血液型性格判断。「人間学」と称して、恣意的な統計と主観を根拠に○型の人の性格は××であると決めつける疑似科学のことだ。血液型は骨髄移植でも変わるし、血液型のもととなる赤血球が酵素で変えられる。ではそうなると性格もかわってしまうのか。
たとえば、プロ野球の新人王になった人の血液型を調べて、少ない血液型は「大器晩成」ということにする。
こんな調子で、たまたまそのときそういう統計だったものをもとに、勝手に妄想を繰り広げるのが血液型性格判断である。
能見正比古、能見俊賢さん父子が大ヒットさせた疑似科学は、ゲノムの解析を行う21世紀になってもまだ信じている人がいるから始末に負えない。
血液型は血液中に4通りある赤血球の抗原タイプをあらわしたものである。
血液型は骨髄移植でも変わるし、血液型のもととなる赤血球が酵素で変えられるともいう。
ではそうなると性格もかわってしまうのか。
そうでなかったら血液型性格判断は成り立たないが?
血液型占いの例
血液型と性格の関係については、科学的な根拠がないため、確実な答えなどない。
しかしながら、日本では「血液型占い」として知られる、血液型と性格の関係を主張する信念が一般的に広まっています。
以下は、一般的に言われている血液型と性格の関係の「ひとつの例」である。
- A型
- B型
- O型
- AB型
細かいところに気がつき、真面目で几帳面な性格。人の気持ちを理解し、思いやりがあるとされることが多い。また、神経質でストレスに弱い傾向があるとされることもあります。
自分のペースを優先し、自分の好きなことを追求する傾向がある。社交的である反面、一方で自己中心的な部分もあるとされます。
積極的で行動力があり、競争意識が強い。また、大雑把で物事をあまり細かく考えず、行動に移す傾向があるとされます。
合理的で冷静な思考を持ち、創造的な側面を持つ。また、自分自身の性格に疑問を持ち、探究心が強いとされます。
「ひとつの」ということは、別の人は別のことを言っているということで、そのいい加減さがまた、占いならではである。
いずれにしても、これらの特徴は一般的な傾向であり、科学的な意味で有意に当てはまるかどうななどは検証できない。
また、血液型と性格の関係を科学的に証明するためには、標本数の多い正確な調査が必要となるため、現在まで科学的に証明されていない。
血液型は人間の内面を分類するものではない
血液型性格判断は、個人の性格や行動特性を、その人の血液型に基づいて推測するという考え方である。
しかし、この理論は、科学的根拠に基づかない迷信的なものであるとされている。
実際に、血液型と性格の関連性を示す科学的な研究結果はない。
血液型と性格の間に因果関係があるという証拠は存在せず、多くの専門家は血液型性格判断が科学的ではないと考えている。
したがって、血液型性格判断は、単なる迷信的な信念であると捉えるべきである。
人間の行動は多様で複雑であり、個人の性格や行動特性を単一の要因に帰することはできない。
代わりに、人間の行動は多くの要因によって決定されるため、個々の人を理解するためには、より包括的な方法を用いる必要がある。
血液型について、最近ではアメリカ・ハーバード大などの国際研究チームが、AとB、AB型の赤血球を、O型の赤血球に変えることのできる酵素を開発したというニュースもある。
医学的には輸血や遺伝などで重要な意味のあるものだが、人間の内面を分類するものではない。
にもかかわらず、これが信憑性を以て信じられているのは「占い」や「言い伝え」ではなく、「科学」が関与しているものと思われているからだ。
ここにスケプティクスにメスを入れる必要がある。
衆議院議員、スポーツ選手、タレントなど有名人の血液型分布を利用
日本で血液型と性格の関係に最初に言及したのは原来復という医師であり、「流行」させたのは東京女子師範学校(現お茶の水女子大)の教授だった古川竹二である。
現在の「血液型信仰」を作ったのは、1970代後半から80年代に大量に啓蒙書を上梓した能見正比古・俊賢の親子や鈴木芳正だが、彼らもまた、これは占いではなく「人間学」だと言い張った。
たとえば、能見親子は、衆議院議員、スポーツ選手、タレントなど有名人の血液型分布を例に挙げ「政治家には×型が多いから×型は政治家タイプ」「△型は大器晩成だから、プロ野球の新人王は△型が少ない」「×型のキャスターAと△型の女優Bが破局したのは、×型の几帳面さと△型の自由奔放さが災いした」などと「考察」した。
統計を用いたもっともらしさとともに、テレビなどのメディアで、顔やキャラクターが知られている有名人を例に出すことで、何となく当たっているような気にさせる効果を狙った。
ところが、心理学者や統計学の専門家らは、能見らが指摘する職業・性格による血液型分布の偏りは学問的には立証できないと批判(*注)。
要するに、「△型」と職業や性格などの関連は見られないということだ。
現在、科学的な根拠のある「血液型と性格関連説」は存在しない。
2008年度のプロ野球選手の血液型分布
筆者は、そうしたデータとしてはもっとも新しいであろう、2008年度のプロ野球選手の血液型分布について調べてみた。
【2008年度プロ野球選手血液型分布(『週刊ベースボール』2008年2月23日増刊号より)】
A型……投手143名、野手146名(37.9%)
O型……投手115名、野手117名(30.4%)
B型……投手80名、野手92名(22.6%)
AB型……投手27名、野手42名(9.1%)
不明……投手41名、野手27名
「不明」のほとんどは外国人(アメリカ)選手である。
それを見てもわかるように、プロフィールとして血液型を公開し、何よりその人自身が血液型にこだわるのは西欧先進国ではありえないことだ。
結論を述べると、このデータにも統計的な血液型の偏りはない。
つまり、「△型だから野球選手に向いている」などという考察はできない。
日本人の場合、各血液型の出現頻度はおおよそA型が4割、O型が3割、B型が2割、AB型が1割といわれているが、これは民族や人種によって変わる。
ドイツのヒルシュフェルトという医師は、第一次世界大戦終結の年に兵士の血液型を調査。
白人にA型が多く、中近東やアジア・アフリカにいくに従ってB型が多い調査結果の「違い」を知り、それを「白人が優秀である」ためとこじつけた。
根拠がない上に差別の温床にもなっている血液型人間判断。あなたはそれでも、血液型で人を語りたいか?
(*注)草野直樹著『「血液型性格判断」の虚実』『血液型性格判断のウソ・ホント』(いずれもかもがわ出版)は、衆参国会議員、プロ野球やJリーガー、力士といったスポーツ選手、タレントやキャスターといった芸能人などについて、血液型による分布を30年前から調査。いずれも血液型による偏りを見ることはできなかったとしている。
さあて、あなたはこれでも、血液型性格判断を信じますかね。
以上、血液型性格判断。「人間学」と称して、恣意的な統計と主観を根拠に○型の人の性格は××であると決めつける疑似科学のことだ。でした。
「血液型性格判断」の虚実 (講座・超常現象を科学する) – 草野 直樹
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