叔父・渡部恒三元衆議院副議長の秘書だった

佐藤雄平知事がリアリティのない被害者意識で話題になっている。東日本大震災による福島の原発問題。佐藤雄平知事が被害者意識むき出しで政府に文句を言っている報道があるが、共鳴もされず評判もよくない。自治体の長はその自治体に責任を持つ立場であるから被害者ヅラするのはおかしいという一般論だけでなく、佐藤雄平知事の叔父である渡部恒三議員が原発を誘致し、多額の見返りが麻薬のようになって6号機まで作ってしまった経緯があるからだ。
佐藤雄平氏が福島県知事に当選したのは06年11月12日。佐藤栄佐久前知事の辞職に伴い実施された選挙で、民主党、社民党(!)の推薦を受け出馬したもの。参議院議員を2期つとめていたが、もともと叔父でもある渡部恒三元衆議院副議長の秘書をつとめていた。

渡部恒三議員といえば、ある意味、今回の原発問題の真犯人のようなものである。

もちろん、渡部議員が原発トラブルを起こしたという意味ではない。福島と原発の深いつながりを作った張本人という意味である。

今回の震災。信じがたいことに、政府批判を手控えるという馬鹿げた潮流が当初からあり、いまでこそ政府の対応の「遅さ」「まずさ」「(自己保身や隠蔽などの)愚劣さ」が叩かれるようになったが、この期に及んでなぜか渡部恒三議員の責任はあまり問われない。

原発推進の責任は民主党ではなく、それまで政権を担っていた自民党にあるといわれる。それはその通りだ。だが、それをいうなら、この渡部恒三議員こそがその自民党の通産族として、長年に亘って原発推進の旗を振っていたことを免罪してはならない。

原発の誘致は県議時代から行っていた。国会議員になってからは、安定かつ低廉な電気の供給を確保することは、国民生活の安定や経済活動の発展にとって極めて重要であると称して「電源三法交付金制度」に汗を流す。

要するに電力会社に国として大儀を与えて仕事をさせやすくし、その見返りに金を吸い上げ、自治体にバラまく仕組みである。

福島のような田舎の農村部では、このバラ撒きは魅力である。だが、うま味は原発建設当初に比べると年を経る毎に少なくなるので、2号機、3号機と作らせることになる。もうそうなると麻薬患者のようである。

渡部恒三議員は、農業で地域を活性化させるのではなく、東電の札束で地域の人々を籠絡し、東電に恩を売り、権勢を振るってきた。選挙区の会津には水力発電所が12カ所もある事実は、東京電力とズブズブの関係であることを隠せない。

厚生大臣時代、「原発つくれば国民は長生き」の舌禍で叩かれたが、福島は原発関連の「バラ撒き」なしには生きられない、と言っているようにも解釈できる。福島の人間は、そんな人を議員に選んできたのだ。

そして、原発の安全性について問題提起した佐藤栄佐久前知事は、言いがかりのような収賄事件で失脚。原発誘致の立場で当選したのが今の佐藤雄平知事なのである。

そして、この知事を社民党が推薦して当選させたのだ。プルサーマル原発は、佐藤雄平知事の下で稼働を始めたばかりだった。

観念論の国民よ、社民党が“護憲の党”だの“反原発の党”だのという「自称」を、いつまで額面通り受け止めているのか。いい加減目を覚ますことだ。

騙す方と騙される方を比べれば、明らかに騙す方が悪い。しかし、客観的な事実と向き合わずにナイーブに信奉しては政治家に騙される愚かさにも、日本がこうなった責任の一端はあるのではないか。
ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災 (単行本コミックス)

ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災 (単行本コミックス)

  • 作者: ひうら さとる
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/03/11
  • メディア: コミック