
現代の日本では、成人の3人に1人が脂肪肝という深刻な状況が続いています。肝臓専門医の尾形哲先生(長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長)が、これまでテレビでは言えなかった脂肪肝の真の原因と対策について詳しく解説されています。
驚きの事実:お酒を飲まない人も脂肪肝になる
従来、肝臓病といえば「飲酒」と「肥満」が主な原因とされてきました。しかし、現在では脂肪肝患者の3分の1が、お酒を飲まない人であることが明らかになっています。さらに、BMI25以下の痩せた人でも脂肪肝になるケースが急増しています。
以前はC型肝炎ウイルスが肝臓病の原因の9割を占めていましたが、現在ではその半分が脂肪肝から肝硬変へと進行しています。
肝臓の重要な役割
肝臓は、体内で様々な重要な働きを担う臓器です。主な働きは、栄養素の分解・合成・貯蔵、有害物質の解毒、そして胆汁の生成・分泌です。これらを通じて、生命活動を支える重要な役割を果たしています。
肝臓は体重の約2%を占める人体最大の臓器です。その主な機能は以下の3つです:
- 代謝機能:栄養素を体に必要な形に変換する
- 解毒機能:アルコールや有害物質を無毒化する
- 免疫機能:体内の食細胞の8割が肝臓に存在し、細菌やウイルスと戦う
それ以外にも、古い赤血球を壊す、血液凝固に必要な物質を生成する、 コレステロールの代謝に関わる、などのはたらきをします。
肝臓は「体内化学工場」とも呼ばれ、多岐にわたる化学反応を担っています。これらの働きが正常に行われることで、健康な体を維持することができます。
肝臓を壊す「最大の毒」の正体
甘いドリンク(加糖飲料)が最大の敵
尾形先生によると、肝臓にとって最大の毒は**甘いドリンク(加糖飲料)**です。これには以下が含まれます:
- オレンジジュース(果汁100%も含む)
- 濃縮還元ジュース
- 野菜ジュース(甘味のあるもの)
- エナジードリンク
- スポーツドリンク
- 清涼飲料水全般
なぜ液体が危険なのか
同じ果物でも、生の果物は問題ないが、ジュースになると肝臓に悪影響を与えます。その理由は「単位時間あたりの糖の吸収スピード」の違いにあります。
生の果物の場合:
- ゆっくりと少量ずつ摂取
- 果糖の最大9割が小腸でブドウ糖に変換される
- 肝臓への負担が少ない
ジュースの場合:
- 短時間で大量摂取(コップ1杯=みかん6〜7個分を1分で摂取)
- 吸収スピードが速すぎて酵素の働きが追いつかない
- 果糖がそのまま肝臓を直接攻撃
脂肪肝の進行過程
脂肪肝は以下の段階で進行します:
- 脂肪肝:肝細胞に脂肪滴が蓄積
- 脂肪肝炎:肝臓が壊れ始める(多くは無症状)
- 肝硬変:肝臓が線維化し硬くなる
- 肝癌:最終段階
重要なのは、脂肪肝炎の段階では自覚症状がほとんどないことです。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少のダメージを受けても症状が現れにくい臓器です。そのため、脂肪肝炎が進行して肝硬変や肝臓癌になるまで、自覚症状がないまま経過することがあります。
脂肪肝の改善方法
基本の5つの対策
- 甘いドリンクを完全に避ける
- 体重を7%減らす(70kgの人なら5kg減)
- 食生活の見直し
- ご飯を半分に(0にしない)
- 野菜を2倍に(食物繊維を増やす)
- タンパク質を適切に摂取(1食20g目安)
- 加工食品を控える(多くに果糖ブドウ糖液糖が含まれる)
- 運動を取り入れる(筋トレを1日10分以上)
肝臓をいたわる7つの習慣
- 1日1回体重を記録する
- 飲み物は水・お茶・ブラックコーヒーのみ
- ご飯半分・野菜2倍
- タンパク質を1食20g摂取
- 加工食品を減らす
- 筋トレを1日10分以上
- 生活習慣の継続
年齢と脂肪肝の関係
- 男性:30代から脂肪肝の割合が急増
- 女性:40代後半(更年期)から急増
- 女性ホルモン(エストロゲン)が脂肪肝を防ぐ効果があるため
希望のメッセージ
肝臓は最も再生能力が高い臓器です。正常な肝臓であれば、70%を切除しても3ヶ月で元の大きさに再生します。
脂肪肝は生活習慣の改善により、20代の頃のような健康な肝臓に戻すことが可能です。年齢に関係なく、適切な対策を取れば肝臓を若返らせることができます。
なぜテレビでは言えなかったのか
尾形先生によると、テレビや新聞、雑誌の広告主に飲料メーカーが多いため、これまでこの情報は「クライアントタブー」として扱われてきました。しかし、WHOも正式に「加糖飲料は肥満・脂肪肝・糖尿病の増加に明確に関与している」と発表しており、医学的には常識となっています。
まとめ
脂肪肝は単なる生活習慣病ではなく、糖尿病や心血管疾患、癌といった他の病気の「上流」にある重要な疾患です。甘いドリンクを避け、適切な食事と運動を心がけることで、肝臓を健康な状態に戻すことができます。
健康診断で肝機能の数値(AST・ALT)が気になる方は、まずは甘いドリンクを控えることから始めてみてください。肝臓の健康を守ることは、全身の健康を守ることにつながります。



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