アスピリンという解熱鎮痛剤がある。そのアスピリンや、消炎・鎮痛・解熱剤のイブプロフェンなどの服用は、ごく少量の場合でも胃がんを予防するという調査結果が発表されて話題になっている。といっても、同時に、胃がんの予防にアスピリンを服用するよう推奨するのは極めて時期尚早だともことわっている。
「ロンドン6日AFP=時事」は、以下の記事を配信した。
アスピリン(解熱鎮痛剤)やイブプロフェン(消炎・鎮痛・解熱剤)の服用はごく少量の場合でも胃がんを予防することが、英国の調査で分かった。同調査は、6日発行の英医学誌ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサーに発表された。
同調査によると、過去12カ月に少なくとも1回アスピリンを服用した人は、一度も服用しなかった人に比べて、胃の中央部や底部にがんが発生する可能性が36%低い。またイブプロフェンなどのNSAID(非ステロイド性抗炎症剤)を同程度服用すると、がん発生の可能性を32%低下させるという。同調査は、鎮痛剤を服用することでがんの予防効果が増すと結論づけている。
全米がん研究所のクリスチャン・アブネット氏は「アスピリンを服用した人の場合、胃の中央部と底部のがんの危険性が低いことを発見した。この危険性は、もっと定期的にアスピリンを服用すると低下する」と語った。同氏はさらに、「興味深いことに、われわれの調査では、噴門(胃の入り口)のがんの危険性の著しい低下はみられなかった。したがって、引き続きデータを見直していくことが重要だ」と指摘した。
英がん研究所のレスリー・ウォーカー氏は「全面的に推奨するのは早すぎる。これらのがんの予防にアスピリンを服用するよう推奨するのは極めて時期尚早だ」と注意を喚起した。〔AFP=時事〕
こういう調査を否定はしないが、アスピリンの何がどう作用するのかを見るためには、少なくとも「アスピリンを服用した」だけではなく、血中にアスピリンのどの成分がどれだけの濃度にあるかを見なければより客観的な真実に迫ることはできないだろう。
また、交絡因子の問題もある。
はっきりいって、たんなる経口調査では、科学的とは言えないと断言してもいい。「お茶を○杯飲んだ」「ビタミン×を服用した」などの調査も同様である。成分の血中濃度を見ずに、どういう効果があるかの合理的推理などできやしないではないか。
しかし、藁にもすがりたい人がこのニュースを知れば、アスピリンを服用する人もいるだろう。こうした調査の発表は、もっと慎重でありたいものだ。
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【目次】
第1章 危ない健康食品
第2章 健康観と治療法の疑似科学
第3章 テレビの健康情報
第4章 危機煽り本の危うさ
第5章 芸能人の健康情報
第6章 “怪しい健康情報”からわかったこと
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