島田紳助が引退会見で話したハッタリが『東京スポーツ』(10月18日付)で問題になっている。会見で島田紳助は、松本人志、上岡龍太郎、和田アキ子、明石家さんま、上地雄輔、ソフトバンク・孫正義社長らの名前を挙げて話を進めた。
島田紳助は『これだけのビッグネームと付き合ってきた』と強調したかったと思われるが、黒い交際が原因で辞める人に名前を出されても、その人たちは迷惑なだけだ。虎の威を借るにもほどがある、というのが同日一面の趣旨だ。

同紙では、上岡龍太郎についてこう書いている。
紳助は会見で「心の師と仰ぐ上岡龍太郎さんが引退されたのが55歳。今は自分が55歳で、上岡さんには『君は引退したらアカンよ』と言われていたのに、同じ年で引退するのは運命を感じてます」と話した。
 だが、かつて上岡と人気番組「パペポTV」(日テレ系)で共演していた笑福亭鶴瓶(59)は先日出演したテレビ番組で次のように話した。「紳助が『龍太郎師匠と同じ年に引退する』って言ってたけど、師匠本人は『オレはヤクザと付き合って引退したんと違う。晋通に引退したんやから』と言っていた」(中略)

 さらに紳助は「同じ年で引退」と強調していたが、上岡が引退したときは58歳。「2000年に引退」と宣言したのが55歳だった。関西お笑い界では誰もが知っている有名な上岡の引退のいきさつをも誤認し「心の師」「運命を感じる」などと言ってのけている。これでは上岡が困惑するのは当然だ。

松本人志については、こう書いている。
「紳助は会見で『暴力団との写真はない。あったら、腹を切る』と話してたけど、すぐに大ウソだとばれたよね。同じように松本とのエピソードも、紳助のシナリオだった。松本の名前を出すことで、自分の存在感をアピールするのと、いつの日かの芸能界復帰をにらんでレールを敷いておくことが狙い。それを知っているから、松本も答えにくそうにしていた。親しい人に松本は『あんなこと言われても、何を答えたらいいかわからないよ』と漏らしていたようだ」(前出幹部)。自分のためなら、ウソもハッタリも何でもありの紳助のずる賢さは、あの会見でも発揮されていたというわけだ。
かつて、江川卓が巨人を引退するとき、「この鍼をうったら野球はできなくなりますよ」と鍼灸師にいわれたが、チームのために大事な試合なのであえて鍼をうち試合に臨んだものの、小早川毅(当時広島)にホームランを打たれて引退を決意したと会見で吐露した。

一時はそのドラマチックな経緯と隠れたチーム愛を感じたファンは涙したが、実はそれは嘘だったことがあった。

このときは、特定の鍼灸師に迷惑をかけたわけではないし、島田紳助のように自分の権威を示そうとしたわけでもなかった。

プロ野球選手もショービジネスのタレントであるから、そのくらいのギミックはあってもいいだろうという意見もあったし、とくにあの江川卓ならそのくらいの作り話はあり得るとそれほど問題にならなかった。

だが、今回の島田紳助の場合は、複数のタレントや元タレントらの名前もだしているし、もともとの問題は芸能界と暴力団の関係だ。まるで名前を出した人たちが、暴力団のことぐらいでやめるな、といっているようにも聞こえてしまうので、その人たちにも迷惑がかかるだろう。

自分の意見を言うときに、他者の威を借りて自分を高く見せようとしたり、「みんながそう思っている」「みんなも同じ立場だ」というように、自分の意見は多数なのだと強調したりする人がいるが、自分の意見はありのままにいえばいい。島田紳助のように創作までするのは論外だ。

暴力団のタブー (宝島SUGOI文庫)

暴力団のタブー (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 溝口 敦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/01/09
  • メディア: 文庫