60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)は、人生100年時代、60歳は人生の折り返し地点という意味合いが強まっているという

60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)は、人生100年時代、60歳は人生の折り返し地点という意味合いが強まっているという

60歳からの脳の使い方(茂木健一郎著、扶桑社)は、人生100年時代、60歳は人生の折り返し地点という意味合いが強まっているといいます。そのための「生きがい」は難しいものではなく、生活のあらゆるところに見つけることができる、と説きます。

人間の体は、加齢とともに衰えます。

脳についても例外ではなく、加齢とともに脳細胞が寿命を迎え萎縮していきます。

ただし、脳全体には約1000億個以上の細胞があるため、成人の脳細胞(神経細胞)は1日に約10万個死滅しても十分人間の寿命に余裕があります。

しかも、それは「器質」的なことであり、「機能」の話は別です。

脳は鍛えることでさらに豊かになること、そして可塑性といって、欠損した細胞に変わって別の部分が代役をつとめることで、機能の維持や向上が可能です。

脳科学者の茂木健一郎さんは、記憶力の低下を過度に恐れる必要はなく、現代においては情報の取捨選択やAIの活用こそが、成熟した脳にふさわしい知性であると述べています。

「老害」は日本独自の年齢差別的概念


世の中には、「老害」というくだらない言葉があります。

以前も私は批判しましたが、茂木健一郎さんも、脳科学の知見や社会的な背景から、この表現に対して非常に強い違和感と批判的な視点を持っています。

問題の本質(真の原因)を見えづらくしてしまう

高齢者がトラブルを起こした際、周囲は年齢を原因にして短絡的に片付けてしまいがちです。しかし、同じような暴力や暴言といった問題行動を若者が起こしたときには、年齢が理由にされることはなく、個人の性格や環境、ストレスなどの背景が分析されます。

本来は年齢に関係なく、「なぜその行動が起きたのか」という個人の背景や本質的な原因を掘り下げるべきなのに、「老害」の一言でくくってしまうことは、真の原因を見逃し、問題解決を先送りにすることにほかなりません。

年齢に対する偏見や差別(エイジズム)を助長する

実際には、長年培った経験や知識を活かして組織や社会に素晴らしい貢献をしている高齢者もたくさん存在します。にもかかわらず、一部の問題行動や、上の世代によるポジションの独占といった現象から「老害」という言葉で一括りに批判することは、年齢に対する偏見や差別的な考え方を不必要に広げてしまう恐れがあります

海外や特定の分野には存在しない偏った風潮である

アメリカでは、ジョー・バイデン氏やドナルド・トランプ氏が70代後半という史上最高齢クラスで大統領に就任しましたが、彼らの手腕に賛否はあっても、年齢そのものを理由に批判する「老害」のような風潮はありません。そのように報じるのは日本だけだといいます。

イギリスの数理物理学者ロジャー・ペンローズ博士は、89歳でノーベル物理学賞を受賞し、90歳を超えた現在も現役の研究者として活躍していますが、彼を老害と呼ぶ人は誰もいません。科学の世界では「真理の探求」という共通の目標があるため、年齢は単なる記号に過ぎず、そもそもそうした発想が生まれにくいのです。

アメリカでは、親しい友人の年齢も知らないことだってある、といいます。

「老害」と批判している人自身の思考停止

とはいえ、高齢者に「意固地」に見える人が多いように見えるのも確かです。

それは、その人たちが「今」と向き合えず、過去に獲得した価値観を捨てされないからです。しかし、それはその人個人の心がけが残念なだけであり、高齢者全員がそうだと決めつけることはできません。

翻って、ひとさまを「老害」呼ばわりするということは、「高齢者は変われない」と決めつけているからであり、「老害」などというレッテルを安易に使う者こそが思考停止なのだ、と筆者は述べています。この点、私も全く同意見です

で、結局高齢者はどうやって脳を鍛えるのか

それは、脳に新しい刺激を与える「生きがい」を持っているかどうかだ、と本書は説きます。

そのためには、AIと向き合って上手に使うこと。

茂木さんは、AIを、「ペリー」「GHQによる占領統治」に次ぐ、第三の黒船と呼んでいます。

本書では、「新しい未知のテクノロジーに触れること」自体が、脳(特に前頭葉)に非常に強い刺激を与えるといいます。

そして、AIを「最高のサポートパートナー」として使うことで、かつて時間や技術的なハードルで諦めていた夢に再挑戦できるとしています。

創作活動、論文執筆活動、イラストやアニメの作画……

以前もご紹介した、60歳過ぎてパソコンを始め、80歳過ぎてゲームを開発した若宮正子さんは、英語が得意でないことをカバーするために、Google翻訳を使いこなして、CNNから取材依頼のメールに対応したエピソードが書かれています。


何より、加齢による記憶力の低下は、AIでカバーできます。

私もずいぶん作業や理解を助けていただいています。

AIを忌み嫌い、悪しざまにののしる人の気持ちは、私には全く理解できません。

それ以外には、よくいわれる「社会と切れないこと」「朝散歩」「指先を使う」「1日5分のぼーっとタイム」「普段しないことを1日1個試す(帰り道を変えるなど)」「1日の終わりに出来事や気持ちを振り返る」などが挙げられています。

読書は、自分が読みたい分野を、少しだけずらしたものをたまに読むこと。

読みやすいものだけでは脳の刺激にならないし、全く関心のないことでは気持ちがついていかないからです。

本書は、実践できることがたくさん書かれているので、機会がありましたらぜひ読まれることをおすすめします。

日常的に、脳に刺激は与えていますか。

60歳からの脳の使い方 (扶桑社新書 540) - 茂木 健一郎
60歳からの脳の使い方 (扶桑社新書 540) – 茂木 健一郎

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