
AI小説の限界を13年前に予見していた『来て!見て!感じて!』(鎌田敏夫、海竜社)
脚本家・鎌田敏夫さんの『来て!見て!感じて!』(海竜社)という書籍を久しぶりにご紹介します。最近、AIを使った小説が発表されたり、文学賞にAIで作ったと思われる作品の応募が殺到したりしていることが話題になっていますが、鎌田敏夫さんは13年も前にその点について答えを出しています。
まず、鎌田敏夫さんについて簡単に触れておくと、『でっかい青春』『飛び出せ!青春』といった青春学園ドラマの脚本で頭角を現し、『俺たちの旅』 『金曜日の妻たちへ』『男女7人夏・秋物語』『ニューヨーク恋物語』など、時代のニーズをすくい上げたようなヒットドラマを次々と世に送り出しました。
「男女七人夏物語」の脚本家、鎌田敏夫は「鶴太郎にラブシーンさせられたから、このドラマは成功すると思った」と語っていた。「あなたにとって俺は男じゃないかもしれないけど、俺にとってあなたは女なんだ」と言い放つシーンが光ったんだって。ドラマにはそんな勝負シーンがあるらしい。 pic.twitter.com/D94dXzC5Vd
— 懐かしい昭和時代(女性) (@natsukashi__) March 23, 2025
最近では、『俺たちの旅』の50年後も執筆しており、新陳代謝の激しい世界で、昭和、平成、令和にわたって現役を貫く、脚本界の中島みゆきのような存在(笑)です。
そして、今日問題にしたいのは、AIで作成した小説です。
AI作品に揺れる文芸界
【驚愕】芥川賞・九段理江さんが会見でChatGPTを使用していたと公表「5%くらい文章そのまま」
生成AIについて、これからも創造性を発揮できるよう、うまく利用していきたい、など述べた。
100%が受賞する未来も?#芥川賞 #東京都同情塔pic.twitter.com/uvdarXXsNb https://t.co/Zsah7GN2ko
— 爆サイ.com PLUS (@bakusai_com) January 18, 2024
第170回芥川賞(2024年)を受賞した九段理江さんが、執筆にあたって「全体の5%ほどに生成AIの文章をそのまま使った」と会見で公表し、国内外で大きなニュースになりました。
だった5%といえばそれまでですが、カミングアウトしたこと自体が大胆な告白でした。
また、SF作家・星新一の名を冠する星新一賞は、いち早く「人間以外(人工知能など)の応募」を公式に認めています。
2022年にはAIと共同制作された作品が優秀賞を受賞しており、その後もAIを活用した応募作品の割合は増え続けています。
そのような時代のため、昨今の文藝賞には、AI作品の応募が殺到しているという話です。
AI使用疑惑の小説、選外に 高評価のヒット作―仏文学賞https://t.co/Hkfoimg3EC…
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) September 26, 2026
賞によっては、AI作品を受け付けない場合もあるそうです。
が、AIは勝手に作品を作っているわけではなく、もとになっているモチーフとか基本的なストーリー展開など、なにがしかの指示文はその著者が出しているわけですから、AIの代作ではあっても、著者本人が無関与な作品とはいえないので、AIだからただちに無効というのも議論があると思います。
何となれば、そもそもAIか著者の手作業かなどというのは、完全に見分けることは不可能だからです。
たとえば、「空は青い」「1+1=2」なんていうのは、人間でもAIでも表現できることで、どちらかに独自性があるわけではありません。
そんなやっかいな現代的問題に、13年も前に答えを出していたのが、鎌田敏夫さんの『来て!見て!感じて!』(鎌田敏夫、海竜社)の一節です。
AIが探れない「無意識」を捕まえるのが作家の仕事
鎌田敏夫さんは13年前、「来て!見て!感じて!」という自著の中で、「視聴率」についてこう述べています。
「意識調査なんてものが流行ったことがあって、三十代女性の生活形態とか、好きな俳優とかを調査して、それを元にしてドラマを作っていたことがありましたが、それで当たったという話は聞きませんでした。作り手が探っていかなければいけないのは、意識調査などでは上がってこない無意識の世界なのです。」
アンケートなどの「意識調査」データに頼るのではなく、調査結果には表れない「無意識の世界」をつかまえることこそが、ドラマ作りにおいて重要であると述べられています。
この書籍が上梓されたのは2013年で、AIはない時代でしたが、実はAI時代のこんにちを予見した言葉でもあります。
文芸作品は、AIが得意とする、既知のものをアレンジしたり既知から考察したりすることだけでなく、「無意識」を探るという泥臭い仕事は避けて通れないように思います。
私は、冒頭の芥川賞の小説を読んだことはなく、また「5%」がどういう場面で使われているかもわからないので、その作品に対する批評は出来ません。
が、どんな作品であれ、衆生の「無意識」を探るという「攻める作風」でない限り、決して「たしかにその時代をあらわしていた」と、後世に語り継がれる作品にはなり得ないように思います。
人が本当に心動かされるのは、データ化された「こうすれば受けるはず」という表層ではなく、言葉になっていない欲望、矛盾した感情、無様さといった数値化できない「無意識の世界」に触れた時です。
その泥臭くて混沌とした領域を探り当てるのは、身体と感情を持った人間にしかできない孤独な作業なのです。
AIは「依存」するものではなく「使役」するもの
と書くと、AIから逃げている方は、「だからAIなんて関わっちゃだめなんだよなあ」と、ホッと胸をなでおろすところかもしれませかが、決してそういう意味ではありませんからね(笑)
今回、鎌田さんの本をご紹介したのは、たまたま鎌田敏夫作品を調べていたためですが、私はそのことで毎日、ChatGTPやGeminiと「壁打ち」を行っています。
「壁打ち」とは、自分の考えやアイデアをAIに話して、意見やフィードバックをもらい、思考を整理・発展させる行為のことです。
調べ物や情報の整理、あるいは「よくあるパターン」の確認といったアシスタント業務をAIに任せることで、自分自身の脳と時間を、人間にしか潜れない「無意識の探求」という本来のクリエイティブな仕事にフルコミットさせることができるのです。
それは、AIに依存しているのではなく、AIを「使役」している状態です。
どんな立場の方であっても、AIを「使役」することで、判断が効率的になり、時間や心に余裕を作ることが出来ます。
要は、AIの使い方は間違えないようにすることが、本人にとっても、AIを活かすためにも大切だということです。
AIによる作品づくりに興味はありますか。


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