障害者に金を使うのは無駄金、という風潮がある。しかし、スケプティクス(懐疑的)な立場にたてば、それは間違いだろうと考える。強い者が先に利益を得て、弱者はおこぼれが届くだけでもありがたいと思え、という考え方で社会は発展するのだろうか。
ネットの掲示板では、障碍者たたきをしばしば見かけるが、なんとか水脈議員流に言うなら、障碍者に金をかけても生産性がない、ということなのだろう。
しかし、これは間違いである。
なぜか。
昨今の、介護・福祉産業は、大きく雇用を広げている。
もちろん、その報酬が安いという問題があるが、とりあえずそのことはおいてほしい。
雇用を拡大するための画期的技術革新による投資がないから、ゼロ金利にしても企業は金を借りなかったのだ。
信用創造で金を借りなければ、市中のお金は増えないから経済は回らない。
MMTの仕組みだ。
バカな大衆が言う。
「障碍者にカネを回さなければ、別のことに金を使える」
そうでなかったことは、この10年間、アベノミクスがデフレを解消できなかったことで証明されているだろう。
そして、経済というのは、清算だけでなく消費も込みである。
障碍者は国民として、生活に消費するものがある。
金は天下の回りものという。
市中にまわっている限り、「溝に捨てる」ということはありえないのだ。
ということを踏まえた上で、以下の記事を読んでほしい。
施設側の責任追及ではなく障碍者叩き
東京都青梅市の知的障害者施設で110番通報があり、知的障害のある男性が両手足をひもで縛られた状態で布団に倒れ、既に死亡していたニュースが話題になった。
同署によると、男性が施設内を徘徊したため、職員2人が両手と両足をひもで縛った上で、空き部屋に布団を敷いて寝かせたという。
この事件で、ネットでは、施設側の責任追及ではなく、障害者叩きのコメントが連なった。
ネット掲示板は、時として無責任なコメントや誹謗中傷が書き込まれることがあるが、とくにひどいのが、障害者と高齢出産に関する話題である。
そして、高齢出産も「障害者を産むから」という口実で叩かれている。
要するにネットにとって、障害者は叩く対象としてもっともポピュラーなものなのである。
今回も、ずいぶんといろいろな誹謗中傷が書き込まれたようだ。
あるまとめ記事をリンクしよう。

その中で、次のようなやりとりがあった。
介護職員は障害者のお陰で飯が食えるってわかってないのかね
いわば障害者のお陰で生きていける
↓
そうとは限らない、介護に回される税金が投資方面に向かえば
新たな雇用が生まれていたかもしれない
このやりとり、上記のコメントのとおりであり、昨今、次々参入している介護会社は、障害者に食わせてもらっているといっていい。
デイサービス事業に、どれだけの事業者が参入しているのか、下記のコメント者は知らないのだろう。
市川海老蔵が、東京駅はバリアフリーが不足していると嘆いたことが話題になっているが、バリアフリーは、高齢者、子ども、足の不自由な人などのために必要なインフラであり、そうした「弱者」こそが新たな雇用を生み、社会の豊かさを底上げしてくれる。
障害者はその象徴的存在である。
障害者が新たな雇用を生み、市場や産業を構築する。
これは、幻想や期待ではなく、れっきとした事実である。
一方、下記コメント者の言い分は、「投資方面に向かえば」という抽象的な仮定に、さらに「かもしれない」という仮定の結論をつなげているだけ。
経済を回す道筋を具体的には何も語っていない。
要するに、論ずるに値せずである。
そもそも「投資に向か」って利益が出たとして、それが直接新たな雇用の創出につながる保証はどこにもない。
それに、その「投資」とやらで損したらどうするのか。
雇用創出というのは、たんに従事者に給料が出るだけでなく、その従事者が生活するために市中にお金を支出し、働いている人が増えれば国や自治体の負担も減り逆に増収につながる。
そして、介護予算によって、何もなければ社会に出てこれなかった高齢者や障がい者が、社会に出てきて働いたりお金を使ったりするようにもなる。
弱者をヘルプしながらみんなが人らしい暮らしをして経済が回る、これに勝る「投資」とやらのロードマップを示せるものか、ぜひご教示いただきたいものである。
景気が良ければA型事業所をなぜつぶすのか
こうした障害者叩きはどうして発生するのか。
個々の人間の人格の卑しさか。
それも否定しない。
だが、それが社会の風潮のようになっているのは、やはり個々の心がけだけではなく、社会そのもの、もっとはっきりいえば、政治が障害者を「無駄」として圧迫しているからだろう。
障害者112人を解雇 広島、就労事業所が破綻で
http://www.sankei.com/west/news/171117/wst1711170034-n1.html
障害者が働きながら技能を身に付ける就労継続支援A型事業所を広島県福山市などで運営する法人「しあわせの庭」が経営破綻のため2カ所の事業所を閉鎖し、雇用契約を結ぶ障害者112人を17日付で解雇すると同市に伝えていたことが分かった。
A型事業所の多くが補助金頼みの経営をしており、補助金が下がり最低賃金が上がれば経営が成り立たなくなるのだ。
厚生労働省は、「A型事業所は障害者が地域で自立した生活を送るために公金が投入されており、事業所のための事業ではない」としているが、そのような発言が、「障がい者には税金垂れ流し」という風潮を作り出しているのではないか。
「アベノミクス効果で好景気が続いてる」といわれるが、よくいうよ、である。
社会的な圧迫は、弱者に歪みが出やすい。
大衆も、弱者を排除するような「逃避」ではなく、きちんと今の政治の問題点と向き合うことである。
以上、障害者に金を使うのは無駄金、という風潮がある。しかし、スケプティクス(懐疑的)な立場にたてば、それは間違いだろう、でした。
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