民子三部作ってご存知ですか。11月のNHK BSシネマで山田洋次監督の「民子三部作」(『家族』『故郷』『遥かなる山の呼び声』)が放送されることが発表されて話題になっています。いずれも倍賞千恵子が妻/嫁で民子で登場するからそう呼ばれています。
ただまあ、実際には便宜上そう呼ばれ、その三作がひとつのシリーズというわけではありません。
映画の内容では、『家族』と『故郷』では井川比佐志が夫役で登場し、愛着のある故郷を去って新天地を求める夫に従うというストーリーです。
そして、『遙かなる山の呼び声』と『幸福の黄色いハンカチ』は高倉健が夫役で登場。
故郷を去った流れ者/前科者の男が帰ってくるのを待ち続ける妻、というテーマで共通である。
したがって、内容的には、三部作というよりは、『家族』と『故郷』、『遙かなる山の呼び声』と『幸福の黄色いハンカチ』で一括りとなるわけです。
『故郷』は、瀬戸内海の島で砂利運搬船を経営でやはり食い詰めて、島を去っていく夫婦の姿が海の情景とともに描かれます。
高度経済成長で置き去りにされた市井の人々、という描き方かもしれませんが、一方で無茶な新天地狙いに無批判についていく妻、というのは何とも封建的、古典的です。
とくに、『家族』は見ていて辛かったですね。
赤ん坊と笠智衆が旅の疲れで死んでしまうのですが、そこまでして移住する必要があるのか、高度経済成長の犠牲者のような描き方ですが、結局ただのヤマ師ではないのか、という思いが残りました。
田舎で仕事がないのなら、東京で腰を落ち着ければいいわけですし、真夏に移動の途中に万博まで寄ってなんて、赤ん坊のいる親としたら考えられない沙汰です。
それでクリスチャンだからといって、ラストでまた子供作ってるんですが、えーっ、それで亡くなった子供の代わりになるの?なんて思いました。
いや別に映画のストーリーに腹立てても仕方ないのですが、やむにやまれぬ事情で、その場所を立ち去らなければならないことはありますけどね。
それとも、私も裕福ではないけれど一応東京で暮らしていたので、地方で食い詰めた人の心境がわからないだけかもしれませんが。
倍賞千恵子の評価
倍賞千恵子ほど充実した女優人生を送っている人は早々はおらず、しかも日本映画黄金期が遥か過去になってからの活躍期間が長いことも考えると「驚異の女優」の一人という評価があります。
これはやはり、山田洋次監督のもとでやっていたことも大きいとおもいます。
同じ松竹でも、なぜか倍賞美津子はあまり山田洋次監督とは相性が良くないようで、松竹と契約しているときも「山田系」の森崎東監督はあるのですが、『男はつらいよ』はマドンナどころか出演自体がありませんでした。
山田洋次監督は他作品もなかったような気がします。
香山美子のように、マドンナではないけど出ている場合もあるし、岩下志麻のように、馬鹿シリーズでやっている場合もあるので、阿久悠と山口百恵の関係をつい思い出してしまいましたが、倍賞美津子は決して山口百恵のように負の執念は強くないと思いますので、山田洋次監督が呼ばなかっただけだとおもいます。
太地喜和子も、寅さんと決着をつけないままそれっきりでしたし、好き嫌いはあるんでしょうね。
島田陽子も松竹でしたが、ついにお呼びがかからなかったですね。
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