健康情報・本当の話(楽工社)は、このほど上梓した新刊本。健康情報資料と取で検証。健康情報に対するまっとうな接し方を示す。それはいきおい、問題になっている健康食品や民間療法に言及するため、「関係者」の反発もあった。
『健康情報・本当の話』(楽工社)を上梓させていただいた。
怪しい健康情報を豊富な資料と独自の取材を通じて検証し、誰もが気になる「本当のトコロ」を明らかに。
さらに、健康情報に対するまっとうな接し方を示す。
ヘルス・リテラシーが身につく一冊。
以上は、出版社が作ったコピーである。筆者はまーったく関知しない。
5月27日の発売である!
健康食品や民間療法について、おもなものを取り上げているが、頭からダメと決めつけないで、事実を枚挙して論考している……つもりだ。
本書の内容をかいつまんでご紹介しよう。
AHCCとサメの軟骨とビタミン剤による「新免疫療法(NITC)」
最初は、AHCCとサメの軟骨とビタミン剤などを使い、「新免疫療法(NITC)」と称した治療法を説明した書物『免疫療法の最前線 ガン細胞が消えた』(二見書房)を取り上げている。
「抗がん健康食品」のブームの先駆けともいえる役割を果たしたからだ。
「免疫療法」という言葉が出てきたが、がん治療には、免疫療法と呼ばれるものがある。
血液中の白血球にある免疫細胞にがん細胞を攻撃する作用があるので、それらを体外で培養して体内に戻したり、活性化させる物質を投与したりして免疫機能を高め、がん細胞を攻撃させるという治療法だ。
ただし、「新免疫療法(NITC)」はこれと何の関係もない。
推奨する医師は同書で、それらがどうしてがん治療に機能するかを述べている。
それらは本当にがん患者の治療に使えたのか。
2002年に関西医科大学で、肝臓がん術後患者を対象にしたAHCC摂取による調査が行われ、再発を少なくしたり延命効果があったりするとの報告があった。
2006年にはタイで、すでに手術が適応でない緩和ケア中の進行肝臓がん患者がAHCCを摂取したところ、免疫機能については若干の向上があったものの、統計的に有意であるところまでには至らなかった。
これだけの報告で軽率に判断はできないが、AHCCには免疫力を向上させる可能性はあるものの、少なくとも進行の深いがんに太刀打ちできるほどのものにはなっていないと解釈できる。
もしくは、免疫力だけでは進行がんには立ち向かえないことを示唆している。
大阪大学や金沢大学など、健康食品の研究に熱心な大学では、AHCCを服用することで抗がん剤の副作用が軽減するかどうかの調査なども行われている。
サメの軟骨はどうだろうか。
1998年にアメリカで報告された60人の進行がん患者を対象とした臨床試験では、一部に病状安定は見られたものの、腫瘍の縮小や消失は認められなかった。
2002年に腎細胞がんを対象とした第二相臨床試験では、高容量(40ml)摂取で「生存予後に関して利益をもたらす可能性がある」と報告された。
2005年には、乳がんと大腸がんの進行がん患者に対して生存率とQOLの向上について調べたものの、有効性は示されなかった。
初期のがんや、他の治療法との併用については報告がまだない。
その意味で、結論を出すにはもう少し時間がかかりそうですが、少なくとも進行したがんには期待はしにくいようだ。
それでも、これらはあまたある健康食品の中では、ましな方だ。
何がましかというと、わずかでも改善の可能性が、ヒトを対象とした試験によって示唆されているからだ。
残念ながら、他のほとんどの健康食品は、ヒトを対象にした試験は行われていないか、行われていても有意な成果を見ることができない。
ただ、いずれにしてもこういう段階では、当然ですが治療に使えるわけではないし、ましてや、これで「治る」と医師が言うことなどあってはならない。
ところが、それをやってしまった医師がいた。
本書では、その医師がどうなったかという経緯を追っている。
抗がん剤を巡る論争
抗がん剤は、がん治療で賛否が別れる「化学療法」だ。
通常は、民間療法関係者は否定し、一説には医師もがんになったら抗癌剤を否定する、なんて話もある。
それをもって、抗がん剤否定論はますます元気づく。
だが、医師が自分のがんに抗がん剤を避ける事がもしあったとしても、それは医師個人の価値判断というだけのことで、だから抗がん剤は医療で否定されるべきということにはならないだろう。
腎臓がんから生還したと標榜し、がん治療問題に関わっている川竹文夫さん(ガン患研)は抗がん剤を否定している。
『「ガン・治る法則」12カ条』(三五館)というQ&A形式で書かれた自著でも、川竹文夫さんは抗がん剤について、次の3点の「抗癌剤の問題点」をあげつらっている。
・4週間小さくなるだけで「効く」とする(まやかし)
・100%効かないのに認可する
・副作用が強くがん以前にそれ自体で絶命しかねない
だから、抗がん剤は信用できないという。
抗がん剤に強い副作用があるのは確かだが、がんは様子を見ていても進行する。大きくなり転移もする。
時間との勝負なのだ。
「4週間小さくなるだけ」というが、実はその「小さくなる」ことがどれだけ大変であり、かつ意義のあることか。
手術や放射線療法でとりきれないときでも、がん細胞を減らして症状をなくすことによって緩解に持ち込んだり、QOLを向上させたりすることもできる。
川竹文夫さんも、腎臓摘出後に抗がん剤を経験し、何らかの副作用に苦しんだのかもしれない。
しかし、それがなかったら、もしかしたら再発や転移をしていたかもしれないのではないか。
人間、元気になると強気になり都合良く物事を考えるものだが、「抗がん剤でこんな悪いことがある」だけでなく、「こういう成果がある」という面もきちんと見ておくことが公正なありのままのものの見方ではないだろうか。
大橋巨泉さんも、抗がん剤否定を批判している。

本書では、抗がん剤についても言及している。
「超ミネラル水」について
健康情報・本当の話(楽工社)については、発行後、反応があった。
「超ミネラル水」についてスケプティクスとしての立場からとりあげたところ、「超ミネラル水」のある業者が、元締めであるシーマロックスの販売者・三根健二朗氏に本の”批判部分の”コピーを送り、三根健二朗氏から筆者に圧力か嫌がらせでもするように求めたのだ。
その様子は別の記事『健康情報・本当の話(楽工社)を上梓したところ、“予想通り”健康食品や民間療法についての関係者から「クレーム」がついた』で書こう。
以上、健康情報・本当の話(楽工社)は、このほど上梓した新刊本。健康情報資料と取で検証。健康情報に対するまっとうな接し方を示す。でした。
コメント