外国人が増えたことで治安が悪くなったかどうかが論争になっています。外国人の犯罪数の方が多いという統計はないといいますが……

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外国人が増えたことで治安が悪くなったかどうかが論争になっています。外国人の犯罪数の方が多いという明らかな統計はないそうですが、逮捕や検挙の理由はどうでしょうか

外国人が増えたことで治安が悪くなったかどうかが論争になっています。外国人の犯罪数の方が多いという明らかな統計はないそうですが、逮捕や検挙の理由はどうでしょうか。

たとえば、寺院仏閣にいたずら書きをしたり、交通法規を守らない事故を起こしたり、過失致死ではなく強盗殺人だったり、といったところで外国人と日本人の比較はなされているでしょうか。

外国人が増えたことと治安悪化の関係については、様々な議論があり、統計だけでは一概に判断できない複雑な問題です。

結論から述べると、外国人による犯罪数全体が日本人より明らかに多いという統計は確認できません。しかし、逮捕や検挙の理由や、特定の犯罪類型においては、日本人と外国人との間で特徴の違いが見られることがあります。

逮捕・検挙の理由や傾向について

  • 共犯事件の割合が高い: 警察庁のデータによると、来日外国人による刑法犯の検挙件数に占める共犯事件の割合は、日本人と比較して高い傾向にあります。特に万引きなどで顕著であり、組織的に敢行される傾向がうかがえます。これは、外国人犯罪組織による犯行や、SNSなどを通じた見知らぬ外国人同士での犯行連携が見られるためと考えられます。
  • 逃亡の可能性が高いと見なされやすい: 外国人が被疑者となった場合、日本の安定した生活基盤がない、あるいは母国へ逃亡する可能性があると見なされやすく、逮捕や勾留といった身体拘束が認められやすい傾向にあるという指摘もあります。これは実際の逃亡率が高いという統計があるわけではなく、一部の検察官や裁判官がそのような判断をしがちであるという見解です。
  • 在留資格の問題: 日本人にはない、在留資格の有無やその取消し、退去強制といった問題が、外国人の刑事事件には付随してきます。

特定の犯罪類型における比較

寺院仏閣へのいたずら書き(器物損壊)、交通法規違反による事故、強盗殺人といった個別の犯罪類型について、外国人と日本人の逮捕・検挙の理由や件数を詳細に比較した具体的な統計データは、公開されている犯罪白書や警察庁の資料からは、残念ながら詳細な形では見つけにくいのが現状です。

しかし、以下のような傾向は示唆されています。

  • 器物損壊: 上記の共犯率の高さや組織的犯行の傾向が、一部の器物損壊事件にも当てはまる可能性はあります。ただし、特定の文化財へのいたずら書きが外国人によるものに偏っているといった明確なデータは確認できません。
  • 交通事故: 交通法規違反は国籍に関わらず発生し得るため、外国人が特段多いという明確な統計は見られません。ただし、日本語での交通標識の理解不足や、日本の交通習慣に不慣れなことが影響するケースは考えられます。
  • 強盗殺人: 強盗殺人といった凶悪犯罪は、全体数が少ないため、日本人と外国人との比較で統計的に有意な差が出にくい可能性があります。個々の事件の背景には様々な要因があり、国籍だけで単純に判断することはできません。

総じて

「外国人が増えたことで治安が悪くなったか」という問いに対しては、単純に「はい」とも「いいえ」とも言えないのが実情です。

  • 外国人による刑法犯の検挙件数は、ピーク時と比較すると減少傾向にあり、在留外国人の増加とは必ずしも比例していないというデータも存在します。
  • 一方で、外国人による犯罪には、日本人とは異なる特徴(例:共犯率の高さ、組織性、犯罪インフラの利用など)が見られることは指摘されています。

治安の問題は、犯罪統計だけでなく、地域のコミュニティのあり方、外国人住民への支援体制、文化的な摩擦など、多角的な視点から考える必要があります。

外国人犯罪に関する統計の解釈には、不起訴処分の傾向や統計上の定義範囲が大きく影響しており、重要な論点です。

外国人犯罪における不起訴処分の傾向

「外国人犯罪は不起訴が多い」というご指摘は、特に起訴猶予処分の割合において、統計的な傾向として見られます。

法務省のデータによると、来日外国人事件における起訴猶予率は44.3%となっており、これに対し、日本人に係る事件の起訴猶予率は30.9%です 1。この数値は、来日外国人の方が日本人よりも起訴猶予となる割合が高いことを示しています。起訴猶予とは、犯罪の嫌疑は認められるものの、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の状況などを考慮して、検察官が起訴を見送る処分を指します。

この起訴猶予率の差が生じる背景には、以下のような事案の実態の違いが考えられています 1

  • 暴力団勢力等との関係が低い: 来日外国人事件では、暴力団勢力等との関係がある者の占める比率が日本人事件に比べて低い傾向にあります。
  • 飲酒事案の比率が低い: 被疑者が飲酒していた事案の比率も、日本人事件より低いとされています。
  • 被害者の抵抗がある事案の比率が高い: 一方で、被害者の抵抗がある事案の比率は高くなっています。
  • 傷害の程度が軽微な事案が多い: 傷害事件の場合、1週間以下の軽微な傷害の事案が約3分の1を占めるなど、比較的軽微な犯罪が多い傾向が見られます。

ただし、起訴された事件のうち、公判請求(正式裁判を求めること)される比率は、来日外国人事件の方が日本人事件よりも高くなっている側面もあります 1。これは、起訴猶予とならない比較的重い事案については、正式な裁判で審理される傾向があることを示唆しています。

統計上の「外国人」の定義と批判について

警察庁が公表する犯罪統計における「外国人」の定義には、特定のカテゴリーが含まれていないという批判があります。

警察庁の統計における「来日外国人」とは、「我が国にいる外国人のうち、いわゆる定着居住者(永住権を有する者等)、在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者」を指します 2

この定義により、以下のカテゴリーは「来日外国人」の統計には含まれません。

  • 永住者
  • 永住者の配偶者等
  • 特別永住者
  • 在留資格不明の者(非正規滞在者を含む可能性)
  • 在日米軍関係者

つまり、警察庁の「来日外国人」に関する統計は、日本に比較的安定して居住している永住者や特別永住者、あるいは在留資格が不明な人々(不法滞在者など)による犯罪を含んでいません。これは、統計が主に短期滞在者や技能実習生、留学生など、比較的流動性の高い在留資格を持つ外国人による犯罪動向を捉えていることを意味します。

この定義は、日本の社会に定着している外国人による犯罪の実態を完全に反映しているわけではないという批判の根拠となります。治安議論においては、この統計上の定義の限界を理解し、どの範囲の「外国人」の犯罪について語られているのかを明確にすることが重要です。

まとめ

外国人犯罪に関する議論は、単に件数の増減だけでなく、その質的側面や統計の定義を深く理解することで、より客観的かつ多角的に捉えることができます。

  • 不起訴処分: 来日外国人事件では、日本人事件に比べて起訴猶予となる割合が高い傾向にありますが、これは犯罪の性質や背景に違いがあるためと考えられます。
  • 統計の定義: 警察庁の「来日外国人」統計は、永住者や特別永住者、在留資格不明者など、一部のカテゴリーを除外しているため、日本の全外国人による犯罪を網羅しているわけではない点に留意が必要です。

これらの点を踏まえることで、外国人増加と治安の関係性について、より nuanced な議論が可能になります。

外国人包囲網: 「治安悪化」のスケープゴート (GENJINブックレット 44) - 外国人差別ウォッチ ネットワーク
外国人包囲網: 「治安悪化」のスケープゴート (GENJINブックレット 44) – 外国人差別ウォッチ ネットワーク

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