アメリカ産牛由来食材を使うレトルトカレーは?

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アメリカ産牛由来食材を使うレトルトカレーは?

アメリカ産牛についてはBSEへの不安など評価が様々ある。そのアメリカ牛肉由来の食材を使ったレトルトカレーについて調べた。レトルトカレーを製造・販売する主要28社に対して、牛肉の産地やビーフエキスの使用について確認したのだ。

国によって危険部位の考え方が違う?

口蹄疫問題がマスコミで取り沙汰されている。口蹄疫は、牛、豚等の偶蹄類の動物の病気であり人に感染することはない。感染牛は処分されるため、感染牛の肉や牛乳が市場に出回ることはないし、仮に感染牛の肉や牛乳を摂取しても人体には影響がない、とされる。

だから、消費者の間でも動揺はない。

ところが、2001年に我が国でも発覚したBSE問題については、今もカレーやシチューなど、とくに子どもが食べる加工食品に、「牛由来不使用」の断り書きがある。

管理や検査に、粗雑さを感じるアメリカ牛の輸入再開も、消費者の不安の一因になっているからだろう。

輸入再開後、「アメリカからの輸入牛肉に危険部位が混入」との報道がしばしばある。

国によって、頭蓋、脊髄、脊柱以外の「危険部位」の認定が異なるためのミスといわれるが、信頼関係が重要である通常のビジネスならとっくに取引停止であろう。

専門家は、日本人が今後、BSEが原因とされるクロイツフェルト・ヤコブ病に罹患する可能性はきわめて少ないと考察する。

しかし、もとはといえば、牛BSEは人間に感染しないというのが「定説」だったはず。

にもかかわらず感染したことをどう説明するのか。

科学の相対的な既知の限界に対する予防原則や精神衛生上の問題として、リスクの大小にかかわらず、管理体制のいい加減な食材は御免被りたい、という気持ちが消費者にあることは、別に「非科学的」と糾弾するような話ではない。

もとより、自らの価値観で食材を選択するのは消費者の権利である。

そこで以下にご紹介するのは、聞き取りを行ったのは昨年だが、「牛由来」を使うレトルトカレー調査である。

「牛由来」を使うレトルトカレー調査

レトルトカレーを製造・販売する主要28社に対して、

(1)具材に使用する牛肉の産地
(2)ビーフエキスの使用。使われている場合の産地

の2点について質問した。聞き取りを行ったメーカーは、以下の各社である。

S&B、ハウス食品、カゴメ、大塚食品、グリコ、明治製菓、成城石井、クイーンズ伊勢丹、西友、ダイエー、イトーヨーカ堂、日本生活協同組合連合会、無印良品、トーチクハム、嶋田ハム、マスコットフーズ、崎陽軒、千疋屋、カレーショップ山小屋、せんば自由軒、大阪ナビン、デリー、ミナト商会、ヤチヨ、鈴音霧笛楼、DHC、新宿中村屋

その結果は以下の通りである。

まず、牛肉については、オーストラリア産が17社、国産が5社、ブラジル産が3社、ニュージーランド産が3社、チリ産が1社、牛肉不使用が4社。

今回の眼目であるアメリカ産は全くなかった。(複数国使用のメーカーもある)

いずれのメーカーも、全頭検査を行っている国産をのぞけば、BSE発生国不使用が原則になっている。

アメリカ以外にはEU各国のものも使っていない。

科学的な根拠から、その有効性に否定的な声もある全頭検査だが、少なくとも消費者の信頼という、科学だけでは割り切れないものを回復するために、この制度導入は間違っていなかったと筆者は考える。

次に、牛由来製品(エキス)については、国産が7社、オーストラリア産が6社、ニュージーランド産が4社、ブラジル産が2社、不使用が10社、メーカー品使用が1社だった。

こちらもアメリカ産は全くなかった。(これも複数国使用のメーカーあり)

カレーでありながら、不使用が10社もあるのは意外だった。

やはり国産、アメリカ産と立て続けにBSE騒動があり、使用を見合わせる方向に変わったのだろう。

ただし、この場合、「エキス」そのものを不使用ということではなく、「ポークエキス」や、骨由来ではなく肉や牛脂(ヘット)由来のものに切り替え、さらに安全性に配慮している。

たとえば、牛脂(背脂肪、腹脂肪等)を採用しているS食品は、もともと牛脂が危険部位ではない上に、「国際獣疫事務局が定めた不活化処理の条件を上回る処理を行っている」という。

具体的には、「250~300度で2時間、アルカリ(0.35N、常温、20分)活性白土による不純物・タンパク質等の吸着」処理が行われていると教えてくれた。

要するに、「もともとプリオンは存在しないが、もし存在していたとしても不活化されている」ということだ。

「メーカー品使用が1社」については、そのメーカーにも問い合わせた。

以下が電話取材による回答の要旨である。

「エキスそのものは国内製造。製品によっては酵母エキス、野菜エキスなどを混ぜることもある。また、ビーフ・エキストラクトというコンビーフの煮汁を混ぜることもある。コンビーフは日本では生産していないのでこれは輸入品となる。製品自体は九州の工場で作っているので、どこの製品かと聞かれればすべて国産だが、製品によってはいろいろなものが混ざっており、その原料まで遡るとすべて国産とは言えない。ただし、これはほとんどの国産ビーフエキスについても同じことが言えると思う」(S製薬)

骨に髄が残るとの不安については絶対にないとはいえないし、原材料にアメリカ牛由来がないという保証もない。ただ、「危険部位不使用」は国際的な取り決めであり、エキス含有量は原材料の記載順位から見てそう多くはないだろう。

好きなブランドだが、牛エキスが入っていた。こんなケースは個々の判断となる。いずれにしても、気になる場合には直接問い合わせることをお勧めする。

以上のように、上記メーカーのほとんどから親切な回答をいただけたのだが、残念ながら大手菓子メーカー、明治製菓だけが、「納入業者との間に受け入れ基準を設けて安全性を確認し、品質管理に万全を期しております」と抽象的な回答だけで、具体的な産地は教えてもらえなかったことを記しておく。

消費者の意識は時代とともに高くなっている。抽象的な「安全性」を連呼するだけでなく、情報を公開して消費者の声を聞くという姿勢が必要ではないだろうか。

同じ疑問で、次に調べたのはファミリーレストランだ。こちらはレトルトカレーとは異なる調査結果が出ている。ご報告は次回としよう。

コメント

akagi :

大変参考になりました。
大手のカレーは基本的に問題なさそうですね(人によって判断はブレそうですが、私はそう判断しました)。
子供にレトルトカレーを食べさせるとき、若干心配していましたが、少し安心しました。

このページに勇気を貰って、すき屋のカレーの材料とメキシコ産牛肉の安全性をメールで問い合わせてみましたが反応はありませんでした。すき屋ですらこのザマです。外食産業は信用ならないのではないか、と本当に肝の冷える思いがします。
2010年7月26日 22:05

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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