兎の眼(灰谷健次郎、角川文庫)は、塵芥処理場学区の小学校教師が発達障害や知的障害などの児童と向き合い真の教育の意味を問う

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兎の眼(灰谷健次郎、角川文庫)は、塵芥処理場学区の小学校教師が発達障害や知的障害などの児童と向き合い真の教育の意味を問う

兎の眼(灰谷健次郎、角川文庫)は、今日誕生日の檀ふみさんの主演で映画化された長編小説です。塵芥処理場を学区に抱える小学校に赴任した新卒教師が、発達障害や知的障害などの児童と向き合って、真の教育の意味を改めて問いかける力作です。

檀ふみさん(だんふみ、1954年6月5日~)は、日本の女優、司会者、エッセイストです。

今日は誕生日です。おめでとうございます。

檀ふみさんは、作家檀一雄の長女として生まれました。

高校時代、東映にスカウトされ、慶應義塾大学経済学部在学中から、映画やテレビドラマで活躍しています。

中村雅俊さんは4年先輩になるわけですね。

どちらも1浪で入られたそうなので、入れ違いだったわけです。


檀ふみさんは、『日本の面影』の小泉セツ役などで知名度が高く、『連想ゲーム』では紅組レギュラーの名解答者として15年間親しまれました。

また、父親の影響で料理や食事に関するエッセイも執筆しており、幅広い才能を発揮しています。

その彼女が主演した映画が、以前もご紹介した『兎の眼』(角川文庫)。

塵芥処理場を学区に抱える小学校に赴任した、新卒の教師・小谷芙美先生が、発達障害や知的障害などの児童と向き合って、真の教育の意味を改めて問いかける、灰谷健次郎による長編小説です。

発達障害児と向き合う女性教師の話


灰谷健次郎さん(1934年10月31日~2006年11月23日)は、働きながら定時制高校商業科を卒業後、大阪学芸大学(現・大阪教育大学)学芸学部を卒業して小学校教師になりました。

しかし、在職中に発表した小説が差別小説と糾弾を受けたり、長兄が自殺したり、実母が亡くなったりと不幸が続くと、教職は17年で退職。

沖縄やアジア各地を放浪して充電した後、1974年に『兎の眼』で児童文壇にデビューしましたが、これが今風に言うとキャリアハイでミリオンセラーになりました。

タイトルは、大阪にある西大寺の善財童子像をさしていることが、本文を読むと出できます。

「西大寺の中興の祖とされる叡尊(えいそん)の13回忌にあたる1302年、貧しい人や病気の人の救済に生涯を捧げた叡尊をしのび、弟子たちが完成させたとされています。」(https://www.asahi.com/articles/ASKDV4GMKKDVPOMB007.html)

本作は、貧しい人や、障碍のある児童に向き合い、子どもたちの豊かな可能性を見出していく話です。

新卒、そして新婚で医師の娘である小谷芙美先生は、大阪にある空気の悪い塵芥処理場近くの小学校に赴任。

受け持った生徒には、一言も口をきかず、ハエを飼っている鉄三がいました。

感情を暴力行為で表現するので、当初は困惑していた小谷先生ですが、「教員ヤクザ」といわれる型破り教師の足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おうと決意します。

本文中には一言もその言葉は使われていませんが、鉄三は典型的な発達障害。自閉症です。

自閉症の児童は、特定のことに熱中して意志も強く、ルーチンワークが得意ですが、鉄三のそれはハエの飼育で、小谷先生もそれに付き合って毎日鉄三の家に寄り、飼育具合を確認。

鉄三は先生に心を許し、言葉も発するようになります。

さらに、排泄なども支障がある重度知的障害の女の子・みな子が短期間ですが、クラスに入ってきます。

そのときは、先生も一緒になってクラスで話し合い、「みな子当番」を決めて、クラスみんなで理解と支援をします。

その一方で、自分の裁量でみな子を引き受けた小谷先生は、他の教員から“スタンドプレー”の批判を受け、(障害児教育は)みんなで情報を共有し合うことが大切であることを説かれます。

私は大阪人ではありませんが、1960~70年代前半の、大阪の場末感が実によく描かれていて、私も東京の場末だったので、子供の頃を思い出しました。

TV版は金沢碧、映画版は檀ふみ

残念ながら、私は映像化したものをまだ観たことがありません。

テレビドラマは、金沢碧が、映画は檀ふみが演じています。


どちらも、中村雅俊さんの代表作『俺たちの旅』で、カースケの相手役でしたね。

どちらもリアルで不幸せそうな表情が得意な役者なので興味深い。

金沢碧のほうが、より苦労させられるエグい設定で行けそうかな。

私にとっては、お二人共青春のヒロインです。

金沢碧版は、NHKの少年ドラマシリーズという枠で放送されていたので、映像データが残っていないといわれています。

檀ふみ版は、2005年にDVD化されています。こちらはぜひ鑑賞したいと思っています。

原作は、機会がありましたら、ぜひお読みください。

兎の眼 (角川つばさ文庫) - 灰谷 健次郎, 近藤 勝也, YUME
兎の眼 (角川つばさ文庫) – 灰谷 健次郎, 近藤 勝也, YUME

この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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