毒ではないが効果不明、食べればよい
ニンニク注射という、元巨人の清原和博や、元横綱の朝青龍が行っていた「健康療法」がある。「J-CASTニュース」(9月27日11時32分配信)では、医師に相談できるQ&Aサイト「アスクドクターズ」が2011年、医師100人に対して行ったニンニク注射に対するアンケート結果を記事にしている。
結論から述べると、医師は「勧めない」と過半数が回答したという。
わが国は国民皆保険で医療が安価で受けられるにもかかわらず、巷間、健康食品を含めた民間療法が花盛りだ。
理由はいくつも考えられるが、
・平均寿命の延びと新自由主義による競争社会の激化で、人は長く現役で働かなければならなくなった
・情報化社会の中で、ドクハラや誤診などを見聞きすることが多く、国民は医学・医療に不安や不満がある
・健康増進法が制定され、健康が自助努力であると突き放され、公的扶助だけでなく民間の力も求められている
といったことが大きく見れば挙げられるだろう。
はっきりいって、医学も医師も完璧ではない。というより、わかっていることの方がごくわずかだ、といってもいいだろう。
だが、民間療法がそれを上回るかといえば、そんなことはない。
医学者も人間であり、また政治や企業との駆け引きの中で研究開発を行っている以上、矛盾や同様もある。
ただ、客観性や再現性などを調べて導入を決める通常の医療と、交絡因子の検証もせず「効いているような気がする」「それを使った人で奏功した人がいる」という現象や思い込みだけで「これはいける」と喧伝する民間療法では、責任も確度も次元が違う。
民間療法を利用するのはその人の自由であり、とやかく言われる筋合いはない。
ただ、無根拠な幻想を抱くことなく、それがどういうものかという認識をきちんと持った上で利用することだ。
ニンニク注射ではないが、筆者は以前、「抗がん」を売り物にする健康食品について調べたことがある。
ネットにおける宣伝を見ると、健康食品はどんな難病でも奇跡の回復ができるように書かれている。そのイメージを補強するために、そこには必ず使用者の体験談や、もっともらしい僅かなデータが掲載されている。
2005年10月に薬事法違反で逮捕、有罪判決を受けた史輝出版のアガリクスに関する書籍は、体験談がでっちあげだった。まず、体験談にはそうした危うさがあることを私たちは認識しなければならない。
もちろん、すべての体験談がそうだとは断言できないが、かりに本当だとしても、成功被験者の紹介には疑問に思うことがある。もし、奏功例があったとしても、それがすべてではなく、奏功していない例だって多数あるのではないか、ということだ。むしろ、その方が圧倒的だろう。
業者は、奏功しない例は絶対に公表しない。というより、奏功しない人は亡くなってしまうわけだから、「死人に口なし」で、そのような報告は上がってこないのだろう。
しかし、奏功しない例は出さずに奏功例だけを見せれば、消費者には、あたかもそれを使えば必ずうまくいくようなイメージをもたせることができる。しかし、それは公正な宣伝とは言えないのではないだろうか。
NPOの法人格をとっている、糖鎖と昆布フコイダンという健康食品を宣伝するサイトがある。そこには「臨床例」として、末期がん患者10名の白血球や腫瘍マーカーなどの数値が、その健康食品を使用したことで改善し、余命が伸びたと報告されている。
筆者はそのサイトに、その後、その患者たちはどうなったのかを尋ねた。すると、次のような回答があった。
「4名は亡くなっています。しかし、末期なわけですし、数値が良くなって余命が伸びたのは画期的な病気の改善だと思います。もちろん健康食品のおかげだと思っています」
これを額面通り受け止めれば、すばらしい健康食品だと思うだろう。末期でさえそうなら、早期ならこれだけで治ってしまうかも……、などと思うかもしれない。しかし、それほど画期的なものなら、とっくに病院の治療で採用されているだろう。
まず、亡くなった人がいるのなら、亡くなったことを追記すべきである。サイトには「数値の改善」だけが書かれているため、閲覧した人にとっては、まるでその末期がん患者全員が持ち直していると受け取れる。
余命というのは、ひとつのめやすであり、たとえば余命3ヶ月の人が半年生きることは別段珍しいことではなく、それをもって「病気が改善した」「健康食品のおかげ」ということにはならない。
また、マーカーなど数値はその時々で上がったり下がったりするもので、それだけで即、病状の改善と判断することはできない。きちんと、CTや内視鏡などの画像診断や、細胞診などの医学的判定を行うべきである。
そして、これは科学や医学では常識だが、こうした効き目の試験は、思い込みによる影響を分離するため、真薬と偽薬を投与する被験者グループを用意し、効果を検証しなければならない。それを二重盲検試験という。
いずれにしても、亡くなった人がいるのにそうした情報を書いていない以上、そのサイトのデータは「虚偽」といってもいいのではないだろうか。藁にもすがる気持ちで、その健康食品を求める患者を裏切るものとはいえまいか。
今、華々しい体験談や宣伝データなどに心を動かされて何らかの健康食品を検討している方は、そのデータに書かれている被験者が、その後どうなったか確認されることをお勧めしたい。
有名人ご愛用「ニンニク注射」は効くのか 医師は「勧めない」過半数
J-CASTニュース 9月27日(火)11時32分配信
「疲れが取れる」などとしてスポーツ選手やサラリーマンに愛用者が多い「ニンニク注射」だが、意外にも医師からは「食べて寝ていればよい」などと、必ずしも肯定的な声は多くない様子だ。このほど、Q&Aサイトが医師に100人に対して行ったアンケートで、こんな結果が明らかになった。
アンケートによると、世間では注目されている健康法の中にも、医師からは効果を疑問視するものが多い。かえって悪影響を指摘する声すら上がっている。
(中略)
医師に相談できるQ&Aサイト「アスクドクターズ」が2011年、医師100人に対して
「先生のご家族や親しいご友人がにんにく注射を望んだ場合、賛成しますか?」
とアンケートを行ったところ、「強く賛成」または「賛成」と回答した人は全体の20%なのに対して、「反対」「強く反対」と答えた人に割合は59%にのぼった。
ニンニク注射に肯定的な意見としては
「きちんとした製剤で水溶性ビタミン複合剤なら可」
「あまり害はないと思う」
「自分で行っている」
と、ある程度の効果を認めるものが多い。一方、否定的なものとしては
「不必要な処置だから」
「食べて寝ていればよい」
「毒ではないが効果不明、食べればよい」
といったものがあった。積極的に否定するというよりは、効能を疑問視する、または「わざわざ、そこまでする必要はない」といった人が多いようだ。(以下略)
わが国は国民皆保険で医療が安価で受けられるにもかかわらず、巷間、健康食品を含めた民間療法が花盛りだ。
理由はいくつも考えられるが、
・平均寿命の延びと新自由主義による競争社会の激化で、人は長く現役で働かなければならなくなった
・情報化社会の中で、ドクハラや誤診などを見聞きすることが多く、国民は医学・医療に不安や不満がある
・健康増進法が制定され、健康が自助努力であると突き放され、公的扶助だけでなく民間の力も求められている
といったことが大きく見れば挙げられるだろう。
はっきりいって、医学も医師も完璧ではない。というより、わかっていることの方がごくわずかだ、といってもいいだろう。
だが、民間療法がそれを上回るかといえば、そんなことはない。
医学者も人間であり、また政治や企業との駆け引きの中で研究開発を行っている以上、矛盾や同様もある。
ただ、客観性や再現性などを調べて導入を決める通常の医療と、交絡因子の検証もせず「効いているような気がする」「それを使った人で奏功した人がいる」という現象や思い込みだけで「これはいける」と喧伝する民間療法では、責任も確度も次元が違う。
民間療法を利用するのはその人の自由であり、とやかく言われる筋合いはない。
ただ、無根拠な幻想を抱くことなく、それがどういうものかという認識をきちんと持った上で利用することだ。
ニンニク注射ではないが、筆者は以前、「抗がん」を売り物にする健康食品について調べたことがある。
ネットにおける宣伝を見ると、健康食品はどんな難病でも奇跡の回復ができるように書かれている。そのイメージを補強するために、そこには必ず使用者の体験談や、もっともらしい僅かなデータが掲載されている。
2005年10月に薬事法違反で逮捕、有罪判決を受けた史輝出版のアガリクスに関する書籍は、体験談がでっちあげだった。まず、体験談にはそうした危うさがあることを私たちは認識しなければならない。
もちろん、すべての体験談がそうだとは断言できないが、かりに本当だとしても、成功被験者の紹介には疑問に思うことがある。もし、奏功例があったとしても、それがすべてではなく、奏功していない例だって多数あるのではないか、ということだ。むしろ、その方が圧倒的だろう。
業者は、奏功しない例は絶対に公表しない。というより、奏功しない人は亡くなってしまうわけだから、「死人に口なし」で、そのような報告は上がってこないのだろう。
しかし、奏功しない例は出さずに奏功例だけを見せれば、消費者には、あたかもそれを使えば必ずうまくいくようなイメージをもたせることができる。しかし、それは公正な宣伝とは言えないのではないだろうか。
NPOの法人格をとっている、糖鎖と昆布フコイダンという健康食品を宣伝するサイトがある。そこには「臨床例」として、末期がん患者10名の白血球や腫瘍マーカーなどの数値が、その健康食品を使用したことで改善し、余命が伸びたと報告されている。
筆者はそのサイトに、その後、その患者たちはどうなったのかを尋ねた。すると、次のような回答があった。
「4名は亡くなっています。しかし、末期なわけですし、数値が良くなって余命が伸びたのは画期的な病気の改善だと思います。もちろん健康食品のおかげだと思っています」
これを額面通り受け止めれば、すばらしい健康食品だと思うだろう。末期でさえそうなら、早期ならこれだけで治ってしまうかも……、などと思うかもしれない。しかし、それほど画期的なものなら、とっくに病院の治療で採用されているだろう。
まず、亡くなった人がいるのなら、亡くなったことを追記すべきである。サイトには「数値の改善」だけが書かれているため、閲覧した人にとっては、まるでその末期がん患者全員が持ち直していると受け取れる。
余命というのは、ひとつのめやすであり、たとえば余命3ヶ月の人が半年生きることは別段珍しいことではなく、それをもって「病気が改善した」「健康食品のおかげ」ということにはならない。
また、マーカーなど数値はその時々で上がったり下がったりするもので、それだけで即、病状の改善と判断することはできない。きちんと、CTや内視鏡などの画像診断や、細胞診などの医学的判定を行うべきである。
そして、これは科学や医学では常識だが、こうした効き目の試験は、思い込みによる影響を分離するため、真薬と偽薬を投与する被験者グループを用意し、効果を検証しなければならない。それを二重盲検試験という。
いずれにしても、亡くなった人がいるのにそうした情報を書いていない以上、そのサイトのデータは「虚偽」といってもいいのではないだろうか。藁にもすがる気持ちで、その健康食品を求める患者を裏切るものとはいえまいか。
今、華々しい体験談や宣伝データなどに心を動かされて何らかの健康食品を検討している方は、そのデータに書かれている被験者が、その後どうなったか確認されることをお勧めしたい。
