サプリメントという法的定義は存在しない

サプリメントを商売道具に使った薬事法違反の事件は絶えることがない。18日にも「背が伸びる」サプリで6億円荒稼ぎしたという健康食品販売会社経営の男性について、神奈川県警生活経済課は18日までに、薬事法違反(医薬品の無許可販売)の疑いで逮捕状をとったとの報道があった。
健康食品販売会社の名前は「日本新光製薬」。2009~10年にわたって、医薬品販売業の資格がないのに「背が伸びる」などの効能をうたって、関東地方の5人に顆粒状のサプリメント「HGH21プログラム」を売った疑いが持たれている。「疑い」というが、サイトにはサプリメント開発者として父親である整形外科医ら複数の医師の写真を載せていたり、1月の時点で男性本人が売ったことを認めているとも報じられている。

インターネットなどを通じての売り上げは約5万6000箱分の6億円以上。

ネットビジネスはリアルに比べて市場が小さいと揶揄する者もいるが、単品でこれだけ売れれば立派な市場である。

それはともかくとして、購入した人の中には、おそらく医薬品とサプリメントの違いも分からない人もいたのではないだろうか。

「医薬品でなくとも、効くといって売っているのだから、それに準ずるのだろう」というような判断があったのではないか。

実際、私たちはサプリメントと医薬品を厳然と区別して使っているわけではない。どちらも「健康のため」という意味では同じ目的である。

仕事がたて込んだときにグッとひと飲みする栄養ドリンク。肌荒れ予防にはビタミンCやB……。私たちは、日常生活で実に多くのサプリメント(健康食品)と付き合っている。そのほとんどは、食べ物として栄養を摂取するいうより、滋養強壮や体調を整えるために使っていることが多く、いわば「医者から処方されない薬」といったところであろう。

だが、医薬品とサプリメントは、科学的(医学的)にも法的にも全く異なるものである。

たとえば、医薬品なら用法や副作用がある。一方、サプリメントには、目安となる分量は示されていても、具体的に食前・食後に何回どのぐらい服用すればいいのかは書かれていない。もとより、薬に書かれているような効能も書かれていない。もとい、書いてはいけない。今回逮捕されたのは、書いたからである。

我が国では法律上、口に入るもののなかで、まず医薬品、医薬部外品といった薬品の定義に含まれるものは薬品になり、そうでないものはすべて食品と分類されており、大枠でサプリメントという定義は存在しない。

医薬品は薬事法(第1章総則第2条)に、「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用される」もので、かつ「身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている」ものとされている。

一方、食品とは、食品衛生法((4)規格・基準、検査等の概要1) 対象品目)によると、「すべての飲食物。但し、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は除かれる」とされている。つまり、医薬品と食品は、法律上はっきりと区別されているのだ。

サプリメントが薬と似たような形で、薬と同じような使い方をしたとしても、そもそも両者は全く異なるものである。たとえ見かけやイメージがどうであろうが、それらは医薬品としての目的(診断、治療、予防)をうたうことはできない。

いまだに、がんや糖尿病に効くとうたわれている健康食品が売られているが、あれは食品でありながら薬品のように効能をうたっている点で、薬事法違反の疑いがある。

つまり、今回逮捕されるケースと同じなのである。

もちろん、厳密に言えば、法律違反の売り方をしたものには絶対に効き目がない、ということではない。違法というのは、たんに法的な手続きをしていないというだけだからだ。

しかし、そのサプリメントがそんなに効くのなら、とっとと、ヒトを対象にしたきちんとした試験をして、医薬品に認定してもらった方がいいだろう。

そうしないのは、そこまでするほどの確度がないから、試験のコストをかけず、「サプリメント」として売り抜こうと業者が考えているからである。

それは、その「サプリメント」は「医薬品」になり得ない、つまりエビデンスのないインチキだということを業者自身が認めていることにほかならないのだ。

サプリメントの全てがそうだとはいえないが、少なくとも、医薬品としての法的手続きを試みないまま、医薬品のような宣伝をしているものには、そのような評価を下しても構わないだろう。

健康情報・本当の話

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  • 作者: 草野 直樹
  • 出版社/メーカー: 楽工社
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 単行本