浄水器を蛇口につけている家庭は多い。日本の水道水は世界一安全でおいしいといわれているが、それでも塩素やトリハロメタン、赤さびなどを取り去ってより安全なものを求めているのだろう。しかし、その浄水器。つければいいというものではなく濾過能力が重要だ。大切なのは何をどれだけ除去できるかということである。
浄水器は水道水を前提としたもの
昨年6月、和歌山県湯浅町の新築住宅2軒で、水道管と防火用配水管を誤って接続していたため、家に続く支管からドジョウが出てきたと報じられた。誤った水の供給が約2~3カ月続けられていたため、乳児が腸炎で入院するなど体調を崩す住人も出たという。
Web掲示板では、湯浅町の責任を求める書き込みがあったのは当然としても、「今どき浄水器もつけてなかったのか」という意見があったのが少し気になった。浄水器に、それだけのパワーがあるのだろうか。
考えてみると、私たちは、浄水器が具体的にどれぐらいの能力で何をしてくれるのかを深く知っているわけではなく、漠然と、設置すれば美味しくて安全な水にしてくれるのだろうという期待で購入・設置しているのではないだろうか。そこで、改めて浄水器とは何か、ということを調べてみることにした。
まず、浄水器業者A社に、浄水器が防火用配水管に通用するかどうかを尋ねてみた。すると、次のような回答を得た。
「浄水器は水道水を前提としたものです。水道水は定まった水源から独自の基準による管理が行われていますから、どのような物質が入りやすく、何を濾過すべきか、ということもはっきりしています。浄水器というのはそれに対応するフィルタで水道水を通しているわけです。
一方、水道水以外の水は、どのような物質が入っているかがわかりません。一口に『水道水以外』といってもいろいろなものがあります。防火用配水管はその中の一つということです。水道水以外にも対応できる能力を求めることは、あらゆる不衛生な水すべてを対象とするわけですから現実的ではありません」
なるほど、それはそうだ。
水道水に対する濾過能力
では、水道水に対してどれぐらいの濾過能力があるのか。浄水器を含む生活用品をレンタルしているB社に尋ねてみた。同社は、「ほとんどのメーカーでそれほど品質に変わりはないと思いますが」と前置きしながら、次のように教えてくれた。
「1分間に1.6リットル濾過するとして、残留塩素やトリハロメタンが80%、鉛や農薬なども同じです。濁りは50%程度です」
「80%」という数字は、性能向上の努力で到達した数字だろう。ただ、やはり完全除去ではないということだ。サイトを検索すると、「塩素0%」と華々しく宣伝しているところもあるようだが、注意深くその業者に確認を求めた方がいい。
だいたい、残留塩素というのは、水中のウィルスや有害な微生物を無害化するために存在するものであり、むしろそれをゼロにした水は、保存して使うことも本来は禁忌だという(小島貞男『水道水 安心しておいしく飲む最新常識』宙出版)。
浄水器の業者の中には、塩素が残留しているから水道水は危険だと煽る人もいるが、実際は逆で、残留しているからこそ水道水の無害化が可能なのである。この点で、消費者には誤解があるように思う。
「といっても残留しているものが危険なら危険じゃないか」というかもしれないが、残留塩素にしろトリハロメタンにしろ、日本は国際的にも厳しい基準になっており、安全性には注意が払われている。
どんなものでもリスクのないものはないから、取り除くことを否定はしないが、あまり神経質になる必要はないように思う。
少なくとも、B社がいうように「80%」除去できるのなら、おおねむ無害化できるといっていいのではないだろうか。
とともに、濁りが「50%」ということは、マンションの貯水槽の汚れや赤さびなど、浄水器では根本的な解決にならないことも示唆している。やはりそれらは、蛇口の外の工夫ではなく、貯水槽の清掃や支管のチェックなどを行わなければならないということだ。
浄水器は、市場に出ている一般の浄水器なら一定の濾過能力は期待できるが、だからといって過信は禁物ということである。
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