根拠がない上に差別の温床にもなっている
血液型で相性を判断するという、面妖な血液型診断がわが国では根強く信じられている。
血液型で、恋愛や友情や商談の相性を調べるということだが、「血液型で相性がわかるのなら離婚も絶交もない」という主張はその人たちには通用しないらしい。
人間関係で失敗する人々は、血液型による相性を知らなかったから、齟齬を未然に防げなかったというのだ。
血液型で、恋愛や友情や商談の相性を調べるということだが、「血液型で相性がわかるのなら離婚も絶交もない」という主張はその人たちには通用しないらしい。
人間関係で失敗する人々は、血液型による相性を知らなかったから、齟齬を未然に防げなかったというのだ。
では改めて問おう。血液型というのは、相性を明らかにできる合理的な根拠でもあるのか。
血液型というのは、血液中に4通りある赤血球の抗原型である。血液型は骨髄移植でも変わり、最近はアメリカ・ハーバード大などの国際研究チームが、AとB、AB型の赤血球を、O型の赤血球に変えることのできる酵素を開発したという。医学的には輸血や遺伝などで意味のあるものだが、人間の内面を分類するものではない。ましてや、相性どうのこうのという論文など見たことない。
ところが、これが信憑性を以て信じられているのは、血液型診断は「占い」や「言い伝え」ではなく、「科学」が関与しているものと思われているからだ。
日本で血液型と性格の関係に最初に言及したのは原来復という医師であり、「流行」させたのは東京女子師範学校(現お茶の水女子大)の教授だった古川竹二である。
医師や学者が発表したものだから、血液型と相性も科学的に明らかにできるということらしい。
だが、彼らの説は客観性も再現性も実証も追試もされることなく廃れていった。
そして時は流れ、1970代後半から80年代に大量に啓蒙書を上梓した能見正比古・俊賢の親子や鈴木芳正らが、血液型と相性を流行させた。
彼らもまた、これは占いではなく「人間学」だと言い張ったが、彼らが学術系の学会や雑誌に論文を発表した形跡はない。
では、彼らはどのようにそれを喧伝したのか。たとえば能見父子は、衆議院議員、スポーツ選手、タレントなど有名人の血液型分布を例に挙げた。
「政治家には×型が多いから×型は政治家タイプ」「△型は大器晩成だから、プロ野球の新人王は△型が少ない」「×型のキャスターAと△型の女優Bが破局したのは、×型の几帳面さと△型の自由奔放さが災いした」などと統計を用いた「考察」と、テレビなどのメディアで顔やキャラクターが知られている有名人を例に出すことで、何となく当たっているような気にさせる効果を狙ったのだ。
ところが、心理学者や統計学の専門家らは、能見父子らの言う職業・性格による血液型分布の偏りは、学問的に有意ではない、要するに客観性も再現性もない「思い込み」であると批判(*注)した。
要するに、「△型」と職業や性格などの関連は見られないということだ。現在、科学的な根拠のある「血液型と性格関連説」は存在しない。つまり、血液型と相性にも合理的な関係は見られない、ということだ。
筆者は、2008年度のプロ野球選手の血液型分布について調べてみた。
【2008年度プロ野球選手血液型分布(『週刊ベースボール』2008年2月23日増刊号より)】
A型……投手143名、野手146名(37.9%)
O型……投手115名、野手117名(30.4%)
B型……投手80名、野手92名(22.6%)
AB型……投手27名、野手42名(9.1%)
不明……投手41名、野手27名
「不明」のほとんどは外国人(アメリカ)選手である。それを見てもわかるように、プロフィールとして血液型を公開し、何よりその人自身が血液型にこだわるのは西欧先進国ではありえない。
結論を述べると、このデータにも統計的な血液型の偏りはない。つまり、「△型だから野球選手に向いている」などという考察はできない。
日本人の場合、各血液型の出現頻度はおおよそA型が4割、O型が3割、B型が2割、AB型が1割といわれているが、これは民族や人種によって変わる。ドイツのヒルシュフェルトという医師は、第一次世界大戦終結の年に兵士の血液型を調査。白人にA型が多く、中近東やアジア・アフリカにいくに従ってB型が多い調査結果の「違い」を知り、それを「白人が優秀である」ためとこじつけた。
根拠がない上に差別の温床にもなっている血液型診断。あなたはそれでも、血液型で相性を語りたいか?
(*注)草野直樹著『「血液型性格判断」の虚実』『血液型性格判断のウソ・ホント』(いずれもかもがわ出版)は、衆参国会議員、プロ野球やJリーガー、力士といったスポーツ選手、タレントやキャスターといった芸能人などについて、血液型による分布を30年前から調査。いずれも血液型による偏りを見ることはできなかったことを書いている。
血液型というのは、血液中に4通りある赤血球の抗原型である。血液型は骨髄移植でも変わり、最近はアメリカ・ハーバード大などの国際研究チームが、AとB、AB型の赤血球を、O型の赤血球に変えることのできる酵素を開発したという。医学的には輸血や遺伝などで意味のあるものだが、人間の内面を分類するものではない。ましてや、相性どうのこうのという論文など見たことない。
ところが、これが信憑性を以て信じられているのは、血液型診断は「占い」や「言い伝え」ではなく、「科学」が関与しているものと思われているからだ。
日本で血液型と性格の関係に最初に言及したのは原来復という医師であり、「流行」させたのは東京女子師範学校(現お茶の水女子大)の教授だった古川竹二である。
医師や学者が発表したものだから、血液型と相性も科学的に明らかにできるということらしい。
だが、彼らの説は客観性も再現性も実証も追試もされることなく廃れていった。
そして時は流れ、1970代後半から80年代に大量に啓蒙書を上梓した能見正比古・俊賢の親子や鈴木芳正らが、血液型と相性を流行させた。
彼らもまた、これは占いではなく「人間学」だと言い張ったが、彼らが学術系の学会や雑誌に論文を発表した形跡はない。
では、彼らはどのようにそれを喧伝したのか。たとえば能見父子は、衆議院議員、スポーツ選手、タレントなど有名人の血液型分布を例に挙げた。
「政治家には×型が多いから×型は政治家タイプ」「△型は大器晩成だから、プロ野球の新人王は△型が少ない」「×型のキャスターAと△型の女優Bが破局したのは、×型の几帳面さと△型の自由奔放さが災いした」などと統計を用いた「考察」と、テレビなどのメディアで顔やキャラクターが知られている有名人を例に出すことで、何となく当たっているような気にさせる効果を狙ったのだ。
ところが、心理学者や統計学の専門家らは、能見父子らの言う職業・性格による血液型分布の偏りは、学問的に有意ではない、要するに客観性も再現性もない「思い込み」であると批判(*注)した。
要するに、「△型」と職業や性格などの関連は見られないということだ。現在、科学的な根拠のある「血液型と性格関連説」は存在しない。つまり、血液型と相性にも合理的な関係は見られない、ということだ。
筆者は、2008年度のプロ野球選手の血液型分布について調べてみた。
【2008年度プロ野球選手血液型分布(『週刊ベースボール』2008年2月23日増刊号より)】
A型……投手143名、野手146名(37.9%)
O型……投手115名、野手117名(30.4%)
B型……投手80名、野手92名(22.6%)
AB型……投手27名、野手42名(9.1%)
不明……投手41名、野手27名
「不明」のほとんどは外国人(アメリカ)選手である。それを見てもわかるように、プロフィールとして血液型を公開し、何よりその人自身が血液型にこだわるのは西欧先進国ではありえない。
結論を述べると、このデータにも統計的な血液型の偏りはない。つまり、「△型だから野球選手に向いている」などという考察はできない。
日本人の場合、各血液型の出現頻度はおおよそA型が4割、O型が3割、B型が2割、AB型が1割といわれているが、これは民族や人種によって変わる。ドイツのヒルシュフェルトという医師は、第一次世界大戦終結の年に兵士の血液型を調査。白人にA型が多く、中近東やアジア・アフリカにいくに従ってB型が多い調査結果の「違い」を知り、それを「白人が優秀である」ためとこじつけた。
根拠がない上に差別の温床にもなっている血液型診断。あなたはそれでも、血液型で相性を語りたいか?
(*注)草野直樹著『「血液型性格判断」の虚実』『血液型性格判断のウソ・ホント』(いずれもかもがわ出版)は、衆参国会議員、プロ野球やJリーガー、力士といったスポーツ選手、タレントやキャスターといった芸能人などについて、血液型による分布を30年前から調査。いずれも血液型による偏りを見ることはできなかったことを書いている。