ホーロー製のなべ、やかんなどには「赤さび」が出ることがあるが、「さび」は酸化という心配がある。それが人体に危険かどうか調べてみた。アルミニウムとアルツハイマー病の関係はしばしば取り沙汰されるし、はっきりさせておいたほうがいいだろう。
ホーロー製のなべややかんには「赤さび」が出ることがあるが、それが危険かどうか。
我が家のやかんやなべはアルミニウムを全く使っていないホーロー製品である。
きっかけは、巷間いわれているアルミニウムとアルツハイマー病の関係を心配してのことだった。
「さび」は酸化という心配
アルミニウムとアルツハイマー病の関係はしばしば取り沙汰される。
しかし、スケプティクスに考えるとその因果関係を決定づける証拠はなく、科学者の間でも、それを本気で心配するのはごく少数でしかないことを確認した。
しかし、せっかく購入したものだから、ホーロー製品についてはずっと使っている。
汚れが取れやすく、煮物やオーブン料理に便利だからである。
ところが、長い間使ったから仕方ないのだろうが、最近、ホーロー製やかんの底が錆(さ)びていることに気付いた。
あるとき、お湯を沸かそうと、やかんに水を入れるためにほんの少し残っている中の古い水を捨てると、錆びの赤茶色をしているように見えたことからそれが発覚したのだ。
錆びに対して、いい印象などあるはずはない。
鉄が酸化したものが錆びだということぐらい私にもわかる。
その「酸化」というものが問題なのだ。
ナントカ還元水が流行する現代では、「酸化」という言葉は不健康の代名詞である。
活性酸素で傷んだとされる人間の細胞は、しばしば錆び(る)という表現が使われ、それが病気のものとになるとされる。
家庭用浄水器は、塩素・トリハロメタン以外のものも取り除く機能を最近は当たり前のようにもっているが、その中には農薬とともに水道管の「赤さび」除去もうたわれている。健康に悪いから除去するのだと、普通は思うだろう。
また、錆びた釘を踏んづけて破傷風菌に侵されたという話もイメージ的に気持ちのいいものではない。
医学・医療が進み、衛生的にはむしろ無菌志向が心配される現代でも、40~50人がかかるといわれているしぶとい菌だ。
我が家では、そんな錆びをゴクゴク飲んでいたのだ。
一見、これは大変なこと、である。
事実、一部のサイトでは、錆びによる「赤水」を危険なものと断定するところもある。
そこで、メーカーや科学者等に確認したが、結論は「深刻な問題ではない」とのことだった。
赤さびの正体は酸化鉄ではなく酸化水酸化鉄
化学的に言うと、いわゆる鉄の赤さびの主成分は、よくいわれるFe2O3(酸化鉄)ではなく、酸化水酸化鉄(III)FeO(OH)(オキシ水酸化鉄)である。
水道管の赤水も同じもので、マンションなど貯水槽を使っている場合は、我が家のやかんなどよりも桁違いに高濃度の「赤さび水」を飲んでいる可能性がある。
鉄自体は、改めて述べるまでもなく人間に必要な元素である。問題は、それが酸化したものでもいいのか、ということだが、酸化したものなど、この世の中にはたくさんある。
たとえば、酸化鉄は、「黄酸化鉄」といわれる「赤さび」も含め、ファンデーションやアイシャドウなど化粧品の着色顔料として長きにわたって使われている。
深刻な毒性があれば、それはあり得ないだろう。
なお、破傷風は土中の菌であり、赤錆びとは直接関係がない。
しかし、やはり錆び自体は気持ちのいいものではない。
ホーロー製品が鉄を使う以上、錆びと縁を切れないのだろうか。
ホーロー製品のメーカーであるガイタイナージャパンにお尋ねすると、次のような回答をいただいた。
「ホーロー製品の錆びは防ぎようがなく、進行も止められません。サビを食べてしまったからと言って、病気になると言う事はありませんが、良くお使いになるのでしたら、長い間愛着をもたれてお使いになってこられたものでしょうが、錆びに強い仕様になっている製品をお求めになるようお勧めします。最近、今までにはなかった、ホーロー鍋やフライパン本体に直接クローム鍍金することができるようになりました。この技術のおかげで、サビに一番大敵な水の浸透を防ぐ事ができるようになります。
あとは傷をつけないようにお手入れすることで、これまで以上に長くお使いいただけるホーロー製品になるわけです」(お客様相談室)
やはり、ホーロー製品は傷をつけない予防の段階が大事であり、いったん傷ついたものについて錆を食い止めることは難しいようだ。
ホーロー製品に見られる「赤さび」の結論
ホーロー製品に見られる「赤さび」と呼ばれる現象は、ホーローの表面に発生する微細な傷やキズなどに鉄が露出し、錆びが発生した状態だ。
赤さびは見た目が悪く、また、食材の色を変化させる可能性があるため、衛生上の問題も心配されますが、一般的には体に毒性はない。
ホーローは、釉薬と呼ばれる鉄と珪酸などからなる混合物でコーティングされているため、食材と直接接触しても安全である。
ただし、ホーロー製品に傷がつくと、その部分に鉄が露出してしまい、さびが発生する可能性がある。
そのため、赤さびが発生した場合は、使用を控え、できるだけ早く交換することが望ましい。
また、ホーロー製品を製造する際に使用される釉薬には、鉛やカドミウムなどの有害物質が含まれている場合がある。
したがって、ホーロー製品を選ぶ際には、安全基準をクリアしたものを選ぶことが重要だ。
また、ホーロー製品を長期間使用する場合は、定期的に傷やキズの確認を行い、赤さびが発生していないかを確認することが求められる。
……ということで、いろいろ考えた末、我が家ではステンレス製のやかんを新たに購入することにした。
熱伝導は一般にアルミの方がステンレスを上回るといわれているが、同時に熱に弱いのもアルミである。
ホーロー製品に絶望したわけではないが、「予防」に気を使うことを考慮し、総合的に判断した。
なべなら、「汚れが取れやすい」というホーローの特徴は重要なことだが、お湯を沸かすだけのやかんなら、そこにこだわることもないとも考えたのだ。
それにしても、錆びのおかげで、錆びそのものだけでなく、普段考えたこともない材質(アルミ、ステンレス、ホーロー)の違いまで勉強させてもらった。
以上、ホーローの錆びが気になる方は、参考にしていただければ幸甚である。
◆化学の広場(fchem)
http://fchem.folomy.jp/
◆ガイタイナージャパン
調理器具といえば水がつきものだが、水道水の安全性については、『健康情報・本当の話』(草野直樹著、楽工社)に詳しい。
以上、ホーロー製のなべ、やかんなどには「赤さび」が出ることがあるが、「さび」は酸化という心配がある。それが人体に危険かどうか、でした。
コメント