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他人の顔(1966年、東京映画・勅使河原プロダクション/東宝)は同名の小説を作者の安部公房が脚色した京マチ子主演映画

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他人の顔(1966年、東京映画・勅使河原プロダクション/東宝)は同名の小説を作者の安部公房が脚色した京マチ子主演映画

『他人の顔』(1966年、東京映画・勅使河原プロダクション/東宝)は同名の小説を作者の安部公房が脚色した京マチ子主演の映画です。勅使河原宏監督による、顔に大火傷をおった男が妻との関係を修復するため他人の顔を医者に作ってもらうストーリーです。

京マチ子さんの訃報が話題です。

これで、田中絹代、原節子、高峰秀子、山田五十鈴、京マチ子の昭和五大女優が亡くなったともネットでは述べられています。

京マチ子さんは、それだけ多くの作品に出演されていますが、その中でも異色の作品と言われているのが、『他人の顔』(1966年、東京映画・勅使河原プロダクション/東宝)です。

市原悦子に見破られて動揺する仲代達矢

手違いによる爆発事故で顔全体に大やけどを負い、頭と顔を繃帯ですっかり覆われた奥山(仲代達矢)。

これまでの顔を失ったことで精神状態が悪くなり、会社の人間や妻(京マチ子)など、対人関係が昔のように戻らなくなります。

そこで仲代達矢は新しい人間関係を構築するため、精神科医(平幹二朗)に頼み込んで、精巧な仮面を作らせて別人を装い、妻がどういう反応をするか見ようとします。

仲代達矢は、これまでの自分と、別人を装った他人の顔との二重生活のため、同じマンションの部屋を2つ借ります。

なかなか不経済ですね。

そのマンションの管理人(千秋実)には、知的に障害のある娘(市原悦子)がいます。

市原悦子は、いつもヨーヨーで遊んでいるのですが、あるときヨーヨーが木の枝にひっかかりとれなくなります。

市原悦子が木に登ろうとするのを見ていた「他人の顔」の仲代達矢は、「やめなさい。僕が新しいものを買ってあげるから」と約束します。

しかし、旧来の顔の仲代達矢が借りたほうの部屋に市原悦子がたずねてきて、「ヨーヨー買うって約束したじゃな~い」と催促に来たため、「うっぷす。見破られた」と仲代達矢は動揺します。

一方、毎日顔を合わせていた会社の秘書は、「他人の顔」の仲代達矢を旧来の包帯の顔と別人に思い、「守衛を呼びます」と追い返します。

「他人の顔」の仲代達矢は、秘書が気づかないことでまた自信を取り戻し(笑)、他人のふりをして、いよいよ街を歩く京マチ子に声をかけます。

京マチ子は仲代達矢の誘いにのって、出会いから数時間で関係を結びます。

仲代達矢は、「他の男」であるはずなのに簡単に誘いに乗ったことで、「他の男に走りやがった」という嫉妬の気持ちで京マチ子をなじり、「他の男」としての仮面を剥がそうとします。

しかし、京マチ子曰く、「初めからわかっていた」と背を向けます。

そんなバカなというものの、どうやら本当みたい。

ということは、京マチ子が不貞を働いたわけではない。

ということで、仲代達矢は、京マチ子にやっぱりもう1度関係をやり直したいとお願いしますが、仮面に頼り自分に恥をかかせ罵倒した仲代達矢を許せず、京マチ子は仲代達矢のもとを去るのです。

仲代達矢は、仮面の自分は誰でもない他人なのだと自分に言い聞かせ、次第に人格や理性までも破綻していくのでした。

入江美樹が美しいからこそ生きるサイドストーリー

仲代達矢の仮面は、知人でも気づかないほどのよくできている設定です。

ですから、仲代達矢が仮面をつけている前提で、素顔の演技をしています。

そこで、ストーリーのクライマックスである、京マチ子に仮面の中の本当の顔を見せるため、仲代達矢が半分まで仮面を剥がしかけたときはは、どこから仮面でどこから素顔の仲代達矢なのか、観る者に少しも不自然さを感じさせません。

仲代達矢の演技だけではなく、小道具の技術自体がも大変優れているのでしょう。

サイドストーリーになりますが、顔の右半分をケロイドの娘(入江美樹)と、その兄(佐伯赫哉)の物語がところどころに挿入されています。

仲代達矢が、以前観た映画の回想として描かれています。

入江美樹は、旧軍人精神病院で働いています。

病院に入院している男の一人が田中邦衛です。

田中邦衛が、突然「空襲警報ー!」と叫ぶと、まわりの患者たちはいっせいにその場に伏せて動かなくなります。

精神病院は、本当にこうした光景が日常的にあるのでしょうか。

映画『他人の顔』は京マチ子がヒロインです。

が、サイドストーリーながら入江美樹の美しさも必見といえます。

入江美樹は、ファッションモデルとしても活躍していただけあって顔立ちが端正です。

だからこそ、役の上の、右半分のケロイドと左半分の美しさとの対比が際立つのです。

それにしても、入江美樹がなぜ、「戦争はこないわね」と繰り返し語ったのか。

兄と二人で海辺の旅に出かけたきっかけなど、詳しいことは何も語られていないのですが、メインストーリーよりもこちらのほうが印象に残るというレビューも気持ちはわかります。

『他人の顔』のまとめ

前半では、主人公の顔を隠し、後半で仮面として顔を出すのは、監督の演出としてなかなか凝っていると思いました。

手術が終わり、帰宅すると、仲代達矢が鏡に向かって独り変顔をするのはくすっと笑ってしまいます。

舞台はSFのような造形で、ブラックコメディ風の演技です。

フィルムノワールタッチの映像に、人間の以上心理等、見どころは多々あります。

そして、どこかユーモラスです。

窓際で、カーテンをもっている仲代達矢が、突然牛になるカットは意味不明ですが衝撃的です。

最後の通行人がみんな仮面被ってるシーンは強く印象残ります。

仮面の下では皆凶暴という人間の本質を突いていて、むしろ普通のホラーより恐ろしいけれど面白い物語でした。

映画のラストは原作とは違っていますが、気になる方は映画版でご確認ください。

以上、他人の顔(1966年、東京映画・勅使河原プロダクション/東宝)は同名の小説を作者の安部公房が脚色した京マチ子主演映画、でした。

他人の顔 (新潮文庫)
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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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