私たちが使う水道水は「健康ブーム」の昨今、どうも危険なもののように扱われている。カルキ臭いのは塩素で身体に毒だ、トリハロメタンは発がん性があるらしい。そのような、まずくてキケンな水など飲んでいられないということだが、それは本当なのか。
日本には水道という便利なものが整備されているにもかかわらず、やれナントカ還元水だの、深層水だの、ミネラルウォーターだのと、市販の水が注目されている。
その理由は、市販の水が「健康によい」とされ、水道水は「まずい」「化学物質が混入して健康上好ましくない」からとされる。
今日は、その点についてスケプティクスに迫りたい。
水道水が「まずい」と言われる理由としては、地域や水源によって水道水の品質が異なるため、味やにおいが強く感じられる場合があることが挙げられる。
また、水道水に含まれる塩素やフッ素などの添加物によって、不快な味やにおいが感じられることもある。
しかしながら、日本の水道水は世界的にも高い品質を誇っており、安全性が確保されています。水道水は厳しい水質基準に従って定期的に検査され、人体に有害な物質が含まれている場合には、適切な対策が取られている。
また、水道水は煮沸やろ過、浄水器の利用などをすることで、さらに安全に飲用することができる。
一方、市販のミネラルウォーターやボトルドウォーターは、価格が高く、環境負荷が大きくなることもある。
総じて言えることは、水道水は一般的に安全で、健康にも害を与えることがないため、普段の飲料水として問題なく利用することができる。
ただし、個人的な好みによっては、ろ過や浄水器などの方法で水質を改善することで、より快適な水の味やにおいを楽しむこともできる。
以上をお含みおいた上で、以下をお読みいただけると幸甚である。
水道水は本当にまずいのか
水道水は薬物(塩素)を使った濾過方式なので、「まずい」という評価を一概に否定はできないが、では深層水やミネラルウォーターがそんなに美味しいかというと、少なくとも水道水の数値を上回る硬水の場合、必ずしもそうとはいえない。
ま、まずいかどうかは好みの問題なので、「間違い」という指摘は適当でないかもしれないが。
硬水は酸化マグネシウムという下剤に等しい物質が含まれているため、その限りでも健康的といえるかどうかは疑問符が付く。
また、水質検査項目は水道水が”自然の水”ミネラルウォーターの約3倍多い。
しかも、ミネラルウォーターは基準があっても水道水よりも緩いものがある。
きちんと検査されて管理されている”安全性”ということなら、水道水の方に軍配を上げるのが順当なものの見方である。
それでも、一部の消費者が市販の水に走る理由の一つは、水道水には残留塩素とトリハロメタンが含まれていることがある。
市販の水の業者はそこを強調し水道水に対する不安を煽っている。
トリハロメタンの発がん性というのは、よくいわれることだ。
たしかに、水道水にそれらが含まれていることも、かつそれら自体が健康によくないことも間違ってはいない。
しかし、肝心なことは、それらが健康被害を起こすほど含まれているのか?ということである。
汚染されていないからこそ残留塩素が多い
水道水には、細菌などの病原微生物を消毒する目的で、「給水栓における遊離残留塩素を0.1mg/リットル以上1.0mg/リットル以下に保持すること」が法律(水道法)で義務付けられている。
従って、水道水である限り残留塩素は必ず含まれている。
WHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインでは、生涯にわたり水を飲んでも人の健康に影響が生じない塩素濃度のガイドライン値は、5mg/リットルである。
我が国の政令指定都市の浄水場で、それを上回る所はどこもない。
最大が仙台市の茂庭浄水場(0.9mg/リットル)であり、WHO基準値の僅か18%に過ぎない。
余談だが、田舎の水、とくに東北や信州などは美味しいと一般には言われるが、残留塩素の最大値が東北の仙台市というのは意外だった。
もっとも、水道計画・水質管理の国際的技術者である小島貞男の著した『水道水 安心しておいしく飲む最新常識』(宙出版)によると、水道水が汚染されると塩素は消費されて残留しなくなるという。
裏を返せば、茂庭浄水場の水道水は、それだけ汚染されていないきれいな水といえるのかもしれない。
ちなみに、東京都の数値は以下のホームページに公開されている。
◆「水質検査結果」東京都水道局
同局に問い合わせたところ、「残留塩素につきましては、1リットルあたり0.1mg以上0.4mg以下を目標として、今後とも低減化に取り組んでおります」(東京都水道局.サービス推進部広報サービス課)というから、こちらも数字はクリアしている。
トリハロメタンも国際的に十分通用する範囲の量
次にトリハロメタンである。
トリハロメタンというのは、水道水の塩素処理を行うことで、水道水の原水である川の水に含まれる植物の腐植質などが化学反応を起こして発生するものだ。
具体的には、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの4種類を指す。
我が国では、生涯にわたり水を飲んでも人の健康に影響が生じない総トリハロメタン(4種類のトリハロメタン検出量の合計値)として、0.1mg/リットル以下という水質基準が定められている。
こちらも全ての浄水場が基準値以内であり、最大値が北九州市の本城浄水場(0.041mg/リットル)である。
東京都も、「水道水中に含まれる総トリハロメタンの量は、常に水質基準値(0.1mg/リットル)以下であり安全性に問題はありません」(同)という。
WHOは、「総トリハロメタン」の基準は設定されていない。
4種類のトリハロメタンについては設定されているが、我が国の基準がそれを上回るものはない。
つまり、我が国の水道水は国際的に十分通用するということだ。
最近の浄水器は、赤さびや残留農薬を取り去るなど高度化を売り物にしているが、我が国の水道水はそれらを含めてチェックされており、そのままでも使えるだけの水質基準はクリアしている。
僅かなトリハロメタンは、沸騰させれば解決する。
集合住宅の貯水槽など、たしかに個々の消費者の状況によっては衛生的に課題点がないわけではないが、日本の水道水それ自体がそんなに危険なら、日本人の大多数が健康被害を訴えていなければおかしいことになる。
水道水についてのまとめ
市販のものをお金を出して買うと、蛇口をひねれば出てくる水道水に比べて、なにがしかの値打ちのあるものに見えるのかも知れないが、水道水は決して価値のないものではない。
むしろ、日本全土をほぼ完全にそれだけの高い水準の水道水を供給できるというのは世界に誇ってもいいことである。
私たちは、蛇口の水をもっと大切に考えてもいいのではないだろうか。
水道水のさらに詳しい調査は、『健康情報・本当の話』(楽工社)で触れている。
以上、私たちが使う水道水は「健康ブーム」の昨今、危険なもののように扱われている。そんな水など飲んでいられないというが本当か。でした。
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