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医療の話である。よく若い人のがんは速く進行し、高齢者は進行が遅いと言われる。一見もっともな感じがしないでもないか?

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若い人のがんは速く進行し高齢者は進行が遅いという説の真相

医療の話である。よく若い人のがんは速く進行し、高齢者は進行が遅いと言われる。一見もっともな感じがしないでもない。なぜなら、若いほうが新陳代謝が激しいので、がん細胞がどんどん増えるのではないかと想像するからだ。スケプティクスに解明しよう。

若い人のがんが速く進行し、高齢者のがんが進行が遅いという説は、一般的ながんの特徴とは一致しないといっていいだろう。

いきなり結論を書けば、そういうことだ。

実際には、がんの進行速度は個人やがんの種類によって異なる。

年齢は、がんの進行速度に直接的な影響を与える要素ではない。

がんの進行速度は、がん細胞の増殖速度やがんの種類、がんが発見される段階、治療の有無や効果など、複数の要素によって決まる。

たとえば、一部のがんは比較的遅い進行を示す場合もあるが、他のがんは非常に速く進行する場合もある。

個々の状況によって異なるため、年齢のみでがんの進行速度を判断することはできない。

また、高齢者の場合、がんが進行する速度が遅く見えるのは、がんが無症状であるために発見が遅れる場合があるためだ。

高齢者は、一般的に健康診断やがん検診を受ける機会が少なくなることがある。

そのため、がんが進行するまで気付かれず、症状が現れるまで時間がかかることがある。

年齢によるがんの進行速度の差異は、個々のがんの特性や個人の健康状態によるものであり、年齢そのものが直接的な要因ではないことを理解することが重要だ。

がんの早期発見と治療の重要性は、年齢に関係なく、全ての年齢層において同じだ。

ということを踏まえた上で、以下をお読みいただけると幸甚である。

客観的なデータは出せない

急性白血病のように、進行の早い病気に若い人がなったり、前立腺がんのような進行の遅い病気に高齢者がなったりするのでそのようなイメージがあるが、多くの医師はあまりその言い方をしない。それを明確に示す根拠はないからだ。

がんによってはそのような傾向がいわれることもあるが、では三十代なら七十代の何倍早いか、というような客観的なデータは出せない。

問題は、その思いこみが治療に対する誤解につながることだ。

高齢者は進行が遅い、だから余命などの兼ね合いで治療をしなくてもいいのではないか、とはじめから決めつけてしまうことはありがちなことだ。

余命は結果として亡くなった時にはっきりする

高齢者でも速く進行することもある。

高齢者だからといって姑息治療ではなく、まずは根治を目指す。

治療は基本的に同じだ。

だから早期発見・早期治療の原則にかわりはない。

余命は結果として亡くなった時にはっきりするものだ。

生きているうちは、90歳だろうが100歳だろうが、治ることを目指すのは当然だろう。

ただ、高齢者の場合体力的な問題があるので、たとえば70歳を過ぎたら抗がん剤の投与は50%や70%にすることはある。

それはあくまでも体力的な問題であり、「高齢者は進行が遅い」という考えに基づくからではない。

もちろん、本人が、年をとってから辛い治療はしたくない、と考えることは否定しない。

治療しない奴は科学(医学)と向き合わないオカルトだ、疑似科学だ、という立場は間違っている。

見かけ上そう見えることもある

ただ、その一方で、同一のがんのスピードではなく、年齢によってがんの悪性度が変わってくるので、スピードが違うようにみえる場合があるとの指摘もある。

若い人のがんが進行が速いという説について、それは現象として正しいとも見えるケースが有るということだ。

一般的に、精巣腫瘍などを除く多くのがんでは、高齢者の方が発症しやすいことがわかっている。

では、若い人にはかかりにくいかというと、そんなことはない。

精巣腫瘍自体は、若い人に多いとされている。

精巣腫瘍は、10万人に1人程度と比較的まれながんだが、20~30歳代の男性がかかる固形がん(白血病などの血液腫瘍以外のがん)としては最も多く、若年者に多いという特徴がある。

ただし、罹患者自体は、高齢者のほうが多い。

これは、年齢を重ねるほど遺伝子のキズも増え、がん細胞がそれを排除する仕組みをすり抜ける、といったことが増えることによる。

その点でいえば、若い方が発症するがんは、よりがんとしてたちが悪い場合がある。

遺伝子の修復機構や免疫系等がしっかり働いているにも関わらず、増殖してくるから、それだけ強いがんである場合がある。

一方で、高齢者においては、たとえば前立腺癌は超高齢者にもなれば1~3割程度の罹患率に及ぶから、がんと診断されながらも、寿命の方が早くくるという例もしばしばみられる。

前立腺がんは50歳代から増え始め、60歳以上で急激に増加し、80歳以上ではその半数以上が潜在性の前立腺がんを保持しているとされる。

つまり、高齢者の方が若い人よりも前立腺がんの発症率が高い。

いずれにしても、そうしたことで、見かけ上、「若い人はがんの進行が速い」とも言える。

ただ、それをもって、「高齢者だからがんの進行が遅い」とはいえない。

ということだが、いかがだろうか。

以上、医療の話である。よく若い人のがんは速く進行し、高齢者は進行が遅いと言われる。一見もっともな感じがしないでもないか?でした。

健康情報・本当の話
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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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