牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなるか。育児の素朴な疑問だが問われると意外と回答するのはむずかしいのではないか。

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牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなるか。育児の素朴な疑問だが問われると意外と回答するのはむずかしいのではないか。

牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなる?育児の素朴な疑問

牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなるか。育児の素朴な疑問だが問われると意外と回答するのはむずかしいのではないか。同じ乳だからYesという気もするか。そう単純なものではないところが難しい。スケプティクス(懐疑者)の立場で考えてみよう。

牛乳をたくさん飲むことで母乳の出がよくなるという主張は、科学的には証明されていない。

いきなり結論だが、そういうことだ。

ただ、この誤解はなんとなくわかる気がする。

中国の薬膳には、「同物同治(どうぶつどうち)」という言葉がある。

これは体の中の不調な部分を治すには、調子の悪い場所と同じものを食べるのがいい、という考え方。

つまり、肝臓の不調には牛、豚、鶏などの肝臓(レバー)を、胃のときは胃(ガツ)を、心臓は心臓(ハツ)を、腎臓疾患は腎臓(マメ)を食べると回復に役立つという理屈だ。

つまり、同じ部位だから、栄養になりやすいという考え方だろう。

それで、母乳も牛乳で、というイメージが有るのではないだろうか。

で、正解の解説だが、母乳の分泌は、赤ちゃんが授乳することで刺激を受け、ホルモンの働きによって調整される。

特に、授乳の頻度や時間、赤ちゃんが十分な量を飲んでいるかどうかなどが重要な要因となる。

一方で、牛乳を飲むことで、母乳の質に悪影響を与える可能性があることすら指摘されている。

牛乳には、乳糖やタンパク質が含まれており、母乳の質を悪くし、乳腺炎を引き起こす原因になるとされている。

そもそも、牛乳が合わない体質の人もいるのだ。

母乳の分泌を促進するためには、赤ちゃんを頻繁に授乳することが大切だ。

また、バランスのとれた食事を摂取し、十分な水分を取ることも重要。

必要であれば、栄養士や助産師などの専門家に相談することをおすすめする。

といったことを踏まえて、以下をお読みいただけると幸甚である。

牛乳が逆効果になる可能性すらある

育児についての常識は、時が経つと変わることがある。

それが原因で、嫁と姑の対立につながるという笑えない展開もあるそうだからゆるがせにできない。

姑が、こうした方がいいと言ったことが、実は今の医学や育児では否定されている、ということがあるわけだ。

その変化の原因は、医学や保健学の進歩とともに、食生活など文化や社会の価値観が変化する場合もある。

最近は、出産後の母親に対する食事指導もきめ細かくなってきた。

産婦人科には粉ミルクの業者が病院公認で出入りし、母親用のペプチドミルクを勧める。

ただ、それを飲んだからといって必ずしも全ての母親に母乳が出るわけではない。

聞いたところによると、何とか母乳を出したい一心からか、若いお母さん方の間では「牛乳をたくさん飲めば母乳も出るようになる」などという説もまことしやかに伝わっているようだ。

ペプチドミルクで母乳を出せるのなら、牛乳だっていいではないか、という理屈なのだろう。

しかし、残念ながら牛乳は直接母乳にはつながらず、それどころか逆効果になる可能性すらある。

乳房は、血管に取り囲まれた乳腺房というたくさんの袋によって乳腺が構成されている。

赤ちゃんが生まれると、母乳を作るプロラクチン、母乳を押し出す働きをするオキシトシンという2種類のホルモンが、お母さんの脳下垂体から分泌。

乳腺房を取り囲む血管を流れる血液がそのホルモンによって母乳になる。

母乳にはたんぱく質や白血球などが使われるが、赤血球は使われないため、母乳は血液と違い赤くならない。

ホルモンは赤ちゃんが乳首を吸うことによって刺激され、赤ちゃんが何度も吸うことによってだんだん母乳が出てくるようになる。

つまり、母乳に必要なのはお母さんの血液とホルモン、そして赤ちゃん自身の乳首を吸う機会だ。

食べた物は直接母乳になるわけではない

ペプチドミルクも含めて、お母さんが食べた物は直接母乳になるわけではない。

食品などの摂取で栄養を吸収する中から血液状態がよくなり、それが母乳の量と質に貢献するものだ。

もちろん、牛乳もその意味では直接母乳にはならなくても母乳の栄養源になる。

ただ、現在の医学では、高脂肪の食品は母乳の質を悪くし、乳腺炎を引き起こす原因になるとされている。

牛乳に限らず、洋食に多い肉や天ぷら・揚げ物など油を多く使ったものは避け、タンパク質は白身魚・貝類などから積極的に摂ることが勧められている。

ところが、今のお母さんのお母さん世代には、高カロリーがよしとされていた時代に生きてきた人もいる。

たとえば昭和40年代は、現代に比べて国民の栄養状態は劣っていた。

その当時を経験しているお母さんのお母さんは、母乳のために、あれを食べろ、これが体にいい、と善意で勧めてくるかもしれない。

医学の常識は、新しい真実の発見や社会情勢・食事情の変化で、今まで推奨されてきたことが一転して禁忌になってしまうこともめずらしくない。

かつて育児を経験した年長者の知恵には敬意を払いながらも、年長者だからといって無原則にその人任せにしたり、遠慮したりせず、今現在の常識を確認して是々非々で対処することも母となった者の責務といえるだろう。

以上、牛乳をたくさん飲むと母乳の出がよくなるか。育児の素朴な疑問だが問われると意外と回答するのはむずかしいのではないか。でした。

健康情報・本当の話 - 草野 直樹
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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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