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日本脳炎ワクチンは接種か、安全な新ワクチンが開発待ちか

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日本脳炎ワクチンは接種か、安全な新ワクチンが開発待ちか

日本脳炎ワクチンについて考えてみよう。育児中の人が、予防接種をすべきかどうかで悩むのが日本脳炎ワクチンだ。夏もそろそろ終わりを告げようとしているが、涼しくなったからといってすぐには姿を消してくれないやっかいな相手がいる。蚊である。

蚊は小さくても怖い害虫

蚊は雄・雌とも、ふだんは花の蜜、果物の汁、樹液などを餌としている。

植物の茂ったところに蚊が多いのはそのためだ。

その中で雌が、卵巣を発達させて産卵するためのタンパク源供給に、平均して生涯に4~5回吸血する。

その際、1回で吸える血液の量はほぼ自分の体重と同じくらい(2~3ミリグラム)といわれる。

刺す時は、小アゴの先にある歯で皮膚をしっかりおさえ、口針を刺す。

その際、唾腺から麻酔物質や凝血を防ぐ物質などを注入する。

一寸の虫にも五分の魂というが、蚊も生きるために必死である。

その結果、刺された所は赤くはれてかゆくなるのだ。

もっとも、蚊に刺されて問題なのは、痒いこと以上に得たいの知れない病原菌をうつされるかもしれないことだ。

神経質と笑うなかれ。

蚊が媒介する伝染病には日本脳炎、デング熱、黄熱、ウエストナイル熱などがあり、なりは小さくても危険な害虫だ。

中でも問題は日本脳炎である。国内ではいまだに年間数名の患者が発生。予防接種法にも定められている。つまり、ジフテリアや百日せき、ポリオなどと同じ範疇にあるやっかいな疾病なのである。

日本脳炎の致死率は20~40%

国立感染症研究所感染症情報センターのサイトによると、日本脳炎は蚊(コガタアカイエカ)によって媒介される感染症であり、6~16日間の潜伏期間ののち、高熱や頭痛、嘔吐などを起こし、続いて意識障害、けいれんやマヒが現れる。

致死率は20~40%とされている。

つまり、10人に2~4人は助からない。

また、助かったとしても、その45~70%にはパーキンソン病様の症状やけいれん、マヒ、精神発達異常、精神障害などの後遺症が残る。

とりわけ、小児の場合は重度の障害が残ることが多いという。

脳炎の症状が現れた時点ですでにウイルスが脳細胞に達しているため、その破壊された脳細胞を修復することができない限り、全快は望めない。

つまり、治療法はないのだ。

身近に日本脳炎の罹患者がいないため、今までその実態を知らずにいたが、調べてみると非常に恐ろしい伝染病である。

治療法がないなら予防するしかないわけだから、予防接種法に定められているのも当然と言えよう。

ワクチンの有効率は80%以上とされている。

その根拠となっているのが大規模な野外実験の結果だ。

台湾での実験では81%、タイでは91%の有効率が確認されたという。

近年の日本脳炎患者を調べたところ、そのほとんどは日本脳炎ワクチンを受けていなかったことからも、ワクチン接種は予防に効果的とされている。

「なら、予防接種すればそれでいいことじゃないの?」

ところが、ワクチンで解決、というほど単純な話ではないからむずかしい。

日本脳炎ワクチンについては意見が分かれる

このワクチン、3年前から厚生労働省では積極的な勧奨は行わないことになった。

日本脳炎ワクチンと、重症のADEM(アデム、急性散在性脳脊髄炎)の発症の因果関係を厚生労働省が認め、よりリスクの低いワクチンに切り替えるべきとの判断からだという。

副反応については、厚生労働省によると、ADEMの発症頻度は70~200万回に1回程度。

細菌製剤協会のサイトによれば、100万人に1人程度とのことだ。

つまり、日本脳炎は恐ろしい疾病だが、それを予防するワクチンにも現状では大きなリスクがあるから、「本人又はその保護者が希望するなら自己責任で打ってもかまいません。ただし、国は責任持ちませんよ」という扱いである。

ではその安全なワクチンはいつできるのかと言えば、3年経った現在でもまだ開発中らしい。

厚生労働省は、責任をもって勧められない。

それにかわる予防策はない。

じゃあ、いったいどうすればいいの?

予防接種の必要性については医師の間でも意見が分かれるが、日本脳炎も例外ではない。

必要派の主張はおおむね次のようなものだ。

日本脳炎への対策は蚊が発生しないような環境整備も重要だが、基本はワクチン接種である。
ワクチン接種後、ADEMや重篤なアレルギー反応の報告があるがごく稀である。ADEMとの因果関係も実は明らかではない。
そのベネフィットを考えればワクチンはやめるべきではない。

一方、否定派の主張は次の通りだ。

ワクチンを接種してもその効果は時間の経過とともに失われていく。

感染しても発病しない不顕性感染でも免疫は得られる。

日本脳炎の罹患者が減ったのは、農業の近代化と生活環境の変化で蚊が激減したためであり、ワクチンの効果によるものではない。

現行のワクチンはマウスの脳を製造過程で用いており、ウイルスやプリオンなどの病原体が混入する危険性もありうる。

現在の状況では接種のベネフィットよりも副作用のリスクが高いので接種すべきではない。

専門家ですらこのように意見が対立しているのだから、私たち素人がこうすべき、という結論を導くことは難しい。

ワクチン接種のリスクとベネフィットをどうとらえるかによるが、筆者個人はこの問題を次のように考える。

接種か、より安全な新ワクチンが開発されるのを待つか

日本脳炎はたしかに怖い病気だ。

しかし、感染者すべてが発病するわけではない。

その発病率は国立感染症研究所感染症情報センターによると、100人から1000人に1人。山梨医療情報ネットワークのサイトによれば、発病率は1000~5000人に1人とされている。

ワクチンの有効率は発病者に対する割合だから、発病率0.1%(1000人に1人)、ワクチン有効率80%のとき、1万人のうちワクチンで守られるのは8人。

逆にワクチンを接種しなかったとしても、9990人は発病しないということになる。

ワクチンの副反応のリスクも低いものだが、日本脳炎に罹るリスクもそう大きいものではない。

ただ、 ワクチンには大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2つがあり、日本脳炎ワクチンは「不活化ワクチン」である。

さて、皆さんはどのように考えますか。

キャッチ画像はhana73さんによる写真ACからの写真

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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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