free web hit counter

「お茶を○杯×年間飲んだ」という調査だけで、血中濃度やその効果を調べないお茶の人体への有効性を調べる現代の疫学調査

この記事は約5分で読めます。

「お茶を○杯×年間飲んだ」という調査だけで、血中濃度やその効果を調べないお茶の人体への有効性を調べる調査への疑問

「お茶を○杯×年間飲んだ」という調査だけで、血中濃度やその効果を調べないお茶の人体への有効性を調べる調査は果たして説得力があるのだろうか、という疑問がある。だって、「お茶」といったって銘柄や濃度や量がわからないではないか。

疫学調査は、現代においてもまだまだ発展途上にあるというのが今回の話である。

発表される疫学調査には、突っ込みどころがあるのだから仕方ない。

変と思ったことを変だと述べるのは言論の自由である。

何をエラソーにと思われるかもしれないが、以下にそれを述べる。

もとより、スケプティクスな立場を貫くなら、それを躊躇してはならないのだ。

サプリメントの成分についての疫学調査結果

というわけで本題に入ると、「健康食品」の安全性・有効性情報を検証する「健康食品情報プロジェクト」(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 情報センター)のデータベースが更新された。

それによると、ビタミンB・C・D・E、マグネシウム、カルシウム、アセチル-L-カルニチン、コエンザイムQ10、茶など、サプリメントの成分についての疫学調査結果(有効性や危険性等)が反映されている。

Web掲示板でも健康食品についての議論はよく行われている。

しかし、その中身は、主に健康食品の業者による、科学的根拠のないバラ色の宣伝文句をばらまく「肯定派」と、一方ではとにかく頭から否定していれば科学的でかつ正義なのだと勘違いしているある種のカルトな「否定派」による「論争」に毎度終始し、書き込み数のわりには学ぶべきものはほとんどない。

それは、いずれにしてもスケプティクスな立場とはいえない。

こうしたものの「効果」の真偽は、科学的根拠があるかどうかが全てであり、その真偽がどうあれそれを利用するかどうかは各自の価値観に委ねられるべきである。

ところが「肯定派」は前者が欠けており、「否定派」は後者を蹂躙して恥じない乱暴な書き込みが目立つ。

どちらにも重大な欠点があるから興醒めなのだ。

そんな中で、粛々と科学的根拠を整理して公開している同センターのデータベースは、客観的な情報を元に、他人の強引な「啓蒙」なしに自分で判断できる有用な情報庫であると思う。

だが、ときとして、その情報の中身に疑問を抱くことがないわけではない。

血中濃度が一切測定されていない疫学調査スケプティクス!

たとえば、今回のようなビタミンの有効性を調べる試験である。

更新されたデータベースによると、「男性14,641名(64.3±9.2歳、試験群10,988名)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ビタミンEを1日おきに400IU、ビタミンCを毎日500mg、平均8年間、単独もしくは併用摂取したところ、心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管疾患による死亡)のリスクや総死亡率に効果は認められず、ビタミンE摂取群では出血性脳卒中のリスク増加がみられたという報告がある」となっている。

「二重盲検無作為化プラセボ比較試験」は、科学的根拠として認められる試験方法である。

しかし、この試験では「ビタミンEを1日おきに400IU、ビタミンCを毎日500mg、平均8年間、単独もしくは併用摂取した」と経口レベルでの定量性しか明らかではない。

つまり、その摂取したビタミンが、「男性14,641名」の体内にどれくらい吸収され、血中濃度がどの程度になったかということは一切測定されていない。

これでは科学的とはいえないだろう。

このての疫学調査はよくある。

緑茶の疫学調査に結論が出ない理由

たとえば、「お茶を○杯×年間飲んだ」などという調査によってお茶の疾病に対する有効性を調べるものがそうだ。

一口に「お茶」といったって、濃度や成分が違えば体内の吸収具合も変わってくる。血中のカテキンやビタミンCなどの濃度を調べず、「○杯」だけで結論を出すのはナンセンスだ。

食べ物研究というのは、同じ物を同じだけ食べても、消化・吸収力や交絡因子(その試験に影響を与える要素)などによって結果が変わってくる。

その食材の成分について体内での影響を調べるのなら、「どれだけ食べたか(飲んだか)」を見るだけでは不十分なのである。

緑茶自体は、日本や中国などで古くから飲まれてきた飲み物で、健康効果が期待できるとされている。

以下が、具体的に言われている作用だ。

抗酸化作用
緑茶にはカテキンというポリフェノールが含まれており、抗酸化作用があることが知られている。
カテキンは、体内に取り込まれることで、活性酸素を除去する働きがあり、細胞や組織をダメージから守ることができる。

血糖値の調整
緑茶には、血糖値の上昇を抑える作用があることが報告されている。
カテキンには、インスリンの分泌を促進する働きがあり、血糖値の急激な上昇を防止することができる。

脂肪の分解・燃焼効果
緑茶には、脂肪の分解・燃焼を促進するカテキンが含まれている。
また、緑茶に含まれるカフェインも、脂肪の分解を促進する効果があるため、ダイエット効果が期待できる。

血圧の調整
緑茶には、血圧を下げる作用があることが報告されている。
緑茶に含まれるカテキンが、血管を拡張する作用を持っているため、血圧を下げることができる。

免疫力の向上
緑茶には、免疫力を向上させる作用があることが報告されている。
カテキンには、ウイルスや細菌に対して抵抗力を強化する作用があり、風邪やインフルエンザなどの感染症を予防することができる。

以上のように、緑茶には様々な健康効果が期待できる。

ただし、摂取量には注意が必要で、摂りすぎるとカフェインの過剰摂取による副作用が現れることがある。

適量を守り、健康的な生活に取り入れることが大切といわれる。

では、どのくらいが適量か。

それは、たんに何杯飲んだかでわかることなのか。

濃度や銘柄の問題もあるだろう。

なぜ、素人の私でも気付くようなお粗末な疫学研究が行われているのか。

おそらくは、ビタミンやミネラルなどといった「栄養成分の脇役」に対する健康増進の評価が低いということがひとつにはあると思う。

ありていにいえば、そんなものは「毒にも薬にもならない」という意識があるのではないか。

しかし、21世紀の科学は、環境問題やこうした食と健康の問題など複雑系のテーマにみちている。

自然科学が、古典的な要素還元主義を卒業して、より裾野を広げた視点から発展していただくことを私は願ってやまない。

以上、「お茶を○杯×年間飲んだ」という調査だけで、血中濃度やその効果を調べないお茶の人体への有効性を調べる現代の調査は意味があるのか、でした。
健康情報・本当の話
健康情報・本当の話

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

草野直樹(かやのなおき)をフォローする
スケプティクス
トレンド雑談

コメント