『釣りバカ日誌8』で室井滋に柄本明がかぶさり「性愛」を感じさせるのは脚本、監督、室井滋の演技力のなせるシーン

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『釣りバカ日誌8』で室井滋に柄本明がかぶさり「性愛」を感じさせるのは脚本、監督、室井滋の演技力のなせるシーン

『釣りバカ日誌8』(1996年、松竹)の浜辺シーンで、室井滋が倒れて仰向けになり、その上に柄本明がかぶさったときの室井滋の顔をズームアップに「性愛」を感じさせるというレビューが話題になっています。脚本、監督、室井滋の演技力のなせるシーンです。

『釣りバカ日誌8』は、脚本が山田洋次、監督が栗山富夫です。

そして室井滋自身の、演技力などが総合された瞬間が、冒頭に述べたシーンです。

山田洋次は、蒼井優との対談(NHK)で、

「女優にとってはベッドシーンなどよりも、愛していると告白する台詞などの方が恥ずかしいんじゃないだろうか」

という意味の話をしていたことがあります。

つまり、「ヌードを見せる」「ベッドシーンを見せる」などで、安易に「本物の性愛感情」が描けると思ってはならないということです。

ズームアップを効果的に使うシーン

山田洋次監督は、『釣りバカ日誌8』では脚本のみですが、ズームアップをあれだけ効果的に使うシーンが出てくるのはめずらしいですね。

そういうシーンを作ったのは、室井滋に対する演技者としての評価と信頼があるのでしょう。

もともと山田洋次監督は、松竹の古い監督の下についていた時期もあるのに、その人たちの演出とは少し違うと思えるところがあります。

東宝の社長シリーズやクレージー映画と、喜劇駅前シリーズには記事を書いていて決定的な違いがあり、それは画面のスクリーンショットをとるときに、出演者のアップを撮るのが喜劇駅前シリーズの、特に豊田四郎のような松竹蒲田出身の監督は非常に困難であるということです。

主役や一部の助演をのぞくと、表情のアップで表現するシーンを多用しないのです。

大映の増村保造監督もそうですが、増村監督の場合には、ひとつの画面に登場人物をたくさん詰め込む演出なのに比べて、豊田四郎監督は、人と人に距離をおいた配置で、さらに背景まで全部映さないと気がすまないような、要するに舞台中継のような撮り方をするのです。

松竹は、小津安二郎の作品などにも見られるように、1台のカメラを置きっぱなしでとるようなとり方が好きなようですね。

もっともそれは、喜劇駅前シリーズが1950~60年代の映画だからであって、そこから少しずつ撮るセオリー自体がかわっているのかもしれません。

室井滋は『ナニワ金融道』で、選挙資金に金を借りる市会議員を演じていて、原作では半分はげた男だったので、室井滋で大丈夫かと思いましたが、落選した瞬間はスッピンを見せて、いかにも疲れきったところに説得力を感じました。

以上、『釣りバカ日誌8』で室井滋に柄本明がかぶさり「性愛」を感じさせるのは脚本、監督、室井滋の演技力のなせるシーン、でした。

釣りバカ日誌8
釣りバカ日誌8

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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