採用やプロジェクトの人選にも使われる?

血液型性格判断に何でも頼る。何とも困った「症候群」だが、これだけで驚いたり呆れたりしてはいられない。企業が採用やプロジェクトメンバー選考にあたり、血液型性格判断を基準にしているという実態も80年代からは出始めていた。
81年8月2日付の「朝日」大阪版では、「血液型B型の方のみ限定採用します。社員室直属の新製品開発室、企画宣伝室・・・・」という求人広告が食肉の加工、販売などで有名な『アーデル・ミート・パッカー社』から出た。

B型以外の血液型の人は、いくらヤル気があろうとも、いくら過去にその仕事で実績を積んでいようとも門前払いというわけだ。

なぜB型かというと、「B型は、
・過去にこだわらず
・一度に二つ以上の仕事もこなせる
など、クリエイティブな仕事に向いている・・・・」(同社、鈴木隆統轄本部長)としている。

そうした所見がどんな科学的根拠によるのかは、全く明らかにされていない。

この求人に対して「微笑」という週刊誌では、社員の気持ちを代弁してこう書いている。

「『B型社員のみ優遇』となったら、他の血液型の社員はどんな気持ちがするだろうか」と(10月10日号)。

プレハブ住宅販売施工でお馴染みのミサワホームエンジニアリングでは、79年から接客営業マンの胸の名札に出身地と血液型を明記した。

同社の斗光博社長は、客との会話のきっかけに役立たせるだけでなく「経理課員には完全主義のA型が向いている」など、入社試験の参考にするとも語っている(85年8月27日付「朝日」)。

ニューラック工業という半導体の製造販売会社では「どうせなら、ほかの社員と同じ血液型の人に来てもらったほうが仲よく仕事ができるだろうと思って」女子事務員の募集にA型とO型を求めたとか。

接客に血液型を話題にしたり、同僚との日常会話に血液型を使うことを前提としたそれらの事実は、労働力をいかにうまく使い生産を効率よく行うか、血液型性格判断大流行に、資本の側なりの皮算用で便乗しているということだろう。

90年11月21日付の「朝日」には、三菱電機が血液型がAB型の社員だけを集め、ファクシミリの商品開発や販売戦略を練るプロジェクトチームを作った記事が経済面に出ている。

「アイデア、企画力に優れたAB型の特質」(発案者の伊藤円亢・通信機器事業部長)を利用してのものといいますが、なぜそれを採り入れたかについては、「根拠はないけど、人間探究の一つの方法になりそう」(伊藤事業部長「週刊朝日」90年12月14日号)と述べるにとどまっている。

何とも心許ない理由ではないか。心許ないけれども、こうした採用は現実にあったのだ。

それにしても、すでにこの当時、職域にまで血液型診断が入り込んできていたというのは、わが国の血液型診断はもはや「お遊び」の段階を越した信仰が定着していると言わざるを得ない。

血液型性格判断のウソ・ホント (講座・超常現象を科学する)

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  • 出版社/メーカー: かもがわ出版
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: 単行本