どこに「免許取得禁止」の基準を置くか

てんかん発作でトラック運転手が歩道に突っ込み中学生ら2人が死傷した事故について、横浜地裁(森義之裁判長)は運転手らに約8500万円を支払うよう命じた。ここでまた議論になるのが、てんかん発作と運転免許の発行である。
てんかん発作のニュースから引用しよう。
てんかん発作事故で賠償命令=運転手らに8500万円-横浜地裁
 横浜市鶴見区で2008年、トラックが歩道に突っ込み中学生ら2人が死傷したのは、運転手がてんかん発作を抑える薬の服用を怠ったためとして、亡くなった中学生の遺族が男性運転手(48)とトラック会社などに約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、横浜地裁であった。森義之裁判長は「(運転手の)過失は重大かつ悪質で強い非難に値する」として、運転手らに約8500万円を支払うよう命じた。
 判決によると、運転手は過去にてんかんの発作で意識を失い物損事故を起こした経験があり、医師から薬を服用するよう厳しく指導されていた。しかし、運転手は発作は起こらないと考えて薬を処方通り服用せず、08年3月9日に死傷事故を起こした。(2011/10/18-15:27)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201110/2011101800049&rel=y&g=soc

事故それ自体は痛ましいの一言であり、かつ運転手は持病を隠して大事故につながったことが初めてでない。だから、「(運転手の)過失は重大かつ悪質で強い非難に値する」という判決ももっともであると思う。

たが、しかし……である。その先がちょっとばかり気になる。

こうした事故があれば、当然、ドライバーにはてんかん患者であることを申告させる声が社会的に高まるだろう。

そして、てんかん患者は絶対に運転してはならない。不申告者には厳罰を与えよ、という話になるのではないか。

もちろん、それは事故の痛ましさに胸を痛め、再発防止の善意からであるのだろうが、それでも、じゃあ、厳罰を求めるあなたは、その病気のことをどれくらい知ってるの? という反問も打ち返しておかなければならないだろうと思う。

紋切り型の禁止で済むのなら、とっくに事は解決しているのである。
世の中、それほど単純ではないから難しいのだ。

たとえば、交通事故や脳卒中などで脳を傷害すると痙攣を起こす。

それは、熱性痙攣なのか、脳と体の筋肉の連絡が麻痺したものなのか、てんかんなのか、医師でも区別はつかない。

その場合でも、医師は用心して抗てんかん剤を処方する。抗てんかん剤は、いったん始めたら長期間服用することになっている。

わかりやすく書くと、本当にてんかんかどうか断定できなくても、てんかんの薬を処方することがあるということだ。

では、そういう人は「申告」しなければならないのか。「申告」したら、免許は取れなくなるのか。確率的にいえば、その中の多くは、もともとてんかん発作を起こす人ではないのに……。

つまり、どこに「免許取得禁止」の基準を置くかという問題が出てくるのだ。

現在の道路交通法では、「今後一定期間は起こす恐れがない」場合は、既往があってもいいということになっているが、結局、その「今後」とやらを判断するのも人間の気持ちひとつなのである。

つまり、いずれにしても根拠のない免許禁止や就職差別が発生する可能性があるということだ。(差別というのは本来根拠のないものだが……)

事故を防ぐために、「疑わしきものは運転させない」との一言で処理してしまっていいのだろうか、という疑問は残るのではないだろうか。

そうした点、大いに議論が必要だと思うが、こういうテーマこそ、匿名で社会的地位も関係なく率直に意見を出し合えるネット掲示板で闊達に書き込みを行ってもいいだろう。

不毛な中傷に盛り上がるヲチスレなどよりもよほど建設的だと思うのだが。

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