蓮舫議員が菅義偉首相の「自覚や責任感」を責め立てた発言で、産経新聞の論評から「毒親」が絶えない理由がわかりました。といっても、自分の説明責任は一切無視して、相手に観念的な責め口上をぶちあげる蓮舫議員に賛成しているわけではありません。
「年長者に向かって罵声」だから問題ではないだろう
1月27日、参院予算委員会における立憲民主党の蓮舫議員が、菅義偉首相を攻撃。
「そんな答弁だから言葉が伝わらないんですよ、そんなメッセージだから国民に危機感が伝わらないんですよ。あなたには総理としての自覚や責任感、それを言葉で伝えようとする、そういう思いはあるんですか?」
これでネットは炎上しました。
「2位じゃだめなんですか」に始まり、二重国籍問題、総理のスピーチ事前公表問題など、自分に対する説明や弁明を求める声に応えなかった人が、「自覚や責任感」なるきわめて主観的な命題で、他人を悪し様に罵ることだけは熱心なことに、批判が集まるのはわかります。
しかし、以下のOGPのタイトルにありますが、産経新聞の「年長者に向かって罵声を浴びせ続ける」からよろしくない、という論評に私は賛成しません。
【日本の選択】年長者に向かって罵声を浴びせ続ける蓮舫氏 これが野党の支持率上がらない原因 https://t.co/b1wBg9T41R
— 畠中由宇・相互フォロー100% (@hata_follow) February 5, 2021
ヒロミというタレントも「リスペクトの気持ち」がないと蓮舫議員を批判していましたが、なんか勘違いしていませんか。
我が国の議会は、年功序列や絶対王政の国じゃないんですよ。
そんなことを言ったら、総理大臣が年長である限り、質問にたった議員は何も言えなくなります。
首相が、若いか年寄りかなんて関係ありません。
首相は公人中の公人ですから、あらゆる批判が出て当然なのです。
問題は、蓮舫議員が、首相の「危機感が伝わらない」ことによる具体的な問題点を突きつけたり、前向きな答弁を引き出したりという中身がないことにあります。
繰り返しますが、蓮舫議員の質問の中身がないことが問題なのです。
いかにやり込めたか、という自己アピールに腐心していることがミエミエだから、違和感を抱かざるを得ないのです。
それなのに「年齢」を論点に置くことは、結局首相の「危機感が伝わらない」という論点をすり替える、産経新聞ならではの安っぽいレトリックに過ぎません。
そして、今回に限らず、年長者は絶対、という、日本の社会の旧弊な合理的でない人間関係イデオロギーを押し付ける考え方です。
結局その考え方は、私がいつも批判している、親は絶対、先祖は敬え、という、子や子孫による合理的な批評を「年長」だから押さえつけて自分の言うことを聞かせようとする「毒親の論理」を見るようです。
親や先祖を批判するフェアな人間関係はないのか
我が国には、未だに家制度の因習を事実上残す目的で、子は親に無条件で従う奴隷であることを示す法律(民法第818条)があります。
たとえば、親であることをタテに、子に特定の選択や価値観を強要する毒親は、今の日本では虐待など違法行為が公然としたものでない限り「合法」になってしまうのです。
そこから、先祖は敬え、先祖には感謝しろなど、理屈抜きの「目上主義」が道徳になっています。
でも、これはおかしいでしょう。
親も含めて先祖もただの人間です。
無謬でも万能でもありません。
間違いもあります。
毒親なら、たぶん祖父母も毒親です。
その毒の連鎖を断ち切るために、子が親や先祖を批判することは間違っているのでしょうか。
唯々諾々と従い、孫子の代まで、その「毒」を「相続」しろとでもいうのでしょうか。
「先祖がいてお前がいる。親が産んでくれたんだからこそお前がいるのだろう」
と言いますか?
それは、全くそのとおりです。
しかし、それと今回の論点は全く別の話です。
いいですか、親は自分で生みたいから生んだのであり、子が「あなたの子どもになりたい」と言って生んでもらったわけではありません。
親は、子に対して「生まれてくれてありがとう」であり、「生んでやったんだから感謝しろ」というのは筋違いです。
親は、自分の意志で生んだ子どもを、責任持って育てるのは当たり前なのです。
もちろん、子が親に自発的に感謝することは全く妨げません。
ただし、それは子の親に対する評価ですから、感謝を強制することではなく、子にとっては「内心の自由」なのです。
そうでないと、子に手をかける親や、毒親に対する説明がつかないでしょう。
なに?先祖に感謝しないとバチが当たる?(笑)
バチなるものが客観的に存在するかどうかは措くとしても、子孫が客観的で率直な論評をして、バチを当てるような先祖は、ろくなもんじゃないでしょう。
思うに、それは、親が子に口答えされないための、非合理的な防御言葉だと思います。
息子さんの「造反」をどう考えるか
ということで、話を戻しますが、国会の質疑で、やれリスペクトだの、年長者が偉いだのという「縛り」は一切無用です。
そんなものは百害あって一利なしです。
もっとも、それを忠実に履行した蓮舫議員が、息子に“造反”の憂き目に合うニュースが日を置かずして発生したのは、タイミングの良さに思わずくすっとしてしまいました。
これはすごい、蓮舫の息子さんが蓮舫を痛烈批判している。めちゃくちゃマトモな意見だ。コロナ禍の時に政治家は「揚げ足取り大会」をしてる場合では全くない。 pic.twitter.com/zSQDa7h8y8
— 黒瀬 深 (@Shin_Kurose) February 3, 2021
いえ、バカにしているのではありません。
民法818条があり、かつイメージでは子を押さえつけていそうな蓮舫議員の息子さんが、いかなる意図や自覚や背景があるかはわかりませんが、蓮舫議員からの独り立ちを述べていることは、大変素晴らしいと思いました。
きっと、蓮舫議員は、子の独立した人格をお認めになる方なのでしょう。
それならば一貫しています。
あとは、もう少しご自身への批判や振る舞いに対する、説明や弁明は誠実に行っていただきたいですね。
新聞の見出しや流行語になることを意識したようなセンセーショナルな責め立て言葉は無用です。
内容で一本勝ちすべきであり、そこは遠慮する必要はありません。
そして野党支持の有権者も、野党を支持するからと言って、こういう場合の論評は手控えないこと。
誰であろうが、間違いは間違い、良くないことは良くない、という是々非々でものを見ていかないと、レベルの低いポジショントークばかりやっていたら、この国はいつまでたってもよくなりません。
政治の停滞の責任は、有権者にもあるのです。
以上、蓮舫議員が菅義偉首相の「自覚や責任感」を責め立てた発言で、産経新聞の論評から「毒親」が絶えない理由がわかりました、でした。
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