特定のサプリメントは注意が必要

東日本大震災による原発トラブルで、放射性物質の被曝が話題になっている。そして、お約束のように出てくるのが、「××を食べると有毒な○○を排出する」「△△を飲むと免疫力が高まる」といった食べ物信仰の話だ。商品化された健康食品の宣伝ならもちろんのこと、食材を紹介する新聞記事などでも、「薬でないから副作用はない。ダメでモトモトで試してみてはどうか」という書き方をしている。その健康食品や食材が本当に効果があるのかということ以前に、「副作用なし」論にも注意が必要である。
放射線物質対策として、すでに生活情報を読ませる夕刊紙などでは、ビールやコンブなど特定の食品・食材が放射性物質にはいいなどと報じられている。そしておそらくは、これからいろいろな「対策用」の理屈がつけられた健康食品も販売されることだろう。

ところで、健康食品を販売するチラシやサイトには、必ずと断言して良いほどこう宣伝されている。

「この商品は健康食品です。食品ですからいくら服用しても薬のような副作用はありません」

だから、気にせずどんどん買って、どんどん食べてくれというわけだ。

このコピー自体にウソはない。なぜなら、薬事法で薬品とされていないもの、つまり健康食品を含む「食べ物」全般に「副作用」という言葉は使わないからである。

ただし、食材・食品にはそれにかわって「健康被害」という表現がある。もし、健康食品に「健康被害」がないというのなら、それは大変危険な間違いである。いえ、ウソと言ってしまって良いだろう。

まず、食品である以上は、ご飯やおかずと同じように食べ過ぎはよくない。

どのような食品も食品衛生法によって各成分が定められている。たとえば食品添加物なら、ADIという一日に摂取する許容量がある。普通はよほど大量に摂取しない限りその数値は超えないように含有されているが、病気によってはめやすとされている何倍もの摂取を推奨しているものもあり、通常ではあり得ない過剰摂取に達する恐れもある。

そうでなくとも、気になる症状や疾病持ちだと、つい過剰摂取に走る場合がある。

そして、医薬品と違い製品の品質が安定していなかったり、品質が規格化されていなかったりする場合があるため、規格のない粗悪品によるトラブルもあり得る。

また、病気の改善を目的としている場合、業者によっては医薬品との併用を推奨していることがある。それぞれが機能して相乗効果があるというが、健康食品と医薬品は併用することで、治療薬の作用を必要以上に強めたり、反対に阻害したり、逆に病状が悪化したりすることがある。

そのような例はいろいろあるが、たとえば、コエンザイムQ10というサプリメントは、血栓塞栓症の治療に使われるワルファリンの作用を減弱させる可能性があるといわれている。

「血圧が高めの方の特定保健用食品」と高血圧治療薬(ACE阻害薬)と併用すれば、通常治療で期待する以上の降圧作用が生じる可能性がある。カリウム保持性利尿薬スピロノラクトン(アルダクトン)・カリウム製剤と併用することで、血清カリウム値が上昇する危険がある。

食品成分も化学物質ではあるので、化学変化も起こりうるし、薬物同士で起こる化学反応が食品と薬物でもおこる可能性はある。

この場合、いい方向に反応することもないわけではないが、処方した医薬品の期待する効果と異なる結果が生ずることは、治療上必ずしも望ましいことではない。

ある薬を初めて処方したときに、サプリメントの相互作用で効きが良くなってしまったら、本来の処方による効果がわからなくなってしまうため、医師は次回以降の適切な処方ができなくなるからだ。

これだけ長期間、通常より多くの放射性物質が大気中を覆い、海に流されるのは前代未聞の「未知の事態」である。それだけに不安は当然あるが、未知のうえに未知の行為を重ねたら、ますますわからなくなってしまう。

とくに持病があって投薬治療中の人が、特定のサプリメントを服用するのなら、やはり注意が必要ではないだろうか。

ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災 (単行本コミックス)

ストーリー311 あれから3年 漫画で描き残す東日本大震災 (単行本コミックス)

  • 作者: ひうら さとる
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/03/11
  • メディア: コミック