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「抗ガン作用」と「ガンに効く」を混同するITmediaニュース

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「抗ガン作用」と「ガンに効く」を混同するITmediaニュース

抗ガン作用があるというニュースや健康情報をしばしば見かける。食べ物の何々という成分には抗がん作用がある、というやつだ。しかし、かりにそれが事実であっても、だから、それを摂取すればがんが治るかといえば、そんな単純なものではない。

そこを間違えている不見識なニュースを見つけてしまった。

スケプティクスとして一言しておこう。

『ガンに効くビール』という記事

22日に配信された「ITmediaニュース」に、「米大学生、『ガンに効くビール』作りに挑む」というタイトルの記事が出ている。

米ライス大学の学生が、市販のビールで使われているイーストの遺伝子の2つの部分を組み換えることで、ガンや心臓病を抑制することが動物実験で示されているとする「レスベラトロール」を含むビール「BioBeer」を作るという話だ。

米大学生、「ガンに効くビール」作りに挑む
ガンや心臓病を抑制するとされる「レスベラトロール」の入ったビールを、大学生が遺伝子組み換えで開発している。

ちなみに、学生たちのほとんどは、法律で飲酒が認められる年齢に達しておらず、作業の方も遺伝子組み換え自体が完了していないという。

酒も飲めない「おこちゃま」年齢の学生の「研究」だ。

夢や善意や正義感など純粋な気持ちでいる科学者の卵にいちいち頭から否定して舌鋒鋭い突っ込みを入れるのも野暮な話かもしれないが、ニュースのタイトルに「ガンに効く」などという表現を使う「ITmediaニュース」の見識だけは問うておきたい。

食材の成分に「抗ガン作用」があることは、よく聞く話だ。

みのもんたが司会をしていた『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ)で、毎日のようにやっていたことは、あながち全く根も葉もない話ではなかった。

ただし、「抗ガン作用」を含む食品を食べたからといって、「ガンに効く」「ガンにならない」と、ストレートにはつながらないからやっかいなのだ。

その「抗ガン作用」が人間の体内でも同様にはたらくとは限らないし、はたらいたとしても、ガンの部位に届かなければ意味がない。食べ物なんて、胃で消化されて分子レベルに分解されたものが栄養として小腸で吸収され、あとは大腸から排泄される。

「抗ガン作用」の成分が血中にたくさん含まれればガンの部位まで運ばれるかもしれないが、血液中に異物はそう簡単に入れない。

また、「レスベラトロール」なる物質は、ガンや心臓病を抑制することが動物実験で示されているとするが、試験管や動物実験で成果のあったものが、人間には全く効かないというケースもごまんとある。

エビデンスのないものについて「ガンに効く」という表現はダメ

ヒトに対してどうなのか、という試験がなければ根拠のあるものとはいえない。

巷間、「ガンに効く」とされる健康食品の多くも、この動物実験止まりだからエビデンス(医学的立証性)がないといわれているのだ。(それすらない全くのデタラメ健康食品もあるがそれは論外)

つまり、このビールはたとえ完成したとしても、「ガンに効く」とも「ガンの予防になる」ともいえない。

せいぜい、「抗ガン作用が動物実験で示唆された」という程度だろう。

もし、健康食品の業者が「ガンに効く」などという表現を使えば、薬事法違反になってしまう。

エビデンスのないものについて「ガンに効く」などという表現は絶対にしてはならないし、いまどき、業者もこんなベタな表現は使わない。

2003年8月に「改正健康増進法」が施行され、食品に関する虚偽・誇大宣伝は厳しく取り締まることになったからだ。

薬事法を尊重するなら、取り締まりの対象になろうがなるまいが、そのようなタイトルの付け方は慎むべきだ。

センセーショナリズムで、閲覧者の気を引きたいからといって、安易に「ガンに効く」と題したニュースを配信することで、ワラにもすがりたい患者に、通常医療以外のものに対して必要以上の幻想を抱かせる温床になると思う。

健康情報・本当の話
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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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