乳酸というのをご存知だろうか。体内が無酸素状態になることでできる老廃物といわれてきた。ということは、要らないもの、もしくは悪いものという扱いである。つまり、あってはならないものという見方が正しいことになる。しかし、実はそうではないのだ、ということを唱える研究者もいる、というスケプティクスな話である。
よく運動して疲れると「乳酸がたまっているから」などというが、それは嘘、というのは「東京スポーツ」(2009年6月24日付)の記事だ。
「血液や筋肉中の乳酸濃度は、運動後30分から1時間もたてば、元の安静時のレベルに戻ります。したがって、運動から数時間たった後の疲労や翌日の筋肉痛などに乳酸はまったく関係がありません」
「たしかに、乳酸は強い酸なので水溶液中にたくさん混ぜれば、その液は強い酸性になります。ところが、ヒトの体では中性にする仕組みが働くため、簡単には酸性になりません」(東京大学大学院総合文化研究科・八田秀雄准教授)
これに似たスケプティクスな話が、「肉を食べると体が酸性になる」。
食べた物でいちいち体が変わっていたら、食事などできやしない。しかし、こうした考え方は、フードファディズムにつながるので、決して忽せにはできない。
同紙ではむしろ、問題なのはリン酸だという。カルシウムとつきやすく、筋肉の収縮を阻害するため、疲労の一因となると考えられるが、ほかにも脳に疲労が関係しているという説を紹介する。
少なくとも、日常的な疲労と乳酸は無関係ということだ。
同紙では「乳酸は、疲労の原因どころか、エネルギーを生み出す強い味方なのだ」と結んでいる。
物事は、いつもうのみにするのではなくスケプティクスな態度が必要である。
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