猪狩ともかさん(仮面女子およびスチームガールズ)が、「まずは感謝の気持ちが大事」と伊是名夏子さんを批判しています。すると、Twitterでは「事前連絡、お願い、感謝するのが当たり前」という反論も、私もニュアンスは違いますが「感謝しろ」論には反対です。
猪狩ともかさんの批判に叩く側が大喜び
伊是名夏子さん騒動は、以前書いたとおりです。
旅行で静岡県内の無人駅に行こうとして、JR東日本駅員とトラブルになったとブログに書き、様々な意見が寄せられていると話題です。
その多くは、彼女の計画のずさんさとともに、彼女の人格攻撃で一貫しており、トラブルの原因となったことに目は向けられてない不毛なものです。
残念ながら、それは苦労知らずの健常者だけでなく、障碍者の一部にもあります。
仮面女子なるグループの、猪狩ともかという中途障碍者が、「まずは感謝の気持ちが大事」と述べたことが、彼女を叩く側を大いに力づけています。
「不便なことや困ったことがあっても、まずは対応してくれたことに対する感謝の気持ちが大事」と自身の考えを明かしました。
これが、まとめサイトです。
【芸能】「仮面女子」猪狩ともか、車いす乗車拒否騒動に「まずは感謝の気持ちが大事」と持論 猛バッシングに苦言も [砂漠のマスカレード★]
https://t.co/iJtvnwwkIh pic.twitter.com/Z0R3rlMxgi— 畠中由宇・相互フォロー100% (@hata_follow) April 11, 2021
一般論として述べているように見えますが、とうぜん、伊是名夏子さん叩く側はその部分を切り取って大喜びしますから、その言葉を発した責任は免れないと思います。
後に書きますが、感謝は強制でも、なにかするときの条件でもありません。
感謝を「社会のルール」であるかのようにして、人を批判するロジックは断固反対します。
猪狩ともかさんは芸能人なので、あまり踏み込んだことは書けないし、また中途障害の原因をファンは知っていますから、周囲には暖かくしてもらえるので、そういう話になるのです。
しかし、一般のほとんどの車椅子障碍者は、そんな綺麗事を言える立場ではありません。
社会や周囲をうらむことでしか辻褄の合わない不条理な人生を送っているのです。
伊是名夏子さんがどんな人生を送ってきたかも知らないくせに、人格批判をするのは残念ですね。
案の定、別の車椅子障碍者からは、180度異なるツイートが行われて、これも話題になっています。
かわさきりょうた @Ryota_1120
怒りが全くおさまらない。
その怒りはJRでも自由に移動ができない環境にでもない。
感謝をするのが当たり前、事前連絡をするのが当たり前、配慮が必要な側が自らお願いするのは当たり前、これらの言説をこともなげに障害当事者に突きつけてくる優生思想丸出しの人たちにだ。
まあ、こうツイートしたところで、苦労知らずの健常者に伝わるはずはなく、燃料投下です。
まとめサイトです。
【車イス男性】事前連絡、お願い、感謝するのが当たり前。この言説を障害当事者に突きつける優生思想丸出しの人達に怒りが収まらない★2 [potato★]
https://t.co/c5UFtuxjSG pic.twitter.com/rdTxVop46t— 畠中由宇・相互フォロー100% (@hata_follow) April 11, 2021
みなさんは、いかが思われますか。
大切な本質をズラした人格攻撃
まず、騒動のそもそも論から見直しますよ。
もとになる情報は、ジャーナリストが書いているわけでもなく、TVカメラが回っているわけでもなく、伊是名夏子さんの個人ブログで、彼女が経験したことを彼女の言い分で書いているに過ぎない作文です。
つまり、極端に言えば、車椅子の不自由さを描くために、彼女が一部、もしくは全部創作したものかもしれないんですよ。
いや、本人はそのつもりでなくても、バイアスがかかることってあるでしょう。
かりにすべて真実だったとしましょう。
だとしても、いや、だとしたらいよいよ、この件は彼女とJR職員のやりとりの話で、第三者の一般国民は誰も何も支障がない話です。
なのに、なんでそんなにアツくなって叩けるのか。
彼女の人格批判をしたいのは、「障碍者のくせに……」という健常者の思い上がったマウンティングであり、木村花さん事件を、何も反省していないということです。
伊是名夏子さんに同情できないという意見は、障碍者の側からも出ていますが、論点ずれてるでしょう。
彼女の言い分に同情しなくてもいいし、彼女が好きでなくても良いのです。
それはどうでもいいのです。
だって、彼女を好きか嫌いか、支持できるかできないか、という話が本質ですか。
そうではないでしょう。
事前に予約すべきだとかハチノアタマとか、彼女の至らなさを指摘するのも間違いではありません。
ただ、それらはいずれも、「彼女とJRの個人的なやり取り」を前提としたものであり、国民的議論をするようなものではありません。
真に公益的客観的な問題ってなんですか。
バリアフリー法があるのに、エレベーターのない駅があったという事実でしょう。
これはもう、全国民的に由々しき話でしょう。
何も障碍者手帳持ちだけじゃなくても、高齢者や妊婦、ベビーカー、バギーの人にとっても、バリアフリーが広がると良いですよね。
それが、全国民的な利益になる結論です。
そこが、問題解決の本質です。
にもかかわらず、そういう問題を後景に退けて、彼女の悪口のほうを優先している連中は、たぶん問題解決能力もなく、不平不満や悪口ばかり一人前の人間だと思います。
だめな奴ほど悪口が好きなのです。
だめな人間と関わると、自分の運気も落ちますから、ビジネスではもちろん、プライベートでも付き合いたいとは思わないですね。
「感謝」は人の関係に上下を作る
この感謝ってのが曲者です。
- 飯を食うときは、手を合わせて感謝してから食え。
- 親や先祖があって自分があるから、生んでくれたことを感謝しろ。
- 障碍者は社会に迷惑をかけているから感謝して当たり前。
どれもこれも、ろくなものじゃないインチキ道徳です。
なぜか。
合理的根拠もなく、事実上、感謝される側とする側に上下関係を作ってしまうからです。
感謝させられちゃったら、もし、腐った食べ物だと気づいても、アレルギーを起こす食べ物だとわかっても、苦手な食べ物でも箸を置けないでしょう。
親は絶対感謝、文句を言うのは親不孝。
生んでもらったから感謝しろ?
逆でしょう。
親が、子が欲しくて生んだのだから、親の責任できちんと育てるのはアタリマエのことです。
ですから、ことさら子に対して、苦労して育ててやっただの、親孝行しろだのと感謝を強制するものではありません。
感謝するかどうかは、子育てに対する評価の問題を含みますから、子の「内心の自由」なのです。
子が感謝できないと思ったとしても、それは「親不孝」ではなく、親が自らの不明を恥じることです。
それが嫌だから、親子に絶対的な上下関係を持つために「生んだ感謝」を強制するのです。
感謝するメンタリティ自体を否定はしていません。
感謝したい人は大いにしてください。
ただし、「ねばならない」として強制できることでしょうか、という話です。
この韜晦趣味が、風通しの悪い親子関係を作り、毒親や、親が子に手をかける事件につながっているのです。
そして今回。
感謝するなら「理解と支援」をしてやる、感謝しないならしてやんないという話ではないでしょう。
法律で決まったことを守らせるのに、「感謝」を条件にするというのは変ですよ。
伊是名夏子の人格が気に食わないから、バリアフリー化はしなくていいんですか?
感情的になって、自分自身の利益を犠牲にするのですか。
そのエレベーターは、明日のあなたが利用するかもしれないのです。
まとめ
猪狩もとかさんは、芸能人だからファンもいて、暖かく迎えられているからそういう綺麗事が言えるんです。
ほとんどの車椅子の人は、感謝とは正反対の、恨みつらみをいくらでもいいたい大変な思いをしています。
健常者から見て、ちょっといびつに見える振る舞いがあったとしても、それは、障碍者を邪険にしてきた不明によると考えられませんか。
いや、かりにそうでなくても、繰り返しますが、人格が悪いから人格攻撃をしても良い、ということにはなりません。
以上、猪狩ともかさん(仮面女子およびスチームガールズ)が、「まずは感謝の気持ちが大事」と伊是名夏子さんを批判しています、でした。
Photo by Vinicius Wiesehofer from Pexels
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