大橋巨泉さん(1934年3月22日~2016年7月12日)は日本のマルチタレントの先駆けとして活躍したが、臨終が話題になっている。妻・寿々子さんが、マスコミ各社に、「モルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与」をされ、急激に体調が悪化したと心境を綴ったからだ。
大橋巨泉さんが亡くなった。
急性呼吸不全。
82歳。毀誉褒貶あるが、テレビ界に功績を残した人であろことに間違いはない。
ところで、その大橋巨泉さんの妻・寿々子さんが、マスコミ各社に発表した文書が話題になっている。
内容は、在宅介護の医師から「モルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与」をされ、急激に体調が悪化したから「誤投与がなければと許せない気持ちです」との心境を綴っているというのだ。
しかし、ネット民の反応は批判的だ。
伊達や酔狂で「過剰」投与しているわけではない
終末医療においてモルヒネは、痛みや苦痛を和らげるための投与方法の1つとして使用される。
終末医療とは、末期の病気や重病に苦しむ患者に対して、余命を延ばすことが目的ではなく、苦痛を和らげ、快適に過ごすことを目的とした医療だ。
モルヒネは、オピオイド系の強い鎮痛剤であり、痛みや苦痛を和らげる効果が高いことから、終末医療においてはよく使用される。
モルヒネは、点滴や注射、錠剤、液剤などの形で投与される。
投与方法は、患者の症状や状態に合わせて決定される。
そのことをご理解いただいた上で、以下をお読みいただきたい。
寿々子夫人によると、まず「未だに心落ち着かず、皆様から優しい言葉をかけられると直ぐに涙で声が詰まりお話しできなくなります」とコメント。
今もなお、悲しみにうちひしがれている状況を説明したという。
そして、「もし、一つ愚痴をお許し頂ければ」として、医師からは死因について「“急性呼吸不全”ですが、その原因には、中咽頭がん以来の手術や放射線などの影響も含まれますが、最後に受けたモルヒネ系の鎮痛剤の影響も大きい」と言われたという。
そこで冒頭のように、「モルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与」を悔やんでいるというわけだ。
しかし、ネットではそれに対して批判的である。
詳しい状況はわからないが、普通モルヒネは、治療をあきらめる緩和ケアの、さらに最期の段階で行うものであり、「誤投与がなければ」助かる、という話ではない。
また、たくさんの投与がなされるのは、誤投与ではなく、痛みがそこまで投与しないと庇えないところまできているからだ。
つまり、「モルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与」というが、それで寿命を縮めたわけではなく、ダテやスイキョウで「過剰」投与しているわけではないのに、終末医療を誹謗するな、というわけだ。
かりに、「モルヒネ系の鎮痛剤の過剰投与」で亡くなったとしても、それを行わなければ、本人は大変な痛みを経験して、わずかに臨終の日が延びるだけだ。
そこでWeb掲示板では、このようなコメントが入っている。
「跡を濁したな」
「結果的には苦しみは少なかったのではなかろうか」
「モルヒネ投与してる時点でもう長くねーだろうが」
「いやだね
「で、なければもっと長生き・・」
気持ちはわかりますが、安らかに送り出してほしい」
「量関係なしにモルヒネ射ちだしたらもう終わりっすよ
うちの親父もそうだった」
「最後の最後まで集中治療に携わってくれた医療スタッフに感謝の言葉もない」
おそらくは、ネット民のほうが冷静なのだろうう。
家族の心境を考えたらどうだろう
しかし、それをもって、大橋巨泉夫人を掲示板で叩き続けるのはいかがなものだろううか。
こういうとき患者の家族は、悲しみうろたえているものなのだ。
どこに、悲しみや無念さの気持ちをもっていっていいかわからず、医療のせいにしたり、悔やんでもしかたがないことを悔やみ、自分を責める後悔をしたりするものである。
これは、心境も斟酌せず、いちいちそのようなコメントをそのまま公開したマスコミもどうかと思う。
また、所属事務所の方でチェックできなかったのか、という残念な気もする。
つまり、恨みがましいような表現は、表に出さないほうが良かったのではないか、という話だ。
それと、ひとつネット民の指摘で、外国暮らしをして税金も払っていないのに、病気の時だけ日本に帰ってきて日本の医療費を使うのか、というものがあるが、これはおかしい。
日本で納税しているかどうかはわからないが、少なくとも全盛時は、サラリーマンの生涯年収以上のものを稼ぎ、その納税も行っていたはずである。
いや、そもそも金持ちだろうが貧乏だろうが、日本で暮せば直接税だけでなく間接税だって払っている。
酒を飲み、消費税を払い、文化を遺した。
日本のTV放送70年の半数以上に、大橋巨泉さんが出演者及び番組構成で携わった。
軽妙洒脱な司会者として、世間の矛盾を鋭く突いたジャーナリストとして、TVと向き合った巨泉さんの功績は絶大だ。
また、療養中は、がんもどき理論を自らの体験から批判した。
大衆よ、これでも文句アンのか。
私ごとだが、この方が『11PM』で話していたことを、翌日の就職試験の作文で書いたら、出身校で初めて採用された経験がある。
そういう意味でも、個人的に大変感謝している。
亡くなったからといって礼賛コメントのみ、というのもおかしいが、そのような不毛なコメントをしたり、またさせるような報道をしたりせず、大橋巨泉さんのこれまで日本のテレビ界のモデルとなる番組をたくさん作ってきた先見性や功績を報じ、そして論じたいものである。
以上、大橋巨泉さん(1934年3月22日~2016年7月12日)は日本のマルチタレントの先駆けとして活躍したが、臨終が話題になっている。でした。
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