安倍元首相銃撃事件の初公判が話題になっています。カルト的な勧誘はどこにあるかわかりません。たとえば「偽装勧誘」といって……

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安倍元首相銃撃事件の初公判が話題になっています。カルト的な勧誘はどこにあるかわかりません。たとえば「偽装勧誘」といって……

安倍元首相銃撃事件の初公判が話題になっています。「教団に翻弄された人生であると強く思うようになった。復讐心から、打撃を与えるために犯行を決めた」と被告人は述べています。カルト的な勧誘は、どこにあるかわかりません。今日はそのことについて書いてみます。

世の中には、カルト教団と呼ばれる団体があります。

今回問題になっている統一協会や、旧オウム真理教などがそうです。

統一協会については、1997年に、いわゆる「青春を返せ裁判」で、壺や清涼飲料水などを買わせる経済的な手法だけでなく、勧誘と洗脳方法(マインドコントロール)も違法という画期的な判決が出ました。

勧誘は何が問題かというと、正体を隠して会合に誘い込み、オルグする動画や討論に参加させ入信させてしまうことです。

私が現役の学部生だった1980年代、新学期の大学のキャンパスでは、部やサークルのメンバー勧誘が新入生対象に行われるのですが、カルト教団が大学のサークルのふりをしてそこに紛れ込み、新入生を囲い込みます。

そこでは、「統一協会」とは名乗らず、「宗教による世界平和を考える会」とか、「社会研究サークル」とか、前途洋々のピュアな青年の真面目な心をくすぐるサークル名を名乗ります。

さすがに最近は、大学側も警戒し、また手法が明らかになったことで、こうした「偽装勧誘」はむずかしくなっているともいわれていました。

にもかかわらず、未だに堂々と「偽装勧誘」が行われている団体があるというのですから驚きです。

この動画によると、区の施設を使い、本当の団体名を名乗らない「偽装勧誘」の催しを行い、区も見て見ぬふりをしているというのです。

それは「噂」ではなく、藤倉善郎さんというカルト宗教問題のライターが、実際に潜入した体験報告動画です。

では、その団体名はなんというのか。

浄土真宗親鸞会といいます。

YouTubeから誘う方法もある

浄土真宗親鸞会といえば、会のメンバーが少なくとも4名、YouTubeチャンネルを開設しています。

そのうちの一人、菊谷隆太さんは、チャンネル登録者数30万に到達した人気チャンネルです。

最近は、メンバーシップ配信を介して、浄土真宗親鸞会の行事へのお誘いをしているようです。

浄土真宗親鸞会は、会費も高く(入会金50000円、月会費5000円)、講演会のたびに別料金が取られるようです。

ただ、浄土真宗親鸞会のむずかしいところは、「浄土真宗」という、日本の仏教でもっともポピュラーな宗門名を名乗っているため、新興宗教ではないだろう、ましてやカルト教団のわけないだろうと、疑いを抱かれにくいことです。

同会は、高森顕徹(たかもりけんてつ)さんという親鸞ファンが、親鸞の著書について独自の解釈を行う究会を立ち上げたのが始まりで、高森さんご自身は、龍谷大学という浄土真宗の宗門系大学を卒業しています。

ですから、旧オウム真理教の教祖なんかとは違い、たしかに仏教教育は受けている方です。

しかし、浄土真宗親鸞会は、伝統的な真宗各派(いわゆる真宗十派)から距離を置かれ、時に強い批判を受けています

つまり、宗教法人浄土真宗という宗門からは、正当な宗派としても研究会としても認められていません。

理由の一つは、上記の「偽装勧誘」のような、カルト教団的側面があることです。

脱会者の暴露本もいくつか出ています。

もうひとつの理由は、会の教えはあくまて高森さん個人の解釈であるため、浄土真宗の教えとは、学問的、信仰的に異なる点が多々あることです。

たとえば、浄土真宗は他力本願を標榜していますが、浄土真宗親鸞会は「他力を説きながら、実質は自力を要求している」と批判されており、親鸞聖人の「自力をすてて他力に帰す」という根本的な教え(特に『教行信証』の「行巻」の解釈)に反すると見なされています。(Geminiより)

学ぶならべつの方法もある

上記のYouTuber・菊谷隆太さんは、愛知県出身のサラリーマンの子弟だそうです。

左利きですが、印刷物のようなきれいな文字を書かれる方で、物腰も、ああ、教育熱心な家庭で、グレることもなく真面目に育ったんだろうな、ということが伺えます。

その菊谷さんは、早稲田大学に入学したものの、浄土真宗親鸞会の活動に忙しかったのか、中退してしまいます。

浄土真宗親鸞会は、大学中退の方が多いのですが、偽装勧誘で入会して、会の活動に忙しくなってやめてしまうのかもしれません。

菊谷さんは、YouTubeチャンネルも大きくなり、それはそれで何よりでしょうが、少なくない人は、大学を中退してまで会の活動を行ったにもかかわらず、何らかの理由で脱会しています。

大学も、信仰も、ライフワークも失い、一から人生設計をたてなおさなければなりません。

そりゃ、「青春を返せ」と言いたくなるでしょうね。

本当に仏教を学びたいのなら、大学のインド哲学や宗門系大学の仏教学部に、入り直すなり転部するなりすればいいのに惜しいよな、と思います。

いや、学歴だけの問題ではないんです。

大学で、学問として研究を続ければ、ひとつの通説に対して、様々な見解や議論が何年にも渡って繰り広げられている「学問の奥の深さ」を知り、仏教に対してもより深い理解ができたはずです。

浄土真宗親鸞会に入っても、高森顕徹という人の特定の個人の説を胸に落とすだけで、それ以外はむしろ否定されてしまいますからね。それでは学問的な理解など到底できません。

繰り返しますが、高森さんの説は、必ずしも全否定はできません。部分的には勉強になることもあります。

しかし、やはり全体としてはどうなのかな?という疑問を抱かざるを得ないのが正直なところです。

ということで、このことに限らず、人気YouTuberの背景には何があるかわからないので、メンバーシップ加入などは、十分お気をつけください、という話です。

さよなら親鸞会 脱会から再び念仏に出遇うまで(特別版) サンガ伝道叢書 - 瓜生 崇
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