して、健康に気を使う人は歯磨きをするから結果としてそうなるのではないかと述べていた。
それと同じで、交絡因子を排除しきれない試験は、どうしても学術的評価が低くなる。
ただ、それはあくまで、考察通りとは限らない、というだけで、その試験自体が嘘だ、無意味だ、ということではない。
松尾貴史さんの件で言えば、歯磨きと健康にも十分可能性はある。
それを確実なものにするために、今度は「前向き調査」を引き続き行わなければならない。
しかも、単なる「週何日飲んだか」という前向きではなく、いつ飲んだか、また血中濃度なども調べる試験が必要だろう。
いずれにしても、学術的に「答えを出す」というのは、時間と手間暇のかかることなのだ。
以上、乳酸菌と大豆イソフラボンは健康に良いとされるが、それらの日常的摂取が日本人女性の乳がんリスクを減らすという報告があった、でした。
コメント