糖尿病と各種のがんは本来別の病気である。発病の機序も原因も治療法も違う。しかし、中川恵一(Dr.中川)氏は関係を解説をする。そう、関係があるという話だ。昔は、「かぜは万病の元」といったが、今は「糖尿病と歯周病は万病の元」といわれているぐらいだ。
『日刊ゲンダイ』(2016年1月16日付)の中川恵一(Dr.中川)氏が連載する「Dr.中川のみんなで越えるがんの壁」という読み物で、糖尿病とがんの関係がまとめられているのだ。
肝臓がんは約2倍、すい臓がんは約1.9倍、大腸がんは約1.4倍
まず一言お断りしていおくと、ここでは、「がん」と書いているが、中川恵一氏が指摘するものは臓器がんばかりなので、「癌」や「ガン」でもいいのかもしれない。
ただ、本ブログでは他の記事について「がん」で統一しているので、この記事も「がん」と表記する。
中川恵一氏については、これまでも何度かお説を紹介させていただいている。



さて、糖尿病とがんの関係については、中川恵一氏にかぎらず、いろいろな医師が指摘している。
要するに、糖尿病は、ある種のがんにかかりやすいという話である。
具体的には、、肝臓がんは約2倍、すい臓がんは約1.9倍、大腸がんは約1.4倍ということである。
そして、九州大学のヘルスC&Cセンター 九州大学久山町研究室における、いわゆる「久山町研究」では、糖尿病発症からの期間が長いほど、病状が悪いほど、胃がん発症リスクが高まること報告されている。
ただ、中川恵一氏は、『日刊ゲンダイ』(2016年1月16日付)の有名人の例として、柔道五輪金メダリストの斉藤仁(肝内胆管がん)、立川談志(喉頭がん)、逸見政孝(胃がん)などを例に出しているが、いずれも「発症リスクが高まる」がんではない。
斉藤仁氏の場合は、肝臓がんの中には、胆管がんも含まれていると考えるべきか。
立川談志は、喉頭がん以外に食道がんも患っている。
胃がんに近いので、「消化器系のがん」と少し広くくくればつじつまがあう。
子宮内膜がん、乳がん、膀胱がんも
日本糖尿病学会では、「糖尿病と癌に関する委員会報告」において、
「糖尿病(主に2型糖尿病)は肝臓癌,膵臓癌,子宮内膜癌,大腸癌,乳癌,膀胱癌などのリスク増加と関連がある一方で,前立腺癌リスク減少に関連していること」
「健康的な食事,運動,体重コントロールは2型糖尿病およびいくつかの癌の罹患リスクを減少し予後を改善するため推奨すべきであること」
「医療者は糖尿病患者に対し性別・年齢に応じて適切に癌のスクリーニングを受診するように推奨すべきであること」
「いくつかの糖尿病治療薬と癌罹患リスクとの関連が報告されているが,現時点では糖尿病治療薬を選択する際に癌のリスクを主要な検討事項とするべきではないこと」
などを報告している。
つまり、中川恵一氏が挙げているがんに加えて、子宮内膜がん、乳がん、膀胱がんもあるというのだ。
ということは、主要ながんで糖尿病と無関係なのは肺がんぐらいなのである。
その反面、前立腺がんリスクが減少というのは興味深いが、もちろんだからといって、前立腺がんになりたくないから糖尿病になろう、などと考える人はいないだろう。
しかも、中川恵一氏は、「国立がん研究センターなどは、糖尿病と診断されていなくても、血糖値が高めだと、がんリスクが高まると報告」されたとも書いている。
糖尿病には、いわゆるグレーゾーンがあり、たとえばHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)が6点代前半などはそれにあたる。
その数値だと、糖尿病としては積極的に治療を行うまでではないが、ただし、がんのリスクは高くなっている、ということである。
糖尿病とがんの関係は2型から
中川恵一氏は、糖尿病とがんの関係について、「実は血管病より怖い」と断言している。
人工透析に結びつく腎症などの合併症を患いながら心筋梗塞や脳卒中で亡くなるリスクよりも恐るべきだというのだ。
連載から引用しよう。
「糖尿病の食事療法で痩せ過ぎた」と笑い飛ばした柔道五輪金メダリストの斉藤仁さん(享年54)は昨年、肝内胆管がんで亡くなりましたが、、激ヤセはがんによるものと判明。5年前に喉頭がんでこの世を去った落語家・立川談志さん(同75)も糖尿病による不調で休養を繰り返し、1993年に胃がん告白で世間に衝撃を与えたフリーアナの逸見政孝さん(同48)も、70年代から糖尿病を患っていました。
3人のケースは、糖尿病とがんがたまたま重なったのではなく、糖尿病だからがんを呼び寄せた可能性があります。糖尿病の人の死因は、がんが34%でトップ。そうでない人に比べていくつかのがんにかかりやすいことが分かっているのです。
「糖尿病と痛に関する委員会」の調査では、肝臓がんは約2倍、すい臓がんは約1.9倍、大腸がんは約1.4倍。別の久山町研究では、糖尿病発症からの期間が長いほど、病状が悪いほど、胃がん発症リスクが高まることが示されています。
そしてこのほど、国立がん研究センターなどは、糖尿病と診断されていなくても、血糖値が高めだと、がんリスクが高まると報告しました。
なぜ糖尿病の人にがんが多いのか、群しいメカニズムは不明ですが「高血糖状態がよくないことは間違いありません。これらのことから、がんを防ぐための知恵が浮かび上がってきます。
糖尿病の人は、糖尿病の治療と並行して毎年、がん検診を受けることがひとつです。2人に1人ががんになる今、糖尿病の人は予備群を含めると2000万人を超えていますが、治産を受けているのは6割ほど。4割は、あえてがんになる道を突き進んでいるともいえるかもしれません。
もうひとっは、がんセンターの研究から分かるように、なるべく高血糖状態をすぐ改善する生活習慣を身につけること。たとえば、食事のときは野菜から食べて米や麺類などの糖質を最後にする。そうすると、野菜に含まれる食物繊維の働きで、糖質の吸収が穏やかになり、血糖値が上がりにくい。食後に30分くらい散歩するのも、食後高血糖の改善に役立ちます。
逸見さんは学生時代、無類のコーラ好きで、下宿の窓にコーラの空き瓶を並べることに愛着を感じていたそうですか清涼飲料水や砂糖入りコーヒーをたくさん飲むのは、よくありません。
がんも合併症も防ぐために、糖尿病の人は高血糖状態をなるべく早く改善してください。ここまで読まれた人は、そのためのノウハウが頭に入ったはずです。きょうから実行しましょう。
中川恵・東大医学部付属病院放射線科准教授
『日刊ゲンダイ』2016年1月16日付
日本人の2人に1人ががんになり、6人に1人が糖尿病かその予備軍と推計されているる。
ただし、がんと関連があるのはすべて2型の話である。
糖尿病とがんのまとめ
糖尿病とがんの関係では、肺がん以外の主要ながんが関係があるとされている。
中川恵一氏は、糖尿病の人は糖尿病の治療と並行して毎年、がん検診を受けることを勧めている。
以上、糖尿病と各種のがんは本来別の病気だが中川恵一(Dr.中川)氏が糖尿病とがんの関係について新聞の連載で解説、はここまで。
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