医療の話である。よく若い人のがんは速く進行し、高齢者は進行が遅いと言われる。一見もっともな感じがしないでもない。なぜなら、若いほうが新陳代謝が激しいので、がん細胞がどんどん増えるのではないかと想像するからだ。スケプティクスに解明しよう。
客観的なデータは出せない
急性白血病のように、進行の早い病気に若い人がなったり、前立腺がんのような進行の遅い病気に高齢者がなったりするのでそのようなイメージがあるが、多くの医師はあまりその言い方をしない。それを明確に示す根拠はないからだ。
がんによってはそのような傾向がいわれることもあるが、では三十代なら七十代の何倍早いか、というような客観的なデータは出せない。
問題は、その思いこみが治療に対する誤解につながることだ。
高齢者は進行が遅い、だから余命などの兼ね合いで治療をしなくてもいいのではないか、とはじめから決めつけてしまうことはありがちなことだ。
余命は結果として亡くなった時にはっきりする
高齢者でも速く進行することもある。
高齢者だからといって姑息治療ではなく、まずは根治を目指す。
治療は基本的に同じだ。
だから早期発見・早期治療の原則にかわりはない。
余命は結果として亡くなった時にはっきりするものだ。
生きているうちは、90歳だろうが100歳だろうが、治ることを目指すのは当然だろう。
ただ、高齢者の場合体力的な問題があるので、たとえば70歳を過ぎたら抗がん剤の投与は50%や70%にすることはある。
それはあくまでも体力的な問題であり、「高齢者は進行が遅い」という考えに基づくからではない。
もちろん、本人が、年をとってから辛い治療はしたくない、と考えることは否定しない。
治療しない奴は科学(医学)と向き合わないオカルトだ、疑似科学だ、という立場は間違っている。
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