井上智洋氏のベーシックインカムを求める『「給付金支援は飲食店だけでなく国民全員に」コロナ不況を救う経済学者の具体案』という寄稿が話題です。しかし、ベーシックインカムというのは社会保障を廃す自己責任給付であり、MMTとは異なる概念のはずです。
『ベーシックインカム』はMMTではないだろう
井上智洋駒澤大学経済学部准教授が、PRESIDENT Onlineに寄稿しています。
『「給付金支援は飲食店だけでなく国民全員に」コロナ不況を救う経済学者の具体案』として、サブタイトルには『いまこそ「ベーシックインカム」を』との記載があります。
概要は、コロナ禍によって日本経済の危機的状況は悪化し、2020年末にはコロナの第三波がきた。
2020年の特別定額給付金10万円では足りない。
2021年は、このままいけば悪化の一途をたどることは明白で、廃業する人や自殺する人もさらに増えていくだろう。
その状況を打開するには、個人への継続的な直接給付「ベーシックインカム」の導入が必要だと主張しています。
「赤ちゃんからお年寄りまですべての国民に、無条件にお金を配るという政策です。しかも特別定額給付金のように1回配ったきりではなく、継続して配る。」としています。
これが、もと記事のOGPです。
「給付金支援は飲食店だけでなく国民全員に」コロナ不況を救う経済学者の具体案 いまこそ「ベーシックインカム」を https://t.co/8eR2zoEnCs
— PRESIDENT Online / プレジデントオンライン (@Pre_Online) February 9, 2021
正直なところ、ベーシックインカムという言葉が、「状況を打開」の対策で出てくることには違和感があります。
なぜなら、ベーシックインカムというのは、Wikipediaにはこう書かれています。
BI(ベーシックインカム)は、基本的に従来の社会保障を廃し是正するための新しい「自己責任による最低限度の生活を保障する施策」である。広義においては、従来の社会保障の改善・補完のために「無条件で国民に一定の金額を給付する施策」である。後者は従来のベーシックインカムと区別するためUBI (Universal Basic Income) と表現されることがある。
つまり、「ベーシックインカム」を額面通り受け止めるなら、今ある社会保障を全部ご破産にして、ナニがしかの給付を行う、ということです。
そうでないのなら、ここはUBIと言うべきです。
しかし、寄稿には「BI」と書かれています。
少し前に、竹中平蔵氏の「月7万円」ベーシックインカム論が炎上したばかりですが、これは当然だと思います。
社会保障を生活の糧にしている人(生活保護や年金)にとって、廃止はもちろん論外、廃止されなかったとしても、「7万円」の財源という口実でそれらが減らされてしまったら、それは昨年の特別定額給付金とは意味が違ってきます。
井上智洋氏は、「ヘリコプターマネー」という表現を使っていますが、「BI」というのは「ばらまき」ではなく、分配の内容の再構成に過ぎません。
井上智洋氏の寄稿を読むと、全体としてMMTの立場から述べていますが、MMTが既存の社会保障に手を突っ込むことを前提としているというのは初耳です。
「ばらまき」をどう見るか
ただし、それ以外については、MMTの立場と両立不可能なことは書かれていないので、ますます寄稿をどう見るべきか、悩んでしまいます。
たとえば、
政府が企業にお金を使うことに対してはあまり抵抗感がなくて、むしろいいこと、まともな経済政策だと思われています。それなのに、人々にお金を渡すことは「それは経済政策じゃなくて、ばらまきだ」と、とても悪いことのように思われています。そこのところから、まず考え直してみることが必要なのかもしれません。
ですから「お金を使う」ということに関して、個人にとってのムダづかいというのは存在しますが、国全体がお金をムダに使うということは基本的にできません。国の中でお金の所有者が移っているだけで、消えてなくなってしまうわけではないんです。
などは、MMTの啓蒙として意義のある指摘です。
では、Web掲示板ではどんなコメントが付いたか。
これがまとめ記事です。
【駒澤大学経済学部 准教授】 「給付金支援は飲食店だけでなく国民全員に。ベーシックインカムを導入するべきだ。毎年120万円を配れ」 [影のたけし軍団★]
https://t.co/Cygf4dpykn pic.twitter.com/8WWod0z0Fe— 石川良直 (@I_yoshinao) February 9, 2021
主なコメントを抜粋します。
3ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:17:44.81ID:IXN/Sks10
賛成5ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:18:28.28ID:yjK80E1V0>>20>>81>>87
その代わり、消費税が50%位になりそう6ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:18:50.15ID:xHngvnlw0
インフレ目標達成出来そう??7ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:19:15.02ID:WF/JyjOg0
貴方のポケットマネーでどうぞ16ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:21:27.69ID:oC+r86SS0
大人一回限り100万円で子供一回限り20万円でいいだろ24ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:24:13.51ID:9kJuTzfW0
これで助かる命があるなら
それでいいよ29ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:25:42.30ID:USG8h89N0
飲食店とか事業に配るのが間違ってるんだよ
人に配れ30ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:25:56.10ID:ppWB61rf0
少子化なんかも解決しそうだな31ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:26:02.55ID:iRWQKi370
ずっと苦しい人 → 生活保護
一時的に苦しい人 → 貸付
これでいいだろ。32ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:26:21.49ID:9atzhHvl0
この国の社会保障費は120兆にもなる。
国民一人当たりに直せば年100万もの金を配れる。
社会保障を廃止してBIで公平平等に分配すべき。46ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:29:17.40ID:ZnqELi/A0>>56
年間144兆円をどこから持ってくるんだ?
刷ればいい論者?47ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:29:24.24ID:Q3hurXWQ0
予算はどうするの?62ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:32:35.01ID:tuhPjK9N0
資産別で配れば良いよ。
平等ではなくなるけど、100ニューノーマルの名無しさん2021/02/09(火) 20:45:35.70ID:uS9eWs+h0
ベーシックインカムはなしだな
労働意欲も毀損されるし、インフレリスクがでかい
やるならインフレ率に応じて金を配るシステム
例えばインフレ率2%を給付ゼロ基準に設定して
そこからインフレ率が0.1%さがるごとに5000円配る
そうすれば、例えばインフレ率が0%だと国民一人当たり10万配られる
給付型ビルトインスタビライザーだ
全体として
- 今回の飲食店給付には批判的(事業ではなく人に給付してほしい)
- 財源が心配
- 平等ではなくなるが、年収の多い人は給付しないなどが必要
といった意見が多い印象があります。
「2」は井上智洋氏の言われている通り、「ばらまき(は悪である)」という考えがあるのでしょう。
それを解決できるかどうかは、MMT提唱者が今後どういう啓蒙を行うかにかかってますね。
MMTとしては、消費税は「悪税」だと思います。
と同時に、繰り返しになりますが、現行の社会保障を充実させるのではなく、廃止を含めて改悪をさせる給付も、格差を解消するMMTの趣旨とは両立しないものだと思います。
みなさんは、いかが思われますか。
以上、井上智洋氏がベーシックインカム提唱『「給付金支援は飲食店だけでなく国民全員に」コロナ不況を救う経済学者の具体案』が話題、でした。
コメント