「子どもの写真を上げるな」「悪用するやつが悪いのに、なぜこちらが対策する必要があるのだ」とシェアレンティングを巡る議論

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「子どもの写真を上げるな」「悪用するやつが悪いのに、なぜこちらが対策する必要があるのだ」とシェアレンティングを巡る議論

「親、子供の写真をネットあげること」について、その賛否メッセージを目にする機会が増えています。SNSが日常生活に浸透した現代社会では、子どもの写真や動画をオンライン上に投稿する「シェアレンティング(Sharenting)」がトレンドになっています。

シェアレンティングというのは、「シェア(共有)」と「ペアレンティング(子育て)」を組み合わせた造語で、親が子どもの写真や成長記録をSNSに投稿する行為を指します。

この習慣をめぐっては、SNSを見ると賛否両論があります。

一方では、「子どもの写真を上げるな」という意見、もう一方では「悪用するやつが悪いのに、なぜこちらが対策する必要があるのだ」という意見です。

この記事では、両方の視点を公平に紹介し、読者の皆さんに考えるきっかけを提供したいと思います。

「子どもの写真を上げるな」という意見

子どものプライバシー権と肖像権の侵害

子どもは生まれながらにして肖像権やプライバシー権を持っています。親だからといって、子どもの写真をどう使用しようと自由というわけではありません。法的には、親が子どもに無断で写真をSNSに投稿することは、その子どもの肖像権の侵害、またプライバシー権の侵害にあたる可能性があるとされています。子どもが自分の意思表示ができない年齢であっても、その権利は存在するものです。

千葉大学教育学部のメディアリテラシー研究者が指摘するように、「一度ネットに出てしまった写真は取り返しがつかない」という現実があります。子どもが成長して、自分の写真がネット上に広がっていることを知ったとき、取り下げを望んでも完全に削除することは非常に困難です。

写真の悪用リスク

子どもの写真がインターネット上に公開されると、さまざまな形で悪用されるリスクがあります:

1.「デジタル誘拐」: 他人の子どもの写真を無断で使い、自分の子どもとして偽ってSNSに投稿する行為が報告されています。
2.小児性愛者による収集: 特に子どもの水着姿や裸の写真は、小児性愛者が収集したり、児童ポルノサイトに転用されたりするリスクがあります。
3.AI技術による悪用: 最新のAI技術では、子どもの写真1枚から大人姿の写真や映像が作成可能になっています。こうした技術を使ったディープフェイクは深刻な問題となっています。

実際に、児童ポルノサイトにインスタグラムから収集された子どもの写真が掲載されるケースも報告されています。

将来的な影響

子どもの成長とともに、過去に親が投稿した写真が本人にとって恥ずかしいものになったり、いじめの材料になったりする可能性があります。就職活動や社会的な評価にも影響する可能性があるのです。また、写真に写っている背景から、家の場所や通っている学校などの個人情報が特定されるリスクもあります。

「悪用するやつが悪いのに、なぜこちらが対策する必要があるのだ」という意見

親の表現の自由と共有の喜び

育児は時に孤独な作業です。特に核家族化が進み、地域のつながりが薄れている現代では、SNSが親同士のコミュニケーションや情報共有の場として重要な役割を果たしています。子育ての喜びや悩みを共有することで、親は精神的なサポートを得られます。

子どもの成長記録を投稿することは、離れて暮らす家族や友人と喜びを分かち合う手段でもあります。子どもの写真投稿を全面的に禁止することは、親の表現の自由や共有の喜びを奪うことになりかねません。

悪用は例外的なケース

子どもの写真が悪用されるケースはあるものの、それは例外的なことであり、大多数の投稿は無害に共有され消費されています。すべての親が子どもの写真投稿を控えるべきという主張は、少数の悪質なケースを過度に一般化しているという指摘もあります。

むしろ問題視すべきは、他人の写真を無断で使用したり、悪意をもって利用したりする人々の行為であり、そういった悪質な行為に対する規制や取り締まりを強化すべきだという意見です。

適切な配慮をすれば問題ない

多くの親は子どもの写真をSNSに投稿する際、プライバシーへの配慮を行っています。調査によれば、9割以上の保護者が何らかのプライバシー対策や配慮をしているとされています。例えば:

1. プライバシー設定を「友達のみ」に限定する
2.学校名や住所など個人を特定できる情報を出さない
3.子どもの顔が識別できないよう工夫する(後ろ姿、顔にスタンプを入れるなど)
4.水着姿や裸の写真は投稿しない

このように、適切な配慮をすれば、子どもの写真投稿のリスクを最小限に抑えることができるという主張もあります。

考えるべきポイント

シェアレンティングの是非を考える上で、いくつかの重要なポイントがあります:

子どもの意思と同意

子どもが意思表示できる年齢になったら、写真投稿について本人の同意を得ることが重要です。ドイツでは14歳以上の子どもの写真をSNSに投稿する際は同意が必要とされています。子どもが小さいうちから、自分の写真がどのように共有されるかについて話し合う習慣をつけることで、子どもの権利意識を育むこともできます。

バランスの取れた投稿方法

完全に投稿をやめるのではなく、リスクを最小限に抑えるための工夫を考えることも一つの解決策です:

1.顔が識別できない写真(後ろ姿、横顔など)を選ぶ
2.投稿する範囲を限定する(例:親しい家族や友人のみ)
3.子どもの写真専用のプライベートなアルバムサービスを利用する
4.投稿の頻度や内容に配慮する(過度な頻度や過剰な情報は避ける)

社会全体での対応

子どもの写真の悪用問題は、個人の対策だけでなく、社会全体で取り組むべき課題でもあります:

1.プラットフォーム側のセキュリティ強化
2.子どもの写真を無断で使用する行為への法的罰則の強化
3.メディアリテラシー教育の充実
4.プライバシー保護に関する啓発活動

まとめ


子どもの写真をネットに投稿することには、明確な「正解」はありません。それぞれの家庭の状況や価値観、子どもとの関係性によって、最適な選択は異なります。大切なのは、子どもの権利とプライバシーを尊重しつつ、リスクを認識した上で慎重に判断することです。

親としての表現の自由と子どものプライバシー権、そして現実的なリスク評価のバランスを取りながら、家族それぞれが納得できる選択をすることが重要です。また、子どもが成長するにつれて、その意見を尊重し、必要に応じて方針を見直していく柔軟性も必要でしょう。

最終的には、「子どもの最善の利益」を第一に考え、将来子どもが大人になったときに「親がこのような判断をしてくれてありがとう」と思えるような選択をすることが望ましいのではないでしょうか。

あなたは子どもの写真をネットに投稿することについて、どのように考えますか?家族で話し合ってみる価値のあるテーマかもしれません。

参考文献・サイト
– シェアレンティングとは・意味 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン [Ideas for Good](https://ideasforgood.jp/glossary/sharenting/)
– 子どもの写真をネットに投稿する親、なぜ危険なのか [日経クロステック](https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00160/092900206/)
– 「子どもの写真」をSNSに載せるのは法的にNG? 「肖像権」「プライバシー権」の侵害になりうる [東洋経済オンライン](https://toyokeizai.net/articles/-/625318)
– SNS投稿で子どもの顔出し 拡散・悪用のリスクと対策を専門家が解説 [ココレコ](https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/health/xI2Q4)
– 子どもの写真のSNS投稿、プライバシー対策や配慮をしている保護者は9割以上 [PR TIMES](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000233.000049287.html)

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この記事を書いた者
草野直樹(かやのなおき)

自己肯定感も、自己意思決定能力も低かったのですが、昨今流行の家系図作りをしているうち、高祖叔父と“日本のケインズ”の接点を発見。仙台藩で和喜次時代のお世話役で姻戚関係も!?。もう30年早く知りたかったなあという思いはありますが、せめてこれからは一国民、一有権者の立場から、ケインズ系経済学支持者としての発言を自分の意志で行っていきます。

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